第8話 現れしその者の名は
翌日
朝早くに目が覚めた春人は寝る前に放り出した課題を何とか少しでも片付けようとした。
が、そこで春人は自分の身の変化に気づく。
昨日は全く解らなかった課題が少しではあるが理解できるようになっている事に。
この世界についての宇宙やゼフィル共和国についての知識が、すべてではないにしても思い出せ、ある程度理解できるようになっている。
その思い出した記憶を頼りに課題をこなす春人の元に、ある人物がやってくる。それは朝の巡回に来た、この病院の院長先生であった。
「時任君。今日はある方がここに来られる。その方はとても偉い方なので、失礼のないように」
そう言われても心当りがない春人は首をかしげる。
「誰です?」
「来れば分かりますよ」
院長先生の言葉に首をかしげる。いったい誰がくるのか。
答えがでないまま春人は悶々としたまますることもなく、1日、悪戦苦闘しながら課題をこなして過ごしていたが、やがて日が傾くころ学校を終えた結衣がやってくる。
「お兄ちゃんにお客さん?ここにくるの?どうして?」
朝、院長先生から聞いた話を春人から聞いた結衣はそう訪ねてくるが、心当たりのない春人は首を振る。
そんな中、
「院長先生、お客様がお越しです。至急正面玄関口へおいでください」
突然院内放送が流れる。
ややあって呼び出しの放送が終わると、春人はぼうっと天井を見上げていた。
「どうしたの?」
「いや、来たのかなって」
「まさかー」
しばらくすると病室のすぐ外の廊下が静かになり、少しすると、
病室の扉が開かれ、額と耳の後ろから計三本の角を生やした銀髪の青年がもう一人の人物と院長先生を伴って姿を見せる。
それを見た春人は昨日の検索結果を思い出す。
一人は確か、マアナ・ロハスの鬼人と呼ばれている種族だったはず。
だが、なぜ?
「う、嘘!」
そこで突然結衣が声をあげ、春人は驚く。
唖然とした表情は明らかに青年が誰かを知っている感じである。
だが、
「…だれ…だっけ?」
おそらく有名人なのだろう。だが、今の春人には心当りが無い。
しかしそれを正直に口にするのはためらい、春人は小声で結衣に尋ねる。
だが、引っ掛かるものがある。
「誰って、お兄ちゃん忘れたの!有名な人だよ!ううん、そんなものじゃない!」
春人の内心等知るよしもない結衣が慌てた様子で睨み付けてくる。しかしそう言われても春人には見当がつかない。
突然の事に春人が戸惑っていると、
「もう!あ、兄が失礼を!」
結衣が強引にベッドの上の春人の頭を下げさせる。
「かまわないさ。きみは?」
青年に促され、結衣は春人の頭から手を離すとなぜか直立で敬礼までする。
「は、はい!わたしは時任結衣といいます!
ユリウス・クアモデス元帥閣下!お、お会いできて光栄です!
わたしは、おじいちゃん、いえ祖父からあなた方のことを聞かされて育ちました!
遥かなこの新天地へとお導きくださった閣下からの恩を返すため、また、そのお力となるべく異星文明調査局への入局を目指しております!!」
表情を引き締めてそう答える結衣。
その姿はりりしく、年下であるはずの彼女がとても勇ましく、頼りに見えた。
そのさまに青年は笑みを浮かべる。




