第21話 隣星への旅路
「皆さん、第四惑星への便の支度が整いますまでしばし、おくつろぎください」
そう言うとイーテニス大尉は参加者から離れ、港の職員と思われる制服姿の人物となにやら話をしている。
しばらく一同は透明な壁越しに外を見たり売店で買い物をしたりして自由時間を満喫していた。
春人らも売店を覗き、月土産を買ったりしていた。
春人が手にしているのは月の兎饅頭というかわいらしい兎のイラストが描かれた包装紙で包まれた菓子箱であった。
「先輩、それ、結衣ちゃんにですか?」
それを見た陽葵が春人に尋ねてくる
「あ、ああ。あいつに頼まれてね」
「…優しいんですね」
春人の言葉に一拍をおいて陽葵が尋ねる。
「い、いや。こっちにきてから色々世話になったから」
「そうですね」
そう言うと陽葵も春人の近くに来て、しばらく一緒に土産物を覗いていた。
が、やがて、
「ではみなさん、用意ができましたので皆さんが乗る惑星間航行船に案内します」
イーテニス大尉の案内に従って一同は通路を進むと、ほどなく視界が開け、巨大な格納庫に待機する惑星間航行船が見えてくる。
それは月との連絡船より遥かにおおきく、五階建てのビルほどの高さを持つ、高層ビルを横倒しにしたかのような長い直方体の物体で、圧倒的な存在感を放っていた。
春人らは船の上部の客室の搭乗口に向かって延びている連絡通路をさらに進む。
ふと、春人が下を見るとカーフェリーのように船の前面が開かれており、そこへ昇降口を通って車両が次々と乗り込んでいっている。
船内に入ると中では乗客への案内放送が流れていた。
「客席区画は人工重力が発生しております。区画外へと出入りになられる際はお気をつけください。また、船の加速、減速の際は室内の皆様は席にお着きになり、姿勢の固定をお願いします」
その船は重力制御技術が使われているため、春人らを乗せたその船はマスドライバーを使うことなく月の重力圏を離脱するという。
出発までの間、彼らは乗船時に渡されたパンフレットに目を通していた。
そこには船の構造、緊急時の対処方法等がかかれていた。
やがて、船が揺れ始め、窓の外の景色が動き始める。
無機質な発着施設の壁が見えなくなり、灰色の大地と黒い宇宙が再び窓の外を支配する。
しかし、灰色の大地もやがて小さくなり、暗黒が窓を埋め尽くす。
「これより本船は惑星間航行に入ります。加速が終了するまでしばしのあいだ船体が揺れますので、しばしの間座席につき姿勢の固定をお願いします」
言われるまま春人らは客室の席に姿勢を固定する。
その後しばらくして、船の揺れがおおきくなり始める。
それはしばらく続いたがやがて、
「本船は惑星間航行速度に入りました。第四惑星への到着はおよそ8時間後となります。それまでおくつろぎください」
その放送が入るとしだいに船内の揺れは収まっていく。




