第8話 卒業
――ピピッ
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「そんなことを言われましても、私たち『相棒』には断る権利などないんです。人間に仕える、もしくはそのためにこの学校で学ぶことを条件に、私たちは生かされているのですからね」
デフォルトが人間形態だから忘れてしまうかもしれないが、私たちは人間ではない。もちろん、人間と同等に接することのできる「相棒」もいると聞いたことはある。しかし、それはまれである。
「おや、聞いていたより頭が固いね」
彼がそう望むのなら、言い返してやろう。
「じゃあ何ですか。こうやって私が貴方に反論してもいいって言うんですか。地上世界で生きてきた貴方なら知っているはずです。私たちは奴隷と大差ないのですよ」
「じゃあどうしてこれまた『相棒』なんて名前なのかな」
私の口は、何かを言い返そうと開いたままになっているが、言葉は紡ぎ出されない。
「……そんなの、名前だけに決まっているじゃないですか」
この言葉は彼に届いていたのだろうか。囁き声に近いかすれ声だけが口から漏れた。
「でも、本当の相棒関係を目指すことが規則違反になるわけではないよね?」
どうにかしてでも私を「相棒」にしたいらしい。正直に言うと、理解が出来ない。私なんて、ただでさえ生き物の失敗作である「相棒」の中でも、従順ではいられないという失敗作。もっと良い相手がいたんじゃないかと邪推してしまう。
「でも私は……!」
そう身を乗り出して反論しようとすると、扉の近くに立っていた教師が、私の目の前に手を出して、私の発言を制した。
「すみませんね、ミストさん。少しだけこの子を借りてもいいかしら」
私は教師に連れられて隣にある別の応接室へと連れていかれた。
「実は、私が彼に貴方を推薦したの。もし不快に感じさせてしまったのならごめんなさい」
そして、教師は私の両手をきゅっと握った。
「貴女はきっと、フェーレスさんの方が彼の『相棒』に相応しいだとか考えていたのでしょう?でもね、むしろフェーレスさんはとことん相性が悪いわ。彼が求めているのは、型にはまらない、論戦すらできてしまう『相棒』なんだもの」
私は俯きながら教師の話を聞いていたが、その言葉を聞いて上を見れば、教師の瞳は優しさを帯びていた。
「先生はね、確かに貴方に厳しいことは何度も言ったわ。でもそれは、他の生徒や規律に示しを付けるためであり、別に貴方のことを変えてやろうだとか思っていなかったの。だからね、勝手に貴方を薦めたのは申し訳ないのだけれど、私がそれだけ貴方を信頼していると信じて欲しいの」
教師からの告白。どうにかして私を彼の「相棒」にしたいわけではないということが、ひしひしと伝わってくる。
「先生、ありがとうございます。これもある種の運命。『相棒』が運命を歩むことは許されないかもしれませんが、この運命から外れないよう、誠心誠意役目を果たしてきます」
――ピピッ
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