第9話 校門
――ピピッ
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「お待たせしました」
私は、覚悟を持って応接室へと戻った。私はこれを以て天上学校を卒業し、彼に仕えることとなる。
「あなたの『相棒』になる話、受けさせていただきます」
ミストは満足そうな笑みを浮かべている。
「改めまして、私はアルタ。グリフォンを真の姿として持つ『相棒』よ。私にはまだあんたが望む『本当の相棒関係』が何なのか分からないけど、少なくとも敬語は外して出来るだけ素の自分で接するっていうのは間違いじゃないわよね」
「もちろん。そしたら俺も、改めて。俺はミスト。ローマ帝国の歴史家で、『歴史の神』に招かれた神援者。俺の理想と、神の意向のために……よろしくね」
そして私たちは契約を交わした。
契約と言っても、書面での話だ。血を使ったりとか、呪文のようなものを唱えたりとか、そういうオカルト的なものではない。ここは、神々が住まう天上世界。地上世界では存在しえない超常的なパワーでなんとかしているのだとか。
そして、契約を交わした瞬間、脳に異変が起きる。「相棒」の脳を「全知全脳システム」へアクセスできるように魔改造しているからだ。違和感は一瞬で消えたのもの、何かを考えた瞬間、知らないはずの補足情報が頭の中に浮かんでくるのは少々苛立たしい。やはり、フィクションを読むには向いてない脳だと実感する。
「先生、お世話になりました」
私たち「相棒」には手荷物などない。契約さえ交わしてしまえば、すぐに天上学校を「卒業」という名目で去ることになる。友人へ別れを告げる機会も、教員に感謝を伝える機会もない。契約が破棄されれば戻ってくることにはなるが、まぁそんなことは滅多にない。
「頑張って来なさい」
先生はそれだけ言って、私の背中を優しく叩いて、前へと推し進めた。
天上学校には、どちらかと言えば悪い思い出の方が多いけれど、いざ離れるときになってみれば、なんだかその思い出たちが美化されて思い起こされる。こういうところまで、「人間」の体に寄せなくても良かったのに。
様々なことを考えていたら、いつの間にか校門に着いた。この門をくぐるのは、何年ぶりだろう。気づいたときには、生まれていて、実験体にされていて、そしてここに連れてこられた。そして、ほぼほぼ軟禁のような状態で学習を続けさせられていた。
フェーレスのことが気がかりではないと言えば噓になる。でも、そんなことは言っていられない。きっと彼だってすぐに神援者の誰かと契約を交わすことになるだろう。神援者だって今の時点でもそこそこいる。だからこそ思っていた。彼にはもう二度と会うことはないだろうと。
――ピピッ
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