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第四話 道野道雪

「ええ、道雪様とは従兄弟なので幼いころから行平殿の事は聞き及んでおりました」

 更に従兄弟なのか。

 なるほど、道雪が何を話したのかは知らないがそのせいで俺の安息は壊れようとしているのか。

 よくわかった。

 道雪お前がすべて悪い。

 俺は懐から朱色の紙を取り出す。

 これは「話使」といい。

 陰陽師が離れた場所にいる陰陽師と話をする事が出来る術式の一つだ。

 この「話使」を使うための条件は相手に自分の「話使」を渡している事が条件となっている。 

 俺は涼を離れる折り道雪から無理やり持たされたための仕方なく持っていた。

 別に邪魔になる物じゃないからな。

 俺は物持ちが良いのだ。

 さて、早速使ってみるか。

『やあ。ユキちゃん元気そうだね。一体どうしたのかな?』

 ワンコールで出やがった。

 まあいい。そんな事より。

「とぼけてんじゃねぇよ。

 よくも俺の安息を邪魔してくれたな道雪。

 俺になんか恨みでもあんのか?」

『何の事かな?

 そろそろ田舎の生活に飽きた頃だろうから呼び戻そうと思っただけだもん』

「ふざけんな。俺の毎日は常に充実している。

 そんな所に水をさすな!」

『だって、ユキちゃんが悪いんだもん。

 私からの「話使」を全拒否なんてするからだもん。

 少しは声を聴きたい時だってあるんだもん!』

「大体、俺がわざわざ出向かなくても涼には優れた陰陽師が腐るほどいるだろ。そいつらに――」

『ああ、ダメダメ。

 いま涼では人手が足らなくててんてこ舞いなんだもん。

 殺生石の封印が解けかかっているみたいでそっちに全部取られちゃって。

 だからお願い、涼に戻って来て』

 手の平を合わせ拝むようなしぐさをしている姿が頭に浮かんだ。

 まったく。

 それにしても。

「斬首はないだろ」

 そう、これだ。

 これを忘れちゃいけない。

 なんで俺が斬首刑なんだよ。

『もう虚栄ついたの?

  ああ、だから「話使」してきたんだね。いやね。

 成績優秀者を呼び戻して討伐に当てるのはいいって言われたのだけど。

 ユキちゃん書面上は歴代最下位卒業だったでしょ。

 それで、頭の固い上役たちに許可されなくて。

 その上悪口を言ったんだもん!

 だからつい頭にきて……

 討伐に失敗したらコイツと虚栄の首を賭けてもいいって言っちたんだもん』

 おい。

 そんな理由で俺の首は刎ねられるのか。

「もし俺がこの虚栄と共に涼に向かわなかったらどうなる?」

『虚栄は即その場で切腹じゃないかな。

 多分ユキちゃんの所にも討伐隊が出て同じく斬首となるんじゃないかな? 私は従兄弟と大事な恋人をいっぺんに無くしてしまうけどね』

 誰が恋人だ。

 お前みたいなちんちくりんが寝ぼけたこと言ってんじゃねぇぞ。

 まったくとんでもない事になった。

 このまま片田舎で一生を式神達に囲まれて終わらせたかったのに。

「たく、分かったよ。涼に一時帰省してやる」

『やったー。ユキちゃんに久しぶりに会える!

 ねえねえ。帰ってきたらドコか遊びに行こうよ』

「お前はアホか。

 遊びに帰る訳じゃないんだぞ。

 俺の命が掛かっているから戻るんだからな!」

『うんうん。建前はそれでいいよ。

 恥ずかしいもんね? 超絶美女になってる私を――――』

 俺は「話使」を破り捨てた。

 その事により、術は効力を失い静寂が訪れる。

 相変わらずあの女は疲れる。

 もう少し落ち着いてもいい歳頃だと思うのだがな。

「大体の事情は分かった。虚栄お前も大変だったな」

「行平殿も人の事は言えないだろ」

 妙な親近感が湧くな。

 アイツに振り回されている者同士だからか?

 まあいいか。

「虚栄。お前は霊視が出来ないだろ」

「良くご存じで。

 確かにオレにその才能は微塵もないな」

 まあそうだろう。

 俺の周りに居る式神に一切気が付かないようだから。

 さっきからカエデが箸で虚栄の顔をツンツンして遊んでいるし、藤乃は虚栄の腰に差してある刀を抜いて刃紋を見てうっとりしている。

 サユリは虚栄の着ている着物に興味津々のようだ。

 ヒサゴにいたっては小刀を虚栄の首筋にあてて俺の方を見ていた。

 その顔がいつでも殺れます。

 そう訴えている。

「お前達。悪戯していないで酒の用意をしてくれ」

 そういうとサユリとヒサゴは台所に消え、カエデは俺の膝に座り、藤乃は中断していた夕餉を食べ始めた。

 虚栄がキョトンとしている。

 それもそうだ。

 霊視出来ない人間には式神が見えないからな。

 俺が一人で大声を上げているように見えるだろうな。

「虚栄。お前の目は俺と行動する上で些か不便だ。

 少し目を瞑っていろ」

 俺は虚栄の閉じられた目蓋に右手で覆う。

 おや? 誰が施したかは分からないがコイツのせいで見えなくなっていたようだな。

 虚栄の目に掛けられた術を解く。

「うっ……行平殿何を」

「うん? ああ。

 お前に掛けられていた術を解いただけだ。

 他に何もしていない」

「術? どういう事だ?」

「恐らくだが、幼い頃に霊視が強すぎてしまったからだろう。

 無駄に強い霊力を持つと妖怪に狙われるからな」

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