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第十三話 悪夢

『お前のように式神を持たずに生まれてきた者など。高杉の長い歴史の中でお前ただ一人だ』


 くそ、この夢か。


『いくら才能が乏しい者でも一体は式神を連れて生まれてくるのにな』

『初代豪雪は十三体。明石は十二体の式神を生まれながらに使役して生まれてきたと言うのに――』

『霊も妖怪も式神も見えないような陰陽師がいてたまるか』

 

うるせぇよ。クソ親族の連中が! ガタガタ抜かしてんじゃねぇよ!


『行平、お前はいらない』


 俺は!


『この高杉の恥さらしめ!』

『所詮は汚れた血を宿す子供だ』


 煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い!!


『お前などこの世に必要ない』

『ゴミめ。サッサと消えてなくなれ』


 黙れ! 黙れよ!!


「うるせぇんだよ!

 クソどもがぁ!」

 俺は突然の大声に飛び起きた。

 自分の寝言で起きるなんて一年ぶりの事だった。

 酷い寝汗で着物が張り付いて気持ち悪い。

 ああ、くそ……

 これだから涼に帰ってきたくなかったんだよ。

 俺は喉を潤すため井戸へ向かう事にした。

 月夜が美しい。

 夜風は汗をかいた体には心地よく、不快感を忘れさせてくれる。

 井戸へ着くと槃を叩き落とし、水を汲み上げ頭からかぶった。

 流石に冷たいな。

 それを二三度繰り返して体の熱を冷ました俺は、井戸に寄りかかるようにして座り込んだ。

「もう、帰っては来たくなかったのにな」

 高杉家は明野明石を祖先に持つ霊力の強い陰陽師の家柄だ。

 由緒ある家柄と言ってもいいかもしれない。

 少し前まで涼の代表的な陰陽師だったが、今ではすっかり落ちぶれてしまっている。

 その背景にあると思われるのは、白面金毛九尾の呪いだ。

 祖先である明野明石には、息子がいたがその後は、女児しか生まれず。

 甥や親戚から養子をむかえて家を存続していた。

 その間、陰陽師としての血は薄まっていき。

 最終的に生まれてしまったのがこの俺だ。

 高杉の子供は生まれながらにして式神を使役して生まれてくる。

 霊力が高い子供は妖怪に狙われやすいからだ。

 故に式神が子供を守りその成長を見守る。

 完全な御霊契約の上に成り立った関係と言えるだろう。

 式神契約には二つの契約が存在する。

 御霊契約と死後抹消契約だ。

 御霊契約とは、魂に直接縛り付ける永続型の契約。

 契約者の魂が消滅するまでこの契約は有効である。

 死後抹消契約は、契約者が死んだ時点で解約される短期型の契約。

 契約者が死ねばそこで契約が終わってしまう。

 つまり、前世で陰陽師であった者であれば御霊契約を交わした式神を引き継ぎ出来ると言うことだ。

 俺は一体も使役していなかった。

 どんなに力が弱い子供でも一体は使役して生まれてくるのにだ。

 俺は遠い親戚に預けられた。

 まあ、早い話が捨てられた。そう表現したほうがいいのだろう。

「怖い夢でも見たの。行平?」

 稲穂だった。

 頭から足の先までずぶ濡れの俺を見て驚いたようだが、直ぐに歩み寄ってきて手拭いで濡れた髪を拭き始めた。

 懐かしいな。

 あの日もこんな月夜の晩だったな。

「ん? どうした行平。

 どこか痒いとこがある?」

「いや……

 稲穂と始めて会ったのもこんな月夜の晩だったなって思ってさ」

「覚えていたの?

 忘れられているのかと思ったわ」

「忘れるわけがないだろ。

 俺の始めての式神なんだから」

「――嬉しいこと言ってくれるじゃないの。行平!」

 ガバリと俺にいきなり抱きついたて来た。

 稲穂に押し倒され頭を強打。これは絶対たんこぶ出来た。

「嬉しいな。

 忘れられてなくて」

 目を開けると稲穂の顔が目の前にあった。

 重いから直ぐにどけ。

 そう言おうと思ったが……

 なんとも幸せそうな顔をしているじゃないか。

「嬉しそうだな」

「うん。とっても嬉しい」

「そうか。

 お前の着物が濡れるから直ぐに離れろ」

「いいじゃない。

 私だけマエノスソノの所に半年もいたのだから。

 これはご褒美よ」

「うーん。でもこれだと二人共風邪をひくだろ」

 ご褒美ならもう少しいい物を送りたいな。

 何がいいのだろう。

 まあ、鬼を討伐してからの話になるのだがな。

「ちょっと……

 女狐……

 なにをやっているのかしら?」

 藤野だった。

 なんだか不機嫌そうな顔をしている。

 その後ろにはヒサゴ、サユリ、カエデが控えていた。

 あれ、どうした?

 みんな揃って水を飲みに来たのか?


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