ペーパードライバー
私の驚きの声が、思ったより大きかったのか
すぐに小さなワタシも、わたしの元へ駆け寄ってきた。
『 少し横になれば・・・楽になっから・・・ 』
『 おじいちゃん。 』
『 吉川さん、これって・・・やばいんじゃ? 』
『 いや、心配せんでええ。 』
『 でも・・・心配です。 すぐに病院に行きましょう。 』
『 嫌じゃ。 』
『 おねえちゃん、救急車・・・。 』
『 救急車は、嫌じゃ。 』
『 じゃあ、どうすれば? 』
わたしは、家族の連絡先などがありそうな状差しの類を探し出す。
『 吉川さん、ご家族は・・・? 』
『 呼ばんでええ。 』
『 でも・・・ 』
『 夜まで待ってや・・・そしたら、収まるっしょ。 』
『 そんな悠長なこと・・・ 』
『 じゃあ、夕方まで・・・ 』
『 夕方までって・・・どうせ行くなら、今の方がいいでしょ? 』
『 夕方・・・ 』
『 ・・・・おじいちゃん。 』
吉川さんは、持病の高血圧の薬を服用していた。
でも、それとは違う・・・只ならぬ、症状にも見える。
一応、その処方されている病院へ
吉川さんに気付かれぬように電話を借りて、掛けてみる。
看護婦さんに取り次いでもらい、
夜間でも急患として受けてくれるように、手配はしておいた。
そのことで、わたしは少しは安心したが・・・
やはり・・・
夕刻5時になっても6時になっても
吉川さんは苦しそうに横になったままだった。
一刻を争うことだったら、どうしよう?
本人の意思もあるが、今は大人は私一人。
私の判断。
わたしの責任だ。
『 吉川さん、もう行くよ。 』
『 何処へ、じゃ? 』
『 病院! もう、待てないよ。 』
『 いや・・・う、う・・・。 』
『 おじいちゃん、行こ。 』
『 ・・・・ん・・・ん。 』
『 じゃあ、救急車を呼ぶから! 』
『 救急車は、嫌じゃ。 』
『 じゃあ、何で行くの? あ、家族に来てもらう? 』
『 車で、行く。 』
『 運転!? できるわけないでしょ! その身体で! 』
『 じゃあ、あんたが送って、くれ。 』
『 わ、わたし?! 』
『 免許、持っとるだろ? 』
『 そ、それは持ってるけど・・・・ペーパーみたいなもので・・
もう7年近く運転してないのよ。 』
『 それでも・・う・・・ 』
『 おねぇちゃん・・・。 』
小さなわたしの
哀願するような 上目遣いの瞳を向けられてしまうと・・・
『 ねぇ、どの車で行くの? 』
『 白の・・セダンのヤツを、使って・・くれ。 』
『 そうね。 軽トラじゃ、横になれないものね。 』
辺りは暗闇に包まれつつある。
北海道の夜は、なんか 恐ろしい。
まだ二日目だけど・・・、なんか おっかないっ!!
急がないと・・・・。
私は、吉川さんを後部座席に寝かせ、
小さな私を助手席に座らせ、シートベルトを締めた。
( さあ、行くわよ!! )
ヴーーーーーーンンッ。
( あれ、前に進まない。 あ!! )
『 吹かさんでも、エンジンさ・・・大丈夫だ・・・。 』
『 はい・・・すみません。 』
『 おねえちゃん、大丈夫? 』
『 OKよ・・・。 』
私は、PからDにシフトチェンジし、
ゆっくりと車を前に進めた。
そして、
ワイパーを少し誤作動させ、慌ててヘッドライトを付けた。
~つづく~




