第7話 噂話
――ピピッ
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誰かが私の噂をしている。
「あの真面目でお堅いグリフォン、この前授業のペア活動でフェーレス君と組んだんだって」
「えー、ずる~い!というか、フェーレス君かわいそう」
「しかもね、課題提出したら帰れる授業だったらしいんだけどさ、あの2人が最後だったらしいよ」
「それ絶対フェーレス君があのグリフォンの完璧主義に付き合わされてたパターンじゃん」
「フェーレス君どころか、あのグリフォンと契約する人間もかわいそう」
「そもそも、誰もあのグリフォンなんて選ばないでしょ」
「だよねー」
こうなるから嫌だったのに。フェーレスは自身の人気を過小評価しすぎだと思う。ちょっと関わっただけでこんなに悪口を言われてしまう程度には周りから好かれているというのに。
この噂話はあくまで噂であり、事実ではない。だからと言って訂正などはせずに、私は彼女たちの目の前を通り過ぎた。逆に、こういう悪口を言うような「相棒」こそ契約できないか、愛想をつかされるかという結果になりそうだ。だからといって、私自身が契約できないということについては否定しない。
「アルタさん、やっと見つけました!次の授業を担当する先生には連絡しましたから、私に着いてきてください」
急に腕を掴まれる。振り向いてみれば、私の手を掴んでいたのはお堅いテスト採点を行うあの教師であり、なんだか興奮しているように見えた。
「一体どうしたんですか、先生。私、理由を説明してもらえないと困ります」
「いいから着いてきてください。着いた先で話します」
相変わらず、文句は受け付けないスタイルを貫くようだ。私はそのまま腕を引っ張られて廊下を連れまわされる。周りの人からは、何かやらかしたんじゃないかと思われているようで、冷ややかな視線が私に刺さる。正直勘弁してほしいのだけれど。ただ、その視線はチャイムが鳴り、「相棒」たちが各々自身が授業を受ける教室に向かったことで解消された。
にしても、私はどこへ連れていかれているのだろう。ここまでくれば、応接室か学校長室の2択に絞られたようなものだけれど。
「アルタさん、入って頂戴」
教師が扉を開ける。その扉には、応接室と書かれていた。応接室は、主に2つの用途に使われる。1つ目は説教。それから2つ目は「相棒」としての契約。できれば後者であってほしい。私は、唾をごくりと飲み込みながら応接室へと足を踏み入れた。
応接室の中に座っていたのは、白髪の若い男。会ったことないはずなのに、何故だか見覚えがある気がする。まぁ、「相棒」はたくさんいるのだから、一体くらい彼にそっくりな「相棒」くらいいるはずだ。いてもおかしくない。
「はじめまして、君がアルタ君なんだね。俺はミスト。死してもなお、ローマ帝国の存続を願い続けるしがない歴史家だよ。君に俺の『相棒』になって欲しくてね。どうかな」
どうやらこの人物は、レポートで研究したばかりのあの奇妙な男、ミストと同一人物らしい。顔に見覚えを感じたのは、レポート作成時に彼の年老いた姿を見ていたからだった。神援者は、体の年齢を好きに変えることができるのである。
――ピピッ
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