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貴方に贈る最後のメッセージ

作者: 神月斗華

、、、私の大切な人が死んだ。

10年以上関わってきた、これからも一緒にいられると思った人が死んだ。

死んだ理由は「ガン」だった。

私は、その事は知っていた。

でも、「きっと治して、また会える」と、そう思っていた。

しかし、結末は最悪なものになった。

私の大切な人は死に、今はその人の葬儀が執り行われている。


私の視線の先には、見覚えがある、顔写真。

いや、遺影。

そのすぐ下には、その人が入っているであろう(ひつぎ)

私は、本当にただ、呆然とその遺影を眺めていた。

そして、その遺影のすぐそばには遺族。

、、、泣いていた。



私は、葬儀が執り行われている中、その人との思い出を思い出していた。

とても楽しい人で、優しく、時には厳しく私や他の人達に接していた。

私は、保育園年中の時、その人と出会った。

私は、その人に色んな事を教えてもらった。

心の広さ、寛大さ、強さなど。

でも、時には嫌になって、逃げ出した事もあった。

ケンカしたり、怒られたりもした。

でもやっぱり優しかった。


そんな事を思い出していたら、自然と涙が出てきた。

悲しい。

そして、優しかったあの人を死に至らしめたガンが憎い。

でも、それは私がどう思っても、変えられないし、その人を生き返らせる事も出来ない。


それと、私はその人に対して「怒り」もあった。

その人が入院する際、「見舞いは来るな」と言ったらしい。

私は直接は聞いていないが、その人はそうきっぱりと言ったそう。

元々、自分の弱味を見せない、頑固なプライドをもった人だったので、見舞いに来て、ベットに横たわっている情けない自分を見てほしくなかったのだろう。 

「必ず治すからそれまで待っていろ」という、その人の希望の姿勢でもあったのだろう。

でも、、、。


「結局、、、死んで、、、意味ないじゃん、、、。」


そう。

結局は死んでしまった。

しかも、私や遺族以外の人たちは、その人の声も、看取ることも出来ずに終わってしまった。


貴方の声を聞きたかった。

貴方にまた会いたかった。

まだ一緒にいたかった。

まだ話したい事があった。

なのに、、、。


考えても、そう思っても、もうどうにも出来ない。

本当はあの人もみんなに会いたかったのかもしれない。

私も、手紙の1つくらい書いても良かったのかもしれない。

無理しても会いに行けば良かったのかもしれない。



泣いた。

周りの目も気にせず、泣きじゃくった。

後悔が私を支配する。

そんなとき、最後に花を手向けるため、棺が開かれた。

遺族から順番に、花を棺の中に、そしてその人の顔のまわりにそっと飾っていく。

私の番になり、一輪の花を持って、棺に歩み寄る。


「、、、、うっ、、、。」


棺の中には、その人が静かに眠っていた。

私が会いたかった、とても大切な人。

しかし、ガンの治療のせいで髪は抜け落ち、顔も痩せこけていた。

花を手向けた際にそっと顔に触れた。

、、、冷たかった。

そのせいで、本当に死んでいるのだと、もう会えないんだと察してしまって、、、。


さらに涙が溢れる。

棺をぎゅっと握りしめて、泣いた。

その時、数多い思い出の中で、その人がこう言っていた。


「泣くな!お前はそんなに弱くないだろ!」


私は、その言葉を思い出した瞬間、自分が今、何をすればいいか、どんな言葉を伝えればいいのかが浮かんできた。


だから、私は、棺から手を離し、、、。


「今まで、お疲れ様でした、、、!ありがとうございました、、、!」


と、叫ぶようにそう、言った。

その瞬間、遺族や他の人達も「ありがとう!」「お疲れ様!」などの声が聞こえて、同時に泣き声も聞こえてきた。

私は、深くお辞儀をした。

そうして、葬儀は終わって、出棺もしてしまった。

私は、しばらく泣き止む事が出来なかった。

でも、後悔はもうない。

ちゃんと、自分の気持ちを伝えたから。

言えたから。

これからもっともっと強くなる。

そう思ったのだった、、、。












~葬儀の後に書いたもの~


最後の感謝のメッセージ。

ちゃんと、聞こえましたか?

伝わりましたか?

私は、強くなっていますか?

泣いているけど、今日は仕方ないですよね。

明日から、切り替えて、また練習頑張るよ。

だから、さ。

安心して見ていてほしいな。

私や皆を。

もう、会えないけど、私が年を取って死んだら、また会えるよね。

そのときは、、、また色々な事を教えてね。


私の大切な人へ、貴方の教え子より。






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