第22話 惑星間航行
その間三人はゼフィル政府の視察参加者用としてあてがわれた二等客室にいた。
非常時の脱出カプセルになる寝台とカーテンで仕切られた個室に彼らはしばらくいたが、自由になると、
「中を少し見てくる」
そう言うと春人は姿勢を固定していたベルトを外し、立ち上がる。
「あ、わたしもいきます」
陽葵もそれに続こうとするが、三人目の存在に気づいて土方の方を見る。
彼は面倒そうに背を向けると
「俺はここにいる。休暇を使って来たんだから寝させてくれ」
そう一方的に言うと土方は寝台に横になり、仕切りを閉じる。
呆気に取られる二人だが仕切りの向こうから声が聞こえる。
「ああそうだ。ついででいいから売店で何か買って来てくれ、あとで精算するから、三人でつまもうぜ」
「は、はい」
それからしばらく、春人は陽葵を連れて共に船を見て回っていた。
客室区画では落ち着いた音楽が流れ、壁には船内の案内や観光地の紹介が映し出されるモニターが埋め込まれている。
こうしていると、地上、いや前世日本となにも変わらない。ただ、窓の外に広がるのは限りなく無限の闇の世界。
食事がとれる食堂、娯楽設備が備えられた休息施設。
数時間の惑星間航行の時にも不自由がないように考えられているようである。
通路を歩く春人らは三等客室を覗いてみた。
三等客室は全体が非常時の脱出挺になっているらしく、普段は解放されている機密式の入り口の先には乗客が雑魚寝できる広い空間があり、加速時や非常時に体を固定する収納式の席がいくつも並べられている。
船室の下にはカーフェリーのように車両の収用区画があり、第四惑星へと向かう物資を積んだ輸送車両などが並んでいた。
やがて彼らは展望室にやってくる。
そこは半球状の広々とした空間に着席で景色を見れる座席や飲食の注文ができる端末、観葉植物の鉢植えも置かれている。
そこには幾人かの参加者がいるが、春人は陽葵と共にそれに混じって外を見る。
だが、外の光景は暗黒の宇宙がどこまでも続くばかり。
「この先のどこかにこの世界の地球があるんですよね」
陽葵の言葉にうなずく春人、そして気づく。
たぶんここにいる視察の参加者は皆、多かれ少なかれそんな気持ちを抱いているであろうことに。
そう考えると不思議な感覚が生まれる。
二人はしばらくなにもない漆黒の宇宙を眺めていたが、やがて変化のない光景に飽きて展望室を離れる。
そうして施設を一回りして売店を覗こうとした春人らだが、そこにささやかな警報が鳴り響く、
「なんだ?」
突然のことに顔を見合わせる二人。
やがて船内放送が入る。
「乗客の皆様、こちらは船長です。先ほど本船の進路上で本船と軌道が交差する物体を確認いたしました。詳細は確認中ですが、必要によっては飛来物の排除を行います」
「排除?」
不穏な言葉に眉をひそませる春人。
「排除にあたりまして船内の装備を使用する可能性もございます。その際、船の電力を大きく使用いたしますので、一時照明や人工重力を停止する事もありますのをご了承ください」
そこで放送が終わり、にわかに船内が慌ただしくなる。
船員たちは早足となり、あちこちを確認し始めている。
ふと、春人は傍らにいる陽葵の方を見る。
不安げな表情を彼女は見せていた。
「へ、部屋に戻ろうか」
「は、はい」
二人は足早に部屋に戻ろうとする。
そんななか、
「あら、あなたたち」
軍服姿の角を生やした女性が後ろに何人かを引き連れて通路を歩いてくる。
「大尉さん」
「どちらへ?」
春人の質問にイーテニス大尉は眼差しを強くし、二人の顔を交互に見る。
「見学よ、あなたたちも来る?」
「見学?」
「飛来物体の処理の、よ」
イーテニス大尉のその言葉に二人は顔を見合わせる。




