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ただ、君に伝えたくて  作者: 黒田 明誠
1/1

“君”


「これまで、ありがとうございました!」


これが僕の最初の後悔だった…


ーーーーーーー


小学5年生の春

それは、よく晴れた日のことだったと覚えている。桜舞い散る中


“僕は、君に出会ってしまった”


初めて僕は、恋をした。

ただ愛おしくてそばに居たかった。

君に会える日々を過ごしたかった。


ただ、それだけが願いだった…

僕にとって君は、【太陽】だった。




君に出会って初めての冬

運命は、残酷だと知った。


【転校】

母からこの言葉だけが告げられた。


最後に君に伝えたかった。

“この想いを”


そして僕は、雪の降る1月にこの学校を去った。


僕の日々にもう君は、いない…

ーーーーーーーー

都会への転校


周りの視線が痛かった、辛かった…


僕はマスクを付けた。

何も風邪なんてひいていない、ただこの空気に耐えられなかったのだ。


僕の世界は、ひどく濁って見えた。


この時からだろうか、僕の心に魔物が住み始めたのは。


ーーーーーー



「おい、顔見せろよ!」

2人組みの男の子達がかすかに笑う

僕は、うつむいたまま言葉を発しなかった。いや出来ないかった。

無意識のうちにもう心は、蝕まれていた。


僕は、知った自分の心の弱さを。


ーーーーーーーー


ある日、イジメられている()を見た。

いつも一人だった

僕は、何もしない。

その火花が僕に向かないようにと。


人は、違いを認めない。

そして、僕という存在を彼らは認めようとは、しなかった。


僕は、一人になった。


ーーーーーー


僕は、母に初めて嘘をついて学校を休んだ。


僕は、弱かった

ただ弱かった

心の中で僕は、泣くことしか出来なかった。


悔しい…

何も出来ない僕は、ただ思うことしかできない。


ーーーーーー

♫〜


家のベルが鳴った。

家には、僕しか居ない。

出るしかない


久しぶりに扉を見た気がした。

僕は、扉を開けた。




「あ、あの」




僕は、驚いた。

彼だった。

いつも暗くて虐められている弱いはずの彼だった。


そしていつもとは、違う彼がそこに立っていた。


彼は、言った。

『友達に…なりなりませんか』


彼は、弱くなんてなかった。


僕は、答えた

『ありがとう』






僕に、彼という友達ができた。

そして僕の心が僕に言った。

“もう後悔はするな”と


ーーーーーーーー


僕は、動物が好きだ。

仲間同士で争うことは、あれど

本当の意味で他を傷つけたりは、しないから。




小学1年生の時、運動会の日だった

僕の隣に座っている子が、後ろの少年に泥のついた靴で蹴られていた。


その少年は、笑っていた。




僕には、日頃から両親に言われていた言葉があった。

“正しいことをしなさい”


僕は、少年に言った。

『嫌がっているじゃん』


少年の笑い声は、止まり足を下ろした。

僕は、知った。

僕の“正”との彼の“正”は、違うことを。

僕の言葉に、何の力もないことを。

彼の足は、目標を変え僕の体に心に何度も強く彼の“正しい”を押し付けた。


ーーーーーー


“正しいことをしなさい”

僕は、この言葉の本当の意味を知った。


ーーーーーーーーーーーー


その日の帰りは、遅かった。


帰ると母に怒られた。

そして問われた。

少年の事を


僕は、驚いた。

そして恥ずかしかった惨めな僕が。


僕は、問いに答えず部屋に走った。

答えたくなかった。

“正しい”の本当の意味を知った今は


父が部屋に来た。

顔を見れなかった。


父が心のこもった声で言った。

“隣の子は、どうだったんだい”

声が出なかった。


父が言った『連絡あった』と。

僕は、怖くなった。

固く握られた僕の手が痛かった。


『ありがとう、と言われたよ』


よくわからなかった。

その言葉の意味が



その日、両親は仕事で来れなかった。

そして電話がかかってきたそうだ。

“感謝”のこもった電話が。





“ありがとう”





僕は、知った“正しい”の本当の意味を

ーーーーーーーー



朝、眩しい【太陽】が僕に春の訪れを告げる



春がやってきた。


そして


また君に会えない、日々がやってくる。





小学校を卒業し、中学生となった。

友も一緒の学校だ。

友は、背が伸びた。

僕よりも少し高い位置にあるその横顔は、高揚に胸を踊らしているように見えた。





そして“君”は、僕の心の片隅でその暖かさを伝えてくる。そのぬくもりが心地いい

そして僕は、“未来”へと向かって走りだした…



ーーーーーーーーーー


一年もすれば都会の生活にも慣れてくる。

毎日と言っていいほどの聞こえるサイレンの音

最初のうちは、その音が聞こえる度に驚いた。

だがそれも、日常へと変わっていった。


ここにきてから、世間の広さを知った。

毎日が、発見の日々だった。

そんなある日、海外の人に道を聞かれた。

必死に手に持つ地図を指差して片言の日本語で言った。

「コ、こコ、ここ」

額にかいた汗、顔の表情、地図に書かれたメモ

僕は思ったこの人も世間の…いや、世界の壮大さに驚いているのだと。


そして僕は、安心した。

1人じゃないと。


そのあとは、周りの人にも助けてもらいその人は、笑顔で去って行った。



その笑顔は、とても輝いて見えた。


ーーーーーーーー




ある日、国語の授業でだった。

短歌を作れという課題を出された。


その時、とっさに昔見た蛍が思い浮かんだ。


その日の夜は、星がよく見える日だった。

家族で、祭りに行った。

その帰り川岸を歩い帰っていた。


突然、目の前で星が光った。

驚いて目を見開いた。

父が言った。

『蛍か』

初めて見たそれは、まるで一つ一つが空に光る月のようで綺麗だった。

そして、思った。

輝いては、また消えてフラフラと漂っているその様は、まるで道に迷って慌てふためいているようだと。

僕は、“月”が好きになった

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