第8話 舞台までの花道
――ピピッ
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自己紹介のあと、机の上に置かれた菓子を食べながら他愛もない雑談をした。学校について、天上世界について、好きな本について、得意なことについて。なんだかアットホームすぎて、実はブラックなのでは……?と思ってしまう程、居心地が良いように感じた。
そして、その後僕は係長に連れられ、「天上学校」にやってきた。ここは天上の教育研究機関であると同時に、併設された「相棒」の養成所で実践研究をしているらしい。
「実はもうアズマ君に相応しいであろう『相棒』に目星は着いてるんだよね」
応接室へ向かう道中で係長はそう言った。
「あの、ずっと思っていたことを言ってもいいですか?」
「なんだい?」
「僕は死んだばかりじゃないですか。係長を含め、皆さんがまるで僕が今日来ることを知っていたかのような行動をとるものですから、疑問に思ったんです」
係長が川へ迎えに来たことも、歓迎パーティーを開かれたことも。どことなく感じていた違和感は、「どうして僕が今日来るのを知っていたのか」に行き着いた。
「それは死者の魂が天上世界に踏み入れるには、手順があるからだよ。輪廻してもいい魂かどうか判断したり、川に流したり……ね?そのせいで短い時でも1,2週間はかかるからね」
どうやら、神援者だからと言ってその手順において特別扱いされることはないとのこと。天上世界への入り口を一つに絞らなければ、管理が面倒なのだとか。輪廻出来ない魂も川に流され、川の先にある奈落へ破棄されるという。
「天上のシステムは完璧じゃないから、アズマ君が神援者用の川の流れに引っかからなくて奈落の方へ向かい始めちゃって、かなり焦ったんだから。拾える箇所なんてあの桟橋くらいしかないのに、そこまでにも2日くらいかかったし」
まさかそんなに危ない状況だったとは。当時の係長からそんな雰囲気は感じなかったけれど。それほどの危機があったことを隠し通せるほどの演技力があるのか、はたまた慣れているのか。前者なのであれば、弟子入りしたいところだ。
「お騒がせな新人ですみませんね」
そうやって軽口を叩けば、
「本当にね……」
と言いながら、手をデコピンするときの形をとるも、その人差し指は空を切り、トンと額を突かれた。
「ゔっ……」
「ま、今の相手がリエンだったら悶絶するほどのデコピンをくらわしてやったけど」
そのリエンっていう僕の遠い親戚、余程係長と仲が良かったんだろうな。
「じゃあ、話を戻そうか。アズマ君の『相棒』として目星をつけているのは、かつて遊園地支部に配属されていた子達だよ。ちょっと難ありって感じだけど、アズマ君ならきっと大丈夫」
なるほど、経験者ならば心強い。
「難というのは?」
「うーん、会えばわかるよ」
つまり、見た目で分かるほどの難ということなのだろうか。急に不安になってきた。生憎僕は素行が悪い人が身近にいた経験を持っていない。心配だ。
それに、僕は上手く「バディ」を演じることが出来るのだろうか。今のところ、「新人」は我ながらそこそこ上手く演じられていると思うのだが。
――ピピッ
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