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第十八話 偵察部隊

「まあ、そういう事だから安綱殿。

 酒盛りは酒膳童子の討伐を終えてからにしてもらえるか?」

「ん? お前は誰だ?」

 あれ、この二人初対面なのか。

 道雪の親戚だから、てっきり知り合いかと思っていたぞ。

「申し遅れたな。

 オレの名は水面 虚栄。

 行平殿と同じく今回の酒膳童子討伐の任を受けた者だ」

「ほお。武士か。強いのかい?」

 虚栄を頭の先から足の先までジロジロと視線を向ける。

 安綱の悪い癖で、強者との戦闘衝動が抑えられない。

 相手が強いと感じれば、勝負を申し込むし、喧嘩を吹っ掛ける。

 俺の式神である。

 稲穂と藤乃もその被害にあった。

 まあ、返り討ちにあっているが。

「いや、全然だめだ。

 どちらかと言うと座学の方には自信はある」

「ならいいや。

 行平討伐から帰ってきたら話使で連絡をくれ。

 そしたら飛んでくるから。じゃあね」

 俺は安綱と朱色の紙を交換する。

 そうか、そう言えばまだ安綱とは交換していなかったな。

 それより本当に何をしに来たんだコイツは。

 俺は明日の打ち合わせを道雪と虚栄としたのち、御所を後にした。

 



 俺は乗って帰って来た牛車を土蔵へ直して、屋敷に向かう。

 玄関前で掃き掃除をしていたサユリが俺を出迎えた。

「おかえりなさいませ。行平様。

 いかがでしたか御所は?」

「ただいま。御所か?

 そうだな。面白みのない所だ。」

 全然面白みもなかった。

 早く大江に帰りたい。

 俺はサユリが用意した桶の水を使い足を拭き屋敷へ上がる。

「おかえり行平その顔だと。

 道雪ちゃんにこき使われたわね」

 手には埃叩き、頭には三角筋を付け着物の袖が汚れないようにたすき掛けをしている稲穂がに二ヒヒと笑う。

 余計なお世話だ。

 稲穂の服装を見るに屋敷内の掃除をやっていたのだろう。

 随分綺麗になっている。

「屋敷が綺麗になっているな。

 朝とは見違えるほどだぞ」

「まあね。

 サユリちゃんが外の掃き掃除、

 ヒサゴちゃんが庭の剪定、

 私が部屋の埃落としと掃き掃除、

 藤乃が床の拭き掃除、

 カエデちゃんが行平に言われた通り折り紙を折っている見たいよ」

 そうか。

 あの藤乃が床に手を付いて拭き掃除をしているのか。

 なんか信じられないな。

 まあどうせ、器用に足で雑巾を使って床を拭いている事だろう。

「ちょっと、足をどかしなさいよ。

 拭けないじゃないの」

 下の方から発せられる声に驚き、下を見ると雑巾がけをしている藤乃がいた。

 稲穂と同じような服装でやる気十分と言った感じだ。

「なによ!

 私が掃除して居るのがそんなに珍しいの?」

 ジロジロ見ていたのが気に入らなかったのか怒られた。

「いや。

 藤乃のそんな恰好初めてだったから。

 驚いているんだよ。

 また、たまにで良いからその恰好をしてくれ」

「そんなに私に掃除をさせたいのかしら?」

「そう言う訳じゃなくてだな……」

「藤乃?

 口ではなく、足と手を動かしなさいよ。

 何時までも終わらないでしょ?」

「稲穂……

 次は絶対負けないわよ」

 そう言い残すと、俺の脇を抜けて雑巾がけをしながら玄関の方へ行ってしまった。

「一体何の勝負をしたんだ? 稲穂」

「ジャンケンで勝った方の言う事を聞くと言う勝負をしただけよ。

 もちろん私が勝ったのだけどね」

 稲穂が勝てば藤乃は掃除に強制参加。

 藤乃が勝てば掃除免除。

 そう言った勝負だったらしい。

 稲穂は見事勝利を掴み、藤乃を掃除に強制登用に成功したようだ。

「でも良くあの藤乃が雑巾がけなんてやっているな」

「ああ、それは私が神通力であの体制を強制しているからね。

 立とうとすれば力が抜けてあの体制に戻るの」

 なるほどな。

 あの高飛車な藤乃が素直に雑巾がけをする訳がないからな。

 それにしても、日に日に稲穂は藤乃の扱いが上手くなるな。

 バタバタと廊下を走る音が聞こえてきた。

 カエデだ。

 手には俺の与えた折り紙が握られている。

「カエデ。ただいま。

 おお、言われた通り作っていてくれたのか。

 ありがとうな」

 俺は走ってくるカエデを抱き上げる。

「もうそろそろ。

 カエデちゃんの声を開放してもいい頃じゃないの、行平?」

「うーん。そうだな。

 鬼退治が終わったら声を開放してもいい頃合いだろう」

 カエデは話せない訳ではない。

 俺が声を封じているのだ。

 式神として未熟なカエデは喋るだけで言葉に炎が宿り、声を聞いた者を頭から焼き殺してしまう可能性があるので声を封じている。

 意志の疎通には問題ないがもうそろそろ声を開放してもいいのかもしれない。

「良かったわね。

 カエデちゃん」

 カエデはまるで花が咲いたかのように笑う。

「それよりカエデ。

 言われた物は作り終わったか?」

 何度も首を縦に振るカエデ。

 俺はカエデを床に下ろす。

 するとカエデが俺の右手を引きながら居間へと向かう。

 俺の空いている左手を稲穂が掴んでいるが気にしない。

「まるで親子みたいよ、行平」

「なんかそれは、実感湧かないな」

 そんな複雑な気持ちも居間に並べられた折り紙たちを見ると消し飛んでしまう。

 相変わらずカエデの折る折り紙は美しい。

 全てが今にも動き出してしまいそうだ。

 まあ、今から術で操って大賀山周辺を探って来させるのだが。

 猫、犬、狸、狐、雀、烏、蝶、狼などの紙で出来た動物達に術をかけて大賀山へ向かわせた。

 夕餉の頃には偵察を終わらせて帰ってくる事だろう。

 それまでは俺も庭の剪定をして時間を潰すか。


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