再臨③
塔の第一層は、安全だと言われている。
正確には慎重な者だけが、生き残れる場所だ。
「次、俺が前に出る」
リクがそう言って、一歩踏み出した。
細身の剣を持つその背中は、
不思議と頼りがいがあった。
通路の奥、
三体のゴブリンが同時に姿を現す。
リクは迷わない。
剣を低く構え、一直線に走る。
まるで線を引くように。
リクが通った軌跡に沿って、
正面の敵がまとめて吹き飛んだ。
前に並んだ敵だけを、まとめて叩き潰す。
それが、リクの能力。
「直線限定、でも」
リクは振り返らずに言う。
「並ばせれば、終わりだ」
「分かりやすいね」
ミナトは横から入り、
残った敵を確実に仕留める。
別の戦闘。
今度は敵が散らばる。
ミナトが囮になる。
その瞬間、
背中に薄い光の膜が張りついた。
敵の攻撃が当たる。
だが、致命傷にはならない。
「一人だけ守れる」
リクの声。
「派手じゃないけど、
死なないためには十分だろ」
「十分すぎる」
ミナトは素直に言った。
罠。
床が崩れ、ミナトが足を滑らせる。
落ちる――そう思った瞬間、
リクの手が掴んでいた。
「離すなよ」
「そっちこそ」
引き上げられた後、
二人は思わず笑った。
休憩エリア。
二人は並んで座り、
装備を整える。
「俺さ」
リクが照れくさそうに言う。
「一人でやるの、向いてないんだ」
「奇遇だね」
ミナトは肩をすくめる。
「僕も」
嘘と本音が、
同じ言葉に混ざる。
次の階層への扉。
リクが振り返る。
「これからも、頼むな」
その言葉に、
ミナトは一瞬だけ迷ってから、頷いた。
「もちろん」
背中を預ける距離。
疑う理由が、どんどん消えていく距離。
ミナトは歩きながら、
心の奥で静かに思う。
(いい能力だ)
(……本当に)




