第13話 妹との記憶
そうして妹とのわだかまりが解消されたところで春人は結衣にいくつか聞いてみることにした。
「なあ、結衣」
「なに?」
「この世界の俺って身体を使う部活とかしているのか?」
「うん、わたしと一緒に剣道をしてるよ。中学時代には二人でそれぞれ地区大会で入賞して新聞にものったんだ」
誇らしげに語る妹。
「ほら、これ」
そういうと結衣は携帯に保存されていた新聞記事の画像を見せてくれる。
「辰巳地区に兄妹剣士現れる」
記事の文章自体は解像度の関係でつぶれて読めないが、見出しにはそう書いてあり、剣道の胴着を着込み、入賞の盾をもって恥ずかしそうに微笑む、今より少し幼い結衣と春人の姿が写った写真が掲載されていた。
「大変だったよー新聞に載ってからしばらくは。男子からはわたしと付き合いたいとか、お兄ちゃん紹介してとか言われて」
「そんなにか」
「うん、お兄ちゃんは今は卒業に備えてるって言ったら女の子たちはおとなしくなったけど男子は」
頬を膨らませて腕組みをする結衣。
「困ったからお兄ちゃんと試合して勝ったら考えてあげるって言ったら、みんなすごすごと引き上げたけど」
よほどだったのか可笑しそうにふふっと笑みを浮かべる結衣。
「なんだよそれ」
「だってー本当に困っていたし、お兄ちゃんに勝てる人なら考えてもいいかなって思ったんだよ」
そんな妹の様に春人は呆れる。
しかし、
春人は思う。
前世の自分は剣道などやってはいなかった。二輪車の免許もとってはいなかった。
この世界だからなのか?
「さっきの話、本当なのか?核兵器で滅んだ国があるっていうのは?」
「うん。わたしも見たことがある。核戦争で滅んじゃった星の映像を。きれいだったはずの自然が焼き払われて、発展した町並みが瓦礫の山になって、人がすめなくなって、生き残った人たちもその星を離れるしかなくなって」
それはあり得たかもしれない地球の未来。
しかし、この星の人たちにとっては決して他人事ではない事実。
「地球だとお兄ちゃんや私たちのお爺ちゃんたちがいた国が初めてなんでしょ?」
「…ああ」
春人の脳裏には再び学校の授業で習った原子爆弾の話が甦る。
「今は、お兄ちゃんがこっちに来る前はどうなっていたの?」
「今は普通に人が住めているよ」
「そっか、よかった」
春人の言葉に微笑む結衣。
だが、春人の胸中は複雑である。
なぜなら…
日本で起きた核の悲劇はそれだけではなかったから
だが、春人はその事を告げることはなかった。




