第四話:洸
ボス?バトルです(笑)
影吏?が活躍してます…多分(マテ
オオォォォオン
グランドから鳴り響いくソレは巨大な黒き獣だった。
「っ、ケルベロス!」
筏春は驚きと焦りを混じり合わせた声で呟く。
春菜も慌てて筏春のもとへ走りながら答えた。
「さっきのワーム達といい、変に数が多いと思ってたけど…どうしょ〜、春君」
春菜は今も泣きそうな顔をしている。
そんな中、影吏だけが平然としていた。
「のんびりしてたから大物が嗅ぎ付けちゃったみたいね」
影吏はグランドを見て不適に笑った。
「ケルベロスは5人でやっと倒せる相手だぞ。部が悪い!此処は一旦、外から要請を」
筏春が言い終わる前に影吏は屋上から飛び降りていた。
「なっ!」
「影吏君!」
筏春達が驚くのも当たり前だ。この校舎は4階建て、その屋上から飛び降りたのだ。
「影吏!」
スグ様、筏春は下をみる。すると、影吏はまるで猫の様な身軽さで軽々と地上に着地していた。
「くそっ!びっくりさせるなよ。春菜、俺らも行くぞ」
「えっ、あ、うん」
筏春達は急いでグランドへ向かった。
「久々に手応えありそう」
影吏は巨大な黒き獣を前にしてカッターナイフを構える。
黒き獣ケルベロスは影吏を睨み、低く唸っている。
まるでお互いの隙を探り入れるかの様に睨み合う。
先に動いたのは影吏だった。
まるで疾風のごとく、猛スピードで駆け走った。
ケルベロスも瞬時に飛びかかる。
が、影吏は高々に跳びすれ違い様に一閃を放つ。
ケルベロスは怒りか痛みか、咆哮をあげ影吏から距離をとった。
「あら、距離をとった。なかなか知的なわけだ」
ケルベロスが影吏を睨み動こうとした瞬間、数回の発砲音が鳴り響いた。
「大丈夫か!影吏」
筏春は発砲しつつ影吏の側に移動する。
影吏は何処か面白味を無くした様に筏春を見た。
「邪魔しないでよ。あーぁ、興が削がれたじゃない…まぁいいわ、さっさと終わらせちゃお。あんた達、アレ足止め出来る?」
影吏はケルベロスを指差して、筏春と春菜を交互に見て言った。
「俺と春菜とでなら…短時間だが」
「三秒もてばいいわ。三秒たったらアレから離れなさい」
「三秒…?解った。春菜、やるぞ」
「うん、春君」
筏春は流れる様な動作でマガジンを装填し、春菜は手に特殊な手袋を着けた。すると、春菜の手からバチバチと青い電流が放たれた。
「へぇ、能力者なんだ」
影吏は春菜を見て呟いた。
春菜は照れながら肯定した。
「えへへ、水があれば本領発揮できるんだけどね」
「呑気に喋ってねーで手伝え!」
影吏と春菜が喋ってる間、筏春は必死にケルベロスと戦っていた。
「あう、春君ごめん。応戦するね」
春菜は雷球を作り出しケルベロスに向かって解き放つ。同時に筏春も両手に銃を構え乱射した。
影吏は目を細めケルベロスを見据える。
「…見えた」
三秒、影吏は残像を残し疾走。ケルベロスの間を駆け抜けた。
その間わずか一秒、見えた斬光は12回。
ケルベロスは声をあげる間も無く崩れさった。
「…嘘だろ」
筏春は驚いていた。春菜も同様に驚いた。
ケルベロスは5人で相手しないと倒せないほど強さだ。
それを影吏は瞬殺した。それも対灰界用の武器ではなく、只のカッターナイフで………
筏春は影吏に底知れぬ恐怖を覚えてしまった。
宿主を殺され、灰界は徐々に姿を消していった。
筏春は灰界の消失を確認すると影吏を見た。
影吏は何処か不機嫌な顔で辺りを見回している。
筏春は今疑問に思っている事を明かすため口をひらいた。
「で、お前は何者なんだよ?影吏…じゃないよな」
「えぇ、私は洸。逆神の戦闘人格。影吏の陰性に位置する者、つまりは影吏の中にある女性的部分よ」
「逆神の?二重人格って事か?」
「そう、私は影吏を守るための人格よ」
「じゃあ、もう一つ。あの力も逆神の力なのか?相手を崩す力」
「あぁ、アレは別。私個人の力よ。私、異能者なの」
「なるほどな。じゃあ最後に聞くが…」
筏春は、最も重要な事をここで聞くことにした。
「影吏…いや、洸。俺らの組織まで来てくれよ」
「来なければ影吏に危険が及ぶ…か、良いよ行ってあげる。けど、最終的に決めるのは影吏だからね。それに…」
「どうかしたか?」
影吏はざっと周りを見て言った。
「10人、お前の仲間に囲まれてるみたいだしね」
「なっ」
「えっ、春君。そうなの?あっ」
春菜が筏春を見たとき、視界に意外な人物が映りこんだ。
「やぁ、ご苦労だったね。ハルハル」
そこには、いつの間にか小柄な女性が立っていた。
「さすが逆神、全て見せてもらったよ。見事だった。付け加えるなら異能者でもあったとわね」
小柄な女性は軽く拍手をしながら寄って来た。
「なんで…アンタが居るんだよ」
筏春は冷や汗をたらしながら小柄な女性に言った。
春菜も何処か小柄な女性を畏怖している様子だ。
小柄な女性は気にもせず軽い口調で筏春を見て言った。
「ん〜、筏春、君がいざって時にちゃんと出来るか心配だったからね。君が居なくならない為にも影ながら見てたって訳」
そう言いながら小柄な女性はケータイをひらひらと見せた。
そう、筏春に非通知で電話をかけたのは彼女なのだ。
「初めまして、逆神の者よ。私は葉月、姫沙良葉月です。以後お見知りおきを」
葉月は洸に、優雅に頭を下げた。
洸はつまんなそうに会話を続けた。
「で、アンタはあたしに何の用な訳?ただ挨拶しに来た訳じゃないでしょ?」
「話しが早くて助かります。逆神の者、我々にその力を貸して頂きたい」
「嫌よ、影吏を危険に晒すモノは殺すけど…自ら危険を犯すつもりは無いわ」
「そうですか…」
葉月が声のトーンを下げた瞬間、周りの空気が重く冷たいモノに変わる。
筏春も春菜も冷や汗を垂らしながら洸と葉月を見る。
「では、賭けをしませんか?もし私が勝った場合、洸さん貴方の力を貸して頂きます。洸さんが勝った場合…そうですね願いを一つ叶えましょう。どうです?」
しばし考えて、洸は不適な笑みを浮かべ答えた。
「いいわ。その話しのってあげる」
「では詳しい内容は後ほど、筏春にでも伝えておきますんで…いいですね?」
「構わないわ」
「では後ほど。あぁ、それと筏春、たまには顔を見せにきなさい。みんなもお前達と話したがってるんだから」
そう言って葉月は帰っていった。
急な展開に筏春は、未だ信じられ無いと言いたげな顔で洸に話しかけた。
「おい、いいのかよ。あんな約束をして!」
「えぇ、楽しくなりそうじゃない」
「でもよ、負けたらお前…」
「勝負の内容は解ってるわ。負ける要素を無くす為にも今から出かけるけど…筏春、貴方達も着いて来たらいいわ。いい物見せてあげる」
「いいもの?よく解らねーけど連絡役だしな。わかった、で何処行くんだ?」
「それは着いて来たらわかるわ」
「おぅ、じゃー早く行こうぜ」
歩き出した二人に春菜は慌てて引き留めた。
「ちょ、ちょいと二人共!授業は?学校はどうするの!」
慌てている春菜に二人は同時にハモった。
「「は?」」
「は?じゃないよぉ〜、授業サボっちゃまずいよ?しかも私なんか忽然と居なくなっちゃってる事になるしぃ」
春菜は目をうるうるとしながら二人に抗議した。
が、この二人に通用するハズがなく…
「だったらアナタは残ったらいいじゃない。私は無理に来いとは言ってないし」
「俺は退屈な授業よりもオモシレー方優先な(笑)」
「そいゆう事よ。じゃ行くわよ、筏春」
「おぅ」
二人は再び春菜に背を向け歩き出した。
春菜は少しの間、ポカンとしながら泣きそうな顔で追いかけた。
「うぅ〜、待って、私も行きますぅ〜」
こうして三人は出かける事になった。
どうでしたか?
面白くなりつつある?
と、取りあえず頑張ろう(´・ω・`*)