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十八話 決着①

 注 クリスマスに実に相応しくない内容となっています。


「彼に関しては珍しく、キミは手を出していないね。キミが狂わせたのは相葉・エルンスト。」

 テーブルの上には何時の間にか國嵜と相葉の写真が置かれている。二人で写ったその写真は國嵜が不器用に微笑み、相葉は幸せそうに寄り添っていた。

「………狂わせたも何も、俺から自発的行動を取った覚えは無いけどな。」

「そうだねその通り、何しろ彼女が求めた事だからね、でも結局は狂わせた。この世は結果論だよ。始まりや経過なんてどうでも良い、結果が全てさ。」

 どこから出したのか細いタバコを口に咥え、マッチで火をつけると紫煙という言葉の通り真紫の煙が一筋立ち上がる。

「非常に面白くない事にね。まあいいや、相葉はキミを求めた、じゃあ何故キミを求めた?」

 違う、別に求めたのは俺じゃあない。

「それも、その通り、偶々キミが相葉の目に留まって、結果深い仲になった。」


 相葉・エルンスト

 非常に矛盾した女性だった。

 敬虔なカトリックにも関わらず、彼女は人を求めた………肉体的な意味で。

 だから、いつも嘆いていた。

 行為が終わった後でさめざめと泣いて見せたり、神様とかいう有耶無耶なモノに謝ってみたり。そんな女性だった。

 体以外お互い何も求めない。そんな肉体的には濃厚、精神的には実に空虚な間柄。

 そんなある日、唐突に関係を終わりにして欲しいというのでそれに従っただけ。元々頼まれてしていたこと。未練もなければ、執着も湧いていなかった。

 恐らく、俺以上に満たしてくれる存在を見つけたのだろう。そんな事は薄々思っていたが、その相手が國嵜だと知ったのはつい先日。


 未練も執着も何も無かった相葉に対して、俺は何か思ったのだろうか?

 どちらにせよ、俺は最後に一つだけ悪戯をした。

 うまくいけばそれでよし、うまくいかなくても別に良し。

 結果は────

「大成功だったね。」

 そうだ、大成功だった。

 だから、國嵜が言った事が事実なら、相葉は泣いて謝って喚いて笑いながら壊れて消えていったのだろう。

「どう?キミの思惑通りに事が運んだ感想は?」

「別に何の感慨もないな、いらなくなった玩具を少し改造して捨てたようなモノだろ?」

「フフッ、外道。」

 クインの言葉が優しく身に沁みる。

 俺のやった悪戯。

 そんな大した事じゃあない。

 相葉が見ていない隙に頭痛持ちだった彼女の常備薬の壜に、少し強めの薬を何錠か混ぜておいただけ。

 ………催奇性が強く妊婦が服用すると胎児に悪影響がモロに出るような薬を。

「そうして生まれた子供を彼女は誤解したんだね。」

「ああ、俺は無精子症だからな。子供が出切る事は100%ありえない。この事を相葉が知っていたかどうかは知らないけどな。」

「知っていたよ。それがキミを相手に選んだ一因でもあるんだから、狂信的で色情狂ニンフォマニアでもそれぐらいの計算はできる女性だったんだよ。」

「───考えてみれば俺の副担任だったし、別に隠していたワケでもないからな。」

「そうだね、だから相葉から生まれた子供は間違いなく、相葉と國嵜クンの戯事の結晶。」

「お前ね、愛の営みを戯事扱いするなよ。」

「よく言うよ、キミなんて戯言どころか暇潰し程度にしか考えていないクセに。」

 思考パターンが完全に読まれている。

 少々屈辱的だ。

「けど、それだからこそ相葉は壊れた。」

 そういう事だ。

 愛する人との行為の果てに生まれた存在は───

 その時彼女はどういう思考に陥ったのだろう。

 簡単な事だ。

「罰だと思ったんだろうね。」

「だろうな。」

 敬虔な神の使徒にも関わらず、色欲に勝てなかった報い。

 きっと彼女はそんな風に考えたんだろう。

 だから、相葉は國嵜に泣きながら謝り、神とやらに許しを乞うた。

「莫迦だよね、神様なんて存在すらしないモノが罰なんて与えようがないのに。」

「全くだ、俺のほんの悪戯なのにな。」

 確かに神なんて存在しないのだろう。

 だが、今俺の目の前にいるクイン。

 コイツは一体何なのだろう?

 ふと、そう思った。

「悪魔かもね。」

 ニヤリとクインが笑った。


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