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バッドエンド・リバイバルズ  作者: ストラド
第一章 語り手の章

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第28話 勇者が主人公じゃない物語

――ピピッ

全知全脳システムが≪エラー:表記できません≫の(送る相手の名前を入力してください)様の閲覧を認識しました。

 あれから何日経っただろうか。睡眠も食事も必要ない僕にはどれくらい時間が経ったのか分からない。僕は天井図書館の中でも人気の少ない場所で『魔王は老衰で死にたい』を一気読みしていた。この物語にユーはいないというのに。


 本当にあれで良かったのだろうかと僕はずっと思い悩んでいた。


 魔王を倒した者が魔王になるという世界で、魔王となった勇者が魔王という存在事滅ぼす物語。


 そう言えたなら良かった。でも、この『魔王は老衰で死にたい』の主人公はヴェスティであって、ユーではない。ヴェスティが主人公の物語として見れば、ポッと出の勇者がヴェスティの見せ場も名声も奪い去っていったようなエンディングに見える気がする。


 僕達はアウクト氏のメモを手掛かりにユーを、純粋無垢な勇者をターゲットにして観測行為を行った。だから、僕達が見届けたのは、ユーが主人公の物語と言っても過言ではない。ユーに肩入れをしすぎたのではないか。僕はそう後悔をしていた。


 係長も、アルタ姉さんさえもこれが正しい行動だったのか教えてくれなかった。


 結局、アウクト氏が望んだエンディングを作ることではなく、編集者を納得させるエンディングにすることが本質だったのではないだろうか。だから、彼が未練を果たし終わるのを待っていたりして。


 僕の思考はどんどん悪い方へ進んでいった。


「そんなに暗い顔しちゃって、どうしたの?」


 図書館にしては奇抜な格好をした男が、いつの間にか僕の目の前に座っていた。


「えっと……だ、誰ですか?」


 目の前の男はふっと微笑むも名乗ることはなく、


「僕は何が君をそんな暗い顔にさせたのかが気になるんだけどな。あ、まさかミストさん?」


と、楽しそうに言う。どうやら係長と面識があるようだ。揶揄うことができる程度の関係のように見える。


「僕、そのミストさんが係長をやっている異世界転生観測係の図書館支部に所属することになったんですけど」


「うん、知ってるよ」


「えっ……で、ですね。初めての『観測』を終えまして、一人で反省していたというか」


「なるほどなるほど」


 男は目を閉じながら深く頷いた。ずれたモノクルを戻した彼は、シルクハットを脱ぐと、中から赤い花を取り出して僕に無理やり握らせた。


「君は異世界転生観測係の期待の新人君だからね。僕も君が初めて行った『観測』の資料を読ませてもらったよ。でも、そこまで落ち込むようなミスはしていないと思うけどなぁ……。ただ単にユーの死を悲しがっているとしたら、申し訳ないけれど」


 僕は握らされた花を見ながら首を横に振った。というか、僕が行った観測についての知識があるなんて、この男は一体どういう立場なんだろう。ただ、彼には悩みを打ち明けてもいいと、思ってしまった。


「いいえ、本来『魔王は老衰で死にたい』という作品はヴェスティが主人公なのにユーが見せ場をかっさらっていったように思えてしまって」


「そんなことはないよ」


 男は、僕に被せるようにそう口をはさんだ。


「そういう道を歩むことを選んだのは、君じゃない。ユーとヴェスティでしょ?君はユーとヴェスティに結末を委ねた。なら、これで正解。君の仕事は、ユーがヴェスティのいる魔王城へたどり着かなかったという運命を変えること。確かにちょっと出しゃばりすぎてた気はするけどね」


 男は優雅に立ち上がり、右手を胸に寄せ、左手はシルクハットを持ったままのばし、うやうやしくお辞儀をして見せた。確かボウアンドスクレープと言ったか。


「僕はマールス。異世界転生観測係遊園地支部の支部長。異世界転生観測係の新人君、誠意をもって歓迎するよ」

――ピピッ

全知全脳システムが≪エラー:表記できません≫の(送る相手の名前を入力してください)様が情報を読了したことを認識しました。


全知全脳システムはあなたの閲覧を歓迎し、今後もあなたのために情報の提供を続けます。

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