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運命の人はだいたいほかの人に取られてしまう

 高校生初めての入学式はとても長かったという事しか記憶にない。

 ただ椅子に座り、目の前に立っている人の話に適当に相槌を打ったり、拍手をする作業を繰り返しているといつの間にか終わっていた。最後に理事長の話が終わり、周りの人間が立ち始め俺はそれに習い、椅子から立ち上がる。すると理事長はマイクを切り、大声で叫んだ。

「この学園は、君たちの入園を心から歓迎する!!!!十分に学び、十分に遊び、そして十分に異能力を使い世界の人々を救いたまえ!!!!」

 周りの人々は理事長の声に答えるようにして、声を上げる。その声は雄叫びやら意味不明な叫び声をあげている。俺はその中にただ一人何もしていなかった。正直に言うならばその場の空気に俺が付いていけなかっただけなのだが。

 謎に長く意味不明な入学式を終え、生徒たちは各々のクラスへ移動する。移動する前に廊下では静かにと言われたが、青春を謳歌する高校生にその警告は無意味と化す。話題は理事長の話や可愛い女子、カッコイイ男子の話、そして他人が持っている異能力の種類についての話である。

 ―異能力。それは昔の人間が持っていなかったとされている能力である。その中にはいくつもの種類があり、今観測されているのでは、能力系、魔法系の二つである。能力は自身が生まれつき持っている不可視特殊能力(オド)と言われるもので制御している。―

 どこかで見た参考書の文章を思い出しながら、教室を目指していると周りの話し声が途切れていることに気付く。いつの間にか俺は集団とはぐれていたらしい。

(まぁ、こんなの事はよくあることだし何とかなるか。)

 そんな考えでふらふらと校舎を歩いているとある一人の女性を見つけた。その人はとても庇護欲をそそられる人間だった。髪型は長くいわゆるロングと言われるものだろう。目はパッチリとしていてなんか少女漫画のような人だなというのが正直な感想だ。身長は女性だから低いのは当たり前だろうが、平均的な身長より低かった。口癖は「はわわ…」だろうか。

「大丈夫ですか?」

 俺が勇気を持って話しかけようとしたら謎のイケメンが先に話しかけてしまった。話しかけられた女性は頬を赤く染め、余計ふらふらしてしまう。うっかり倒れそうになったのをイケメンが支え、ますます赤くなる。その様子を見ている俺の気持ちは何とも言いようがない。

 そのやり取りが数十分続き、やっとリア充(仮)の二人が移動を始める。そして俺はそれに隠れてついて行く。やっていることはストーカーそのものだが、楽しげに話している二人の後ろを歩ける自分に自信がないのだ。

 彼らの歩みが止まり教室に入っていく。それは俺が目指していた教室だった。

 少し時間を空けドアを開ける。

 俺の初めてのクラスに入った感想は―うるさいだ。

 ただうるさかった。男子の低い声と女子特有の甲高い笑い声が混じり合って、混沌でした。

 雑踏の教室の黒板に各々の席が書いてあった。俺の席は教卓から見て、一番右の一番後ろだった。

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