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バッドエンド・リバイバルズ  作者: ストラド
第一章 語り手の章

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第29話 かっこよさの代償

――ピピッ

全知全脳システムが≪エラー:表記できません≫の(送る相手の名前を入力してください)様の閲覧を認識しました。

 謎の男改めマールス支部長と呼ぶべきだろうか。彼はお辞儀の姿勢から元の体勢に戻ろうとするも、手からシルクハットがするりと逃げて行ってしまう。それを慌てて取ろうとした瞬間、そのまま額を机の角に強く打ち付け、その場に蹲ってしまった。


「だ、大丈夫ですか……!?」


 僕は勢いよく椅子から立ち上がり、彼へ駆け寄った。


 そういえば、この間錬金術の代償のせいで彼はドジっ子になってしまったとリアスが言っていたっけ。成程、このことだったのか。本来ならその逃げていったシルクハットを錬金術で空気を操って取り戻すべきだったんだろうけど、これ以上代償を払うことを控えているのか、はたまた慌てすぎてそれに気づけなかったのか。


 紳士的な振る舞いを自然に行っている様子を見るに、相当昔に生きていた人物なのだろう。だが、ほっとけないというか何というか。ありもしない母性や庇護欲を感じる。この人が支部長で遊園地支部は本当に大丈夫なのだろうか。少々心配である。


「えへへ、よくあることだから何とも」


 マールス支部長は僕が差し出した手をとって立ち上がった。


「そういえば、マールス支部長はどうしてここに?僕を励ますためだけじゃないですよね?」


 彼は支部長という職に就いているのだから忙しいだろうし、他部署の新人を励ますためだけに動くなんてことはなさそうだ。


「君もかなり洞察力が高いようだね」


 君も……?彼は誰と僕を比べているのだろう。係長が言っていた現在行方不明中の僕の親戚のことだろうか。


「ミストさんからの呼び出しでね。時間があるときにアズマくんに賢者の石の欠片を作ってあげてってさ。あの人も賢者の石を持ってるから賢者の石の欠片を作れないこともないと思うんだけど、教えるのが下手だから。ほら、図書館は静かにするところだし図書館支部の事務所に行こうか。もし、続きを読み続けたいなら止めないけどね」


 僕には忙しいであろうマールス支部長を待たせる勇気がなかったので、漫画を片付け事務所に戻ることにした。


「あの、さっき『君も洞察力が高い』って言っていたのは誰と比べていたんですか?」


 事務所へと向かう道中、先ほど気になっていたことを僕はマールス支部長に尋ねた。


「もちろんリエン先輩のことだよ。ほら、今行方不明中ってことになってるでしょ?確か君は彼の双子の兄の子孫じゃなかったっけ。1800歳近く年が離れていても先祖返り的なものはあるんだね。不思議な感じ」


 そんなに僕と見た目が似ているのか。会えたらいいんだけど。


「まぁ、そろそろ戻ってくる頃合いだと思うよ」


 そろそろと言っても、彼らの時間間隔は僕と比べた時に全然違うだろうから、10年後とか全然ありえそうなんだけどな。


 事務所に近づくにつれ、誰かがアルタ姉さんと言い争っている声が聞こえてきた。しかし、相手は係長ではなさそうだ。


「おやおや、アルタちゃんは本当にフェーレスくんのことが嫌いだね」


 マールス支部長はそうのんきに言って事務所の扉を開ける。


「そういうところが嫌いって言ってるでしょ!この『猫かぶれ』!!」


「うわぁ……ミミズクちゃんがオレをぶった!ボスにもマスターにもぶたれたことないのに」


「そりゃ急に目隠しされたら誰でも殴るでしょう?危ないんだから」


 これが痴話げんかというやつだろうか。


「ほらほら、アズマくんを連れて来たから喧嘩はよしてくれないかな」


 マールス支部長が止めに入ると、アルタ姉さんはぷいっとそっぽを向いて事務所から出て行ってしまった。アルタ姉さんをあんなに怒らせるなんて余程の「相棒」のようだ。

――ピピッ

全知全脳システムが≪エラー:表記できません≫の(送る相手の名前を入力してください)様が情報を読了したことを認識しました。


全知全脳システムはあなたの閲覧を歓迎し、今後もあなたのために情報の提供を続けます。

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