桜の木が守る者
―これから仕事を始めよう―
私は、茂みから出てその男に歩み寄る
「お前、名前は何だ」
「え?」
私は、桜の木によっかかりながら本を読んでいる男に話しかける
「名は、何と言う」
「俺ですか?」
男は、私の格好にビックリしたのか、ゆっくりと立ち上がる
「あぁ」
「俺は、黒崎ケイトですけど。あなたは?」
「そんなのしらんでよい」
私は、男の眼に手を当てて
「われの力しばし預けよう」
私が呪文を唱え終わると
男は、力が強くなったせいで
倒れてしまった
「良いか桜・・・・1時間だけだぞ」
ここからは私ではなく桜がしなければならない
「ありがとうございます」
桜はゆっくりとケイトに歩み寄っていく
私は、邪魔する気はないので家に戻る
「頑張れよ・・・・・・桜」
「はっ!!・・・・・俺どうしたんだ?」
「お目ざめになられましたか?」
「誰だか知らないがありがとう」
ケイトは、にっこりと優しい笑顔で桜を見た
そしてキレイな着物ですねと言った
「そんなことないですよ・・・・・」
「どうしたんですか?どんな暗い表情をして」
ケイトは、桜の顔を覗き込む
「あの・・・・わたしずっとあなたを見て・・・・・・・いました」
桜は恥ずかしくて顔を真っ赤に染めた
ケイトは少し驚いた様子だったがすぐに優しい笑顔に戻り
「そっか・・・嬉しいよ」
たぶんケイトはわかっていたのだろう
この子がこの桜の木だとゆうことを・・・・・・・・
「そうですか・・・・あのもう1つだけいいですか?」
「なんだい?」
「・・・・・・・・・あなたを好きになってもいいですか?」
ケイトは、いつも以上に優しい笑顔を見せて
「お願いします」
と言った
桜は、その言葉にうれし涙が出た
「ありがとう・・・・ケイトさん」
「!!何であなたはきえているんです?!」
「え?・・・あっもう時間みたいです・・・・・」
1時間がたってしまったのだと桜は思った
「時間?・・・・・・そうか、
また会えるか?」
ケイトは、悲しい顔をする
「ええきっと・・・・・私は、あなたとこの桜の木をいつまでも見守っています」
桜は、光に包まれて少しずつ消えていく
「!!なまえは!名前は何ですか!!」
「桜です」
桜は、眼にためた涙を流しながら
はっきりと自分の名前を言った
ケイトの頬を流れる涙はとてもうれしくて悲しいものだった
一人残されたケイトは桜とつぶやいて帰って行った
何でも屋
「桜・・・これで良かったのか?」
私はさくらの事が気がかりで聞いてしまった
「えぇ・・・とても楽しい1時間でした」
桜は、ありがとうと言って優しく笑った
その笑顔がどこか悲しそうでなんか悲しくなる
「お代は、いかがいたしましょうまこと様」
どんなことでもしますよっと言って私の目を真剣に見る
「お代はいらないよ・・・・・・そんなものほしくないんだ」
私は優しく微笑む
桜は、ありがとうございましたと何回も何回もつぶやいて
今日2度目の涙を流して
桜の木のもとに帰って行った
―妖怪の心は悲しく温かい
だから私は、妖怪が好きなんだ―
・・・・・この気持ちあなた達にはわかりますか?・・・・・・