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第二十二話 リュウセイ

 そう言い残して屋根から屋根へと飛び乗って御所へと向う。

 さて、俺は俺の出来る事をするか。

 俺は道の端を流れる用水路へ歩み寄り、懐から小刀を取り出し自分の右手一指し指を切りつける。

 少し切りすぎたか。

 止めどなく流れる赤い鮮血が、流れる水に落ちていく。

「おい。俺だ、少し力を貸して欲しい」

 用水路に向かって俺は話しかける。

 反応はなかった。

 別に頭がおかしくなったとかではないからな。

 クソ、血が止まらん。

 しょうがない。

 切りつけた人差し指を口に入れようとしていると――

 稲穂の手が俺の手を掴み指を咥えてしまう。

 おいぃぃい! 

「どう?

 女の子にこんな事されるとドキッとする?」

「するかよ。

 食われるかと思ったわ」

「またまた。嬉しいクセに」

 こんな時まで俺達は何をやっているんだ。

 うお、こら傷口を舐めるな。

「おうおう、お熱い事で何よりですな。

 あんちゃん。

 こちとら夕飯の鮎を食わずに来てやったと言うのに」

 不機嫌そうに俺を見る無精鬚を生やした男が俺達を居ていた。

「そう言う訳じゃねぇよ!

 それより来てくれてありがとう。

 リュウセイ」

「まあいいさ。

 あんちゃんとオレとの仲だからな。

 それより何事だ」

「御所が燃えているんだ。

 そこに俺の式神も俺の友人もそこにいる。

 だから助けたい。力を貸してはくれないか?」

 いきなりの申し出に、リュウセイは目を閉じ、腕を組んで考え込むしぐさをする。

 だから、時間が無いんだって。

 リュウセイの気が乗らなければそれまでだ。

 別の方法を考えないと。

 だが、どうやってあの火を消す?

 俺には水系の術を扱う式神を持ち合わせていないのだが。

「…………いいぞ。

 あんちゃんの大切な者達があの炎の中にいるのだろ?」

「ああ。大切な友人がいるんだ」

「そうか。ならばこのオレにとっても友人だ。

 オレは友人の危機は見過ごせない性質だからな」

 その事はよく知っている。

 俺も何度も助けられたから。

 弱みに付け込んでいるようで嫌な気分だが、あとで良い酒を持って行ってやろう。

「小壺を渡しな。中の汚れを払ってやる」

 俺は懐から封がされた小壺を手渡す。

 封をしている筈なのだが、瘴気が徐々に漏れ出してきていた。

 これは非常に危ない状況だった。

 もう少し取り出すのが遅ければ俺が昼間の呪いを受ける所だ。

 リュウセイは小壺の封を解き、小壺の中身を煽る。

 口に含むと険しい顔になり、直ぐに吐き出した。

 吐き出された黒い塊は、岩に叩きつけられ潰れ飛び散る。

「酷い味の呪いだ」

「それは今日。

 里桜と言う少女から取り出した物だ。

 衰弱が激しくいつ死んでもおかしくない状態だったから竜神の涙を使って取り出した。

 リュウセイから貰っておいて助かったよ」

 ん? 

 なんだよ。ニヤニヤしやがって。

 気持ち悪いな。

「そうか。勿体ない事をしたな。

 これを売ればあんちゃん……

 一生を遊んで暮らせただろうに」

「別に。そんな物に興味はない。

 俺が欲しいのは安息だからな。

 金なんて二の次で言いのさ」

「つくづく。あんちゃんは変わっているな。

 ほれ、新しい竜神の涙だ。

 また汚れたらオレの所に持って来い。

 また清めてやる」

「ああ、その時は頼むよ。

 それより今は――」

「御所だろ。分かっているさ」

 急にリュウセイの周りに無数の水球が浮かび始め、用水路の水もリュウセイの体に吸い付いていく。

 いつしかリュウセイは見えなくなっていた。

「これで文句はあるまい?

 あんちゃん」

 巨大な水の龍が口を開け俺に語りかけてくる。

 流石は竜神と呼ばれる竜の一匹だ。

「ああ。ねぇな。

 じゃあよろしく頼む。リュウセイ」

「任せておけ。

 直ぐにあんなちんけな炎など消してやる」

 リュウセイは御所のある方角へと飛んで行く。

 これで火事はおさまるだろう。

 後は鬼だな。

「いつまで俺の指を舐めているんだよ。

 俺達も行こう稲穂」

「はいはい。いきましょうね。

 私もたっぷり妖力を補給したし、がんばろうかな」


今日の朝六時に黒鉄を更新いたします。

遅くなり申し訳ないです。


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