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第七話 涼へ

 屋敷を出てまだ半時も経っていない。

 その事に驚きながらも土地神・マエノスソノの居る本殿に足を運ぶ。

「よう。元気かマエノスソノ」

「これは行平様。

 それに式神の皆様その節はお世話になりました」

 茶色い髪をした女性が俺達へ頭を下げる。

 コイツがこの片田舎・大江の土地神マエノスソノだ。

 少し前まで疫病神に土地神の力を奪われ枯れ井戸に封印されていた所を助け、疫病神から土地神の力を奪い返す手伝いをした。

 一度抜き取られた土地神の力をいきなり戻すとマエノスソノの体がその力に耐えきれずに消滅してしまう可能性があったため。

 俺の式神に少しずつ土地神の力を戻す手助けをさせていた。

 それが稲穂だ。

「あ、やっぱり行平じゃない。どうしたの?」

 金色の瞳が俺を捕えている。

 腰ほどまである銀色の髪を背中の辺りで結び。

 色白の肌が巫女服にはえていた。

 うん。ありだ。

 銀髪美少女巫女服。

 稲穂の横をすり抜けて俺に向かって走ってくる黒髪に黒い肌をした巫女服を着た童。

 身長は俺の腰ほどくらいだ。

「早くウチをもとに戻せ! さもないとお前のガウ!」

 俺に跳びかかり着物の襟を掴んで文句を垂れている最中に稲穂に叩き落され犬みたいに吠えている童の名はザクロ。

 少し前の名はアザク。

 少し前の職業は疫病神。

 そう、コイツはマエノスソノの力を奪い一時期この大江の土地神に成り代わっていた疫病神だ。

 事が終わった後、コイツを消滅させようと思ったのだが、気が変わり、新たな名を与え俺の式神候補・土地神候補としてここに縛り付けている。

「元気そうだな。

 ザクロいい子にしてかな?」

「ふざけるな! 

 ウチがどんな思いをしているか――キャウ」

「自分の主人に対してなんて口のきき方かしら?」

「だって!」

「だって? なにかしら?

 まだ後退させられ足りないの?」

「お願いしますからそれだけはやめてください」

 おお、あのザクロが素直に謝った。

 しかも綺麗な土下座だ。

 流石は稲穂だ、飴と鞭の使い方が絶妙すぎる。

「これは罰の一環でこうなったのか?」

「そうよ。

 あまりにも生意気な事をしたり、言う事を聞かなかったり、行平の悪口を言ったりしたから。

 望みどおり若返らせてあげたのよ。

 最初の頃は嬉しそうに燥いでいたのよ。

 でもある年齢に達した頃からきちんと謝ることが出来るようになったのよ。

 ねぇ、ザクロ?」

 笑顔でザクロを見る稲穂。

 ザクロは壊れた玩具のようにコクコク首を振るだけだった。

 しかし、後退させられているなんてな……

 どうりでかなり背が縮んでいると思った。

「それよりみんなそろってどこ行くの?

 それになんで空から?」

「ああ、まあそれは移動しながら話す。

 マエノスソノ、稲穂を連れて行っても構わないか?」

「はい。昨日でようやく土地神としての力を完全に取り戻せましたし、ザクロが居ますので大丈夫です」

「そうか。それならいいのだが……

 ザクロ。マエノスソノを頼んだからな」

「任されて……

 お任せください行平様。

 誠心誠意お仕えさせていただきます!!」

 途中でえらく畏まったと思ったら俺の後ろに稲穂が居た。

 余程稲穂が怖いのだろう。

「稲穂何か持って行く物はないのか?」

「特にないわよ。私は身軽だから」

「そうだったな」

 俺はマエノスソノに暫しの別れを告げ車に乗る。

 今度こそ涼へ向かう。

 この調子なら昼餉の頃には涼に到着するはずだ。

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