解雇
今日、私は生まれて初めて解雇通告書というモノを貰った。
『 悪いね~~~ 4月からの入札が取れなくてさ・・・。 でも、
会社が違うだけでさ、B社に引き続き採用できるように
面接の方を取り計らって置いたからね。 』
上司からの深刻さに欠けた挨拶があり、一瞬 何の話かわからなかった。
手渡された紙には、一年毎の更新が今年は行われない旨と、
同じ現場を引き継ぐB社への面接日時が書かれた たった一枚の連絡事項。
いわゆる、雇止めというヤツだ。
ビルメンテナンス業を営む会社に勤めて早7年目。
大学4年生に あんなに頑張って勝ち取った就職先はたったの3年しか持たず、
アルバイトを転々としながら、やっと在りついた定職、
大手電機会社の食堂の調理補助。
それが、7年で終止符を打たれようとしている。
『 あの、解雇ということですか? 』
『 まぁ、ひらたく言うと、そうだ。 ごめんなぁ、入札取れなくて・・・ 』
『 い、いえ・・・ 』
『 ウチとしても頑張ったんだけど・・・ごめんね。 』
『 この、B社って・・・ 』
『 まぁ、今回の入札で食堂の仕事を取ったところなんだけど・・・
ウチの従業員の面接もしてくれるように取り計らって置いたから、
転職を考えていないなら、一度受けてみるといいよ。 』
『 はぁ・・・ 』
トボトボと、会社の階段を下りていくと
何だか情けない気持ちが沸々と込み上げてくる。
( なんで、うまくいかないんだろ・・・ )
私は親元から離れて、築30年の安アパートに独り暮らし。 ペット無し。
弟が一人いるけど、姉の愚痴に付き合ってくれそうな程の仲かといえば・・・
正直、微妙だ。
彼氏も無し、トモダチも無し、32歳の独身女。 バツも、もちろん無い。
『 はぁーーー 』
声に出して、溜息をついてみる。
見ている人も無し。
( これから、どうなるんだろ? )
ビルの入り口に佇み、
巨大なガラス戸に少し反射した自身の姿を確認する。
( あ、今日はブラッシングしてないや・・・。 )
女性らしさも、失いかけている・・・なんか、マズいなぁ
『 そうだ・・・。 』
街往く人たちの顔をゆっくりと見てみたい。
外に出た私は、
私と同じく 不幸そうな顔が無いか、
ゆっくり探してみようと
近くのファストフード店に駆け込んだ。
~つづく~