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偽りの悪旗外伝 もう一つの地球『イザナミ』への転生編   作者: 新景正虎


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第25話 地球文化の普及


「よう、俺が寝ている間に何かあったらしいな」


「ええ」


 しかし土方はそれ以上は聞くことなく、春人と携帯の電子決済機能を介して買い物の精算をおこなう。


「小腹もすいたし、食おうぜ」 


 三人は買ったものを部屋の中心に広げてくつろぐ。


「土方さんはずいぶん落ち着いてますね」


 落ち着き払った土方の様子に陽葵は質問する。


「そうか?まあ、宇宙でも作業をする俺にとっては飛来物の処理なんざいつものことだからな」


「そうでしたか」


 そう言って陽葵は無重力でも飲食できるような工夫をされた器を手にする。


 そのさまを見た土方は口元に 笑みを浮かべる。


「懐かしいな、昔はこんな形でお茶を販売していたっけ」


「そうなんですか?」


「ああ、汽車の車内販売でな。凍らせたミカンとかな」


 懐かしむ土方は米菓をかじる。


 そんな中、春人は浮かない顔の陽葵に気づく。


「どうかした?」


 春人の問いに陽葵はぽつりと呟く。


「この世界には洋菓子ってないのかな?ケーキとか食べたい」


 その言葉に春人は自分も同じことを気にしていたことを思い出す。


 確かに売店に並んでいた品揃えは前世の日本に比べれば乏しい。


 特に洋菓子とか酒、ワインやビールのようなものは全くなかった。


「今後のゼフィルによる地球(テラ文化や作物の移植政策次第だろう。

 アマテラスにいるのは日本人がほとんどだから、日本の文化の移植、再現が優先されているみたいだ。だが、今後地球産のカカオ豆辺りの量産の目処がつけばチョコレートやコーヒーも普及するだろうよ」


 それからしばらく春人らは時間を潰していた。


 話題は今彼らが乗っている船の乗客の数になる


「やっぱり行き来する人、少ないんですね」


 春人の言葉に土方は首を振る。


「賑わうのは二つの惑星が再接近したときだな。距離が近くなるから船代が安くなるし、政府からの優遇策でツアーも組まれる。俺が来た頃にはすでに距離が離れていたからまだ体験したことはないが」


 その後も三人は互いの境遇や前世の事を話し合い、昼になれば食堂に向かって昼食をとる。


 やがて、

「まもなく本船は第四惑星の軌道に侵入するために減速します」


 再び船が揺れ始める。


「第四惑星、あっちの地球で言うところの火星だな。まさか1日で来れるとはな。

 あっちじゃあ、どうせまだ隣の星に行くのさえ何年もかかってようやくだろうに。どれだけの差があるんだか」


 土方の言葉に春人はうなずく。


 やがて船は第四惑星を周回する軌道に侵入する。

 

 大気圏突入の前に船は惑星を一周する。


 その間、春人らは窓から第四惑星の外観を見た。


 それは先ほど見た画像の通りであった。


 太陽に照らされる面は海が多く、青く輝いている。


 だが、その中央、目玉の光彩に見える部分は延々に照らされて干上がり、砂漠となっているはず。


 対して夜の面は夜明けが来ることは決してなく、真っ暗で大地は凍りついている。


 大気によって熱と冷気は対流しているが、それでも双方の気温差は百度を越えると言う。


 そして人々は比較的温暖な昼夜の境目の地帯に住んでいる。


 やがて船は防御力場(シールド)を展開して大気圏を降下する。


 暫しの間振動が船室を揺らすが、やがて止み、大気圏降下時には閉じられていた窓が開く。


 開いた窓から春人らは外を見る。


 アマテラスの標準時では夕方のはずだが、窓の外は東の空の彼方、地平線近くに太陽アマテラス)が輝いている。


「永遠の朝の世界か」


 春人は呟く。


 大気圏へと降下した船の向かう先には月同様巨大なクレーターがあった。


 絶えず吹き荒れる強風に揺られながら船は降りていく。


「思った以上に厳しい世界だな」


 土方がうめく。


 窓の外から見える景色は見渡す限り赤茶けており、緑は見当たらない。


 変化と言えば遠くに日を照り返して輝く大河や海が見える程度である。


 クレーターの周囲の一角に広がる湖、そこに船は入水し、そこに面して開いている外壁の奥に築かれた港に入港し、開かれた機密扉を越えて接岸する。


「ここまで来るのははじめてだが、人が住むには厳しすぎるぜ、資源採掘がせいぜいだろうな。

 とはいえ、研究はされているらしい。でも技術的には不可能ではないが採算はとれないだろうな」


 春人らは連れられて船を降り、クレーターを縦横に掘り抜いて作られた港内部へと足を踏み入れる。


 そこは閑散としていた。行き交う人はまばらで第三惑星への便を待つ人々が待合室に揃っていたが、ごったがえしているとは言えない。


 待合室には長く広い一面ガラス貼りの展望室があり、そこからクレーター内部に築かれた町の全景が見える。


 上部は金属製の天井で覆われ、それは町のあちこちに建てられた天井部の保守点検用のエレベーターを兼ねた柱で支えられている。


 町をぐるりと囲むクレーターの一角は採光部となっていて、この星では決して動かぬ太陽の光を取り入れている。


「まるで軍艦島だな」


 町を見下ろしながらの土方の言葉に春人はうなずく。


 軍艦島、かつて海底炭鉱で栄えたとされる日本の文化遺産。


 炭鉱が閉鎖されたあとは人もいなくなり、今や歴史の足跡を示す遺跡となっていた。


 この町もいつか開発が進んで外で暮らせるようになったら遺産となるのだろうか?


 この町は周囲をクレーターの岩壁で囲まれているため人口が増えても拡張ができない。


 そのため空間を最大限にいかす作りにしているようだ。


 春人らはその日は港内部の宿泊施設に泊まることになった。

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