表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/29

第十七話 中江 安綱

PV7000アクセス突破しました!!

「さて、部屋に帰って着替えるぞ。

 いい加減この姿でいる事に抵抗を覚えなくなっている俺が怖いからな」

「私は気に入っているからそのままでもいいと思うんだよ?」

 俺が嫌だよ。

 女性は好きだが、女装をするのは今回限りでお願いしたいものだ。

 まったく、今日は散々な一日だな。

 何かと失った物が多い気がするぞ。

 男の尊厳に竜神の涙。

 この二つだ。

 特に涙の方は痛かったと言えば痛かったが。

 事情を話せばアイツも納得してくれるだろう。

 あの牛車を使えば直ぐに飛んでいく事も出来る。

「道雪、行平殿どうでした?

 里桜様は治られましたか?」

 道雪の部屋の戸を開けると虚栄が部屋の片づけをしていた。

 ご苦労なことだ。

 それにしても部屋の装いが一変する。

 あの足の踏み場もなかった部屋が片づくとこうも広々とするのか……

「ばっちりなんだよ。

 行平が全部やってくれて私は友人を失わないですんだからね」

 ニコニコだな、道雪。

 俺がこの部屋に来た時の切羽詰まった表情からは想像できないぞ。

「やはり、行平殿は成績をいじり倒していたのだな。

 まったく、なんて人だ」

「うるせぇな。

 それよりなんで虚栄がまだここに居るんだ?

 自分の仕事をしに行けよ」

「悪いがオレの当面の仕事は酒膳童子討伐だからな。

 ここに居ても別に不思議がられはしないのさ。

 それにオレの仕事は半分以上終わってしまったような物だし」

 なんだと?

 それはどういう事だ?

「行平を引っ張り出して連れてくる。

 それが今回一番難しい仕事だったんだよ。

 ある意味鬼との戦闘と引けを取らないほどにね」

 なんだそりや。人をなんだと思っているのだ。

 まあ、道雪が来ていたなら来てないな。

「いや、まだ何か仕事があるだろ。

 戦力の補充とか」

「その心配には及ばない。

 なにせオレと行平殿の二人で討伐に行くのだから」

 おい。なんだ、それ。

 他の陰陽師はどうした?

 それに武士は?

「俺とお前の二人だと?」

「なにか問題があるか?

 というか、他に人が居ない方が行平殿も立ち回りやすいだろう?」

 確かに人が大勢いたら逆に味方を攻撃してしまうだろうな。

 俺と式神達なら。

 でもな。

「なんか納得いかねぇー」

 俺は化粧を落とし、髪を結い直して、胸から丸めた手拭いを取り出す。

 もう二度と女装はごめんだ。

「よけいな事で時間を使ってしまったからな。

 さっさと酒膳童子について教えろ、道雪」

「そうだね。

 その為に来たんだもん。

 でも里桜様の事は本当に感謝しているんだよ。

 行平……ありがとう」

「ふん。精々恩に着ておけ。

 俺は三倍で返してもらうつもりだからな」

「まるで悪質な高利貸しみたいなんだよ」

「うるせぇよ。」


 酒膳童子と呼ばれる鬼が現れたのは今から半年前の事だという。

 紅い毛髪に赤黒い肌。

 その腕は丸太のように太く、あらゆる物を薙ぎ倒す怪力。

 従える鬼達は八十を上回る。

 その上この辺りを根城にする鬼達の頭目であるという事も分かった。

 その他に副頭目に野薔薇戯童子のばらぎどうじと言う鬼に四天王らしい鬼が四体いるそうだ。

「強さがいまいち伝わらないが、まあ油断しなければ勝てる相手だろ?」

「うーん。どうかな……

 流石の行平でもこの鬼達相手には苦戦するとおもうんだよ。

 涼でも名の知れているあのお二方。

 春日の当主・綿陽めんようと赤子の長男・宗近むねちかさんが帰って来ていないのが怖いんだよ」

 鬼は力に頼る傾向が強く、頭の回転はよろしくない。

 そんな鬼相手だからこそ、人間は知力で押さえつけるのだが。

 二回とも大勢であったために、指令系統が上手く伝達されずに総崩れになったのではないだろうか?

 まあ、終わった事だが。

 それに比べて俺は虚栄との二人だけなので、意思疎通は簡単に行う事が可能だ。

 その点においては利点でもある。

「道雪聞いたぞ! 里桜様のご病気が治られたそうだな!!」

 説明を受けていると部屋の戸がいきよいよく開け放たれた。

 そこにいたのは鎧で武装した武士。

 赤茶色の髪を頭の後ろで束ね、気の強そうな顔立ちをした女性。

 この涼の東門を守る・中江 安綱。俺と道雪の幼馴染だ。

 陰陽院の同期でもある。

「元気そうだな、安綱」

 焦げ茶色の瞳で俺を暫し見つめる。

 まさか、誰だか分からないのか?

「……ユキか。

 元気そうで何よりだ。」

「驚かすなよ、安綱。

 忘れられたのかと思ったじゃないか」

「忘れる訳ないだろう。

 お前を連れてくると聞いていたが、本当に帰ってきているとは思っていなかったから驚いていたんだ」

 ああ、なるほど。それでか。

「そうだ。今日一緒に飲まないか?

 いい辛口の酒が手に入ったんだ」

「おお、いいな。

 藤乃もお前と飲むのは楽しいと言っていたぞ」

 俺と飲むと言うより、同じ辛口が好きな藤乃と語らうと言った方が正しいのだろうな。

 藤乃も安綱は酒の旨さが分かっていると言ってほめていた。

 気が合うのだろう。

「安綱には悪いけど、その酒盛りはもう少し後にして欲しいんだよ」

 暫くぶりにあった安綱と談笑を楽しんでいると道雪がそんな事を言い出す。

「なんだと!

 それはどういう事だ、道雪!!」

「だって明日から行平は酒膳童子の討伐に行かないといけないんだもん」

 あれ、これって明日の打ち合わせだったのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ