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自分でもどうかと思うが、本田将人の生活に規則はない。
一般に照らせばそれは場当たり的で、自堕落と呼ばれることだろう。
食いたいときに食って、寝たいときに寝て、遊びたいときに遊ぶ。
そして懐が寂しくなったら盗る、殺る、からトガギンへ。
ストレスフルなこの社会で、オレはもう何にも心を痛めることがない。我慢することがない。
こんなご機嫌な人生、他にあるだろうか?
そこにアルコールが入ればもう完璧だ。
「もぉ、マサくん飲みすぎだよぉ」
甘ったるい女の声を背中に、雑な居酒屋を出る。
深夜はだいぶ前に過ぎていた。
降っていた雪は止み、道に積もった白も踏み荒らされて、ぐちゃぐちゃに濁っている。
「飲み過ぎてねぇ。まだ倍はいける。おっ、」
「あぶなっ。ほら、転びそうじゃん」
一瞬足元が覚束ない。
でもそれは酒のせいなんかじゃなくて、雪で滑っただけのことだ。アルコールには耐性があるのだし。
けれども女は……名前なんだっけ……酔っ払いの戯言と思ったらしく、くすりと笑う。
「じゃあ、続きはアタシの家でしよ? お酒と、それからお水買ってくるからさぁ」
「水なんていらねぇってのによ」
「いいからいいから」
やって来たのは公園だ。
夜に眠る遊具たちは雪を被って重そうにしていた。
潰されまいと懸命に身を屈めているかのようなそれらは、どこか哀れで、どこまでも歪である。
……オレも、ついこの前までこうだったのか。
この身に降り積もる不自由に潰されないよう、必死に身を竦めて生きていた。
どこか哀れで、どこまでも歪んで。
……そう思うと、酒で温めた心胆が冷めるようだった。
女は、雪を払ったベンチに座るよう促してくる。
「そこで待ってて。要るもの買ってくるよ」
「おい、」
こっちの返事も聞かずに、女はさっさと行ってしまう――いいか。腰を降ろして待っていれば。
「……つめたっ」
寒さが体温と、酒気を少しずつ飛ばしていく。
遠くで犬が鳴いた。
どれくらいそうしていただろう。
雪を踏む、足音がして。
「やっと戻ってきたか。おせぇよ」
「――見つけた」
「……あ?」
顔を上げると。
浴びるのは、燃え立つような、憎悪の眼差し。