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バッドエンド・リバイバルズ  作者: ストラド
第一章 語り手の章

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第27話 魔王は老衰で死にたい

――ピピッ

全知全脳システムが≪エラー:表記できません≫の(送る相手の名前を入力してください)様の閲覧を認識しました。

『魔王!いるのか?』


 大広間の扉を開けたユーは、その広い空間へと大声で叫んだ。


『あぁ。私が魔王、ヴェスティだ。君は、洗脳を受けていない勇者。間違いないか?』


 大広間の奥から響いてくる声。ヴェスティだ。彼はこんな声だったのか。アニメ化計画が凍結したばかりに一生聞くことができないと思っていた声。優しさと、疲労と、期待が入り混じったなめらかな低音ボイス。間違いない。自分が思い描いていた彼の声と何の違いもない。


『ヴェ、ヴェスティ……?その名前、どこかで……って、あ!魔王学者じゃ?』


『おや。私の手紙を読んで来たというわけではなさそうだ。……だが、いかにも。私は元魔王学者のヴェスティ。そして、最後の魔王でもある』


 今のところ会話は滞りなく進んでいる。手紙を渡さなかったことによる違和感が発生しないといいが。


『最後の魔王……?』


『そうだ。私は、老衰で死にたい魔王。老衰で死ねば、魔王を倒した者が魔王になるという連鎖を断ち切れると、長年魔王を続けてきた。が、魔王は年を取らない故、老衰というよりは生命力切れと言った方がいいだろう』


 まさかのここでタイトル回収!?原作だとなかったというのに。間違いなく、正規のエンディングへと進んでいるのが演出的にもよく分かる。


『その生命力はどうやって減らしているんだ?』


 ユーは一体どういうつもりでそれを聞いたのだろう。ただの好奇心なのか、それとも何か策を思いついたのか。


『私の場合は魔物の生成などだ。魔王の力を用いれば生命力を対価に何でも生成することができる。私は、絶えず魔物や罠を用いてこの老衰をするための環境を整えてきた』


『じゃあなんで俺はここへ来れたのかな。アズマ達の資料のおかげ?』


『洗脳を受けた勇者以外はもともと通すつもりだったのだ。かつての私よりも良い策を思いつくかもしれないと思ってな。私は拠点にそう手紙を残してきた。きっと、君にその資料を渡した人々は君が間違いなくそういう人材であると見込み、あえて伝えなかったのだろう』


『じゃあ、もし俺が貴方を倒して、俺自身が最後の魔王になると言ったら倒されてくれるんですか?』


 やはり、ユーは魔王になるつもりなのか。


『あぁ。どのようにして自身を滅ぼすのかについてはご教授頂きたいが』


『貴方は先程魔王の力は生命力を消費することでなんでも生成できる力だと言った。俺はその力をこの国の復興・発展、それから最後のわがままに使って生命力を使い果たそうと考えてる』


『そうか。私としたことが、老衰で死ぬという視点にとらわれすぎていたようだ。それに、この国の昔については私の方が詳しいが、今については君の方が詳しいだろう。よろしく頼んだよ』


 ヴェスティはそう言って心臓を刺せと言わんばかりに両手を広げた。それは、まるでヴェスティが刺した親友の、あの時の姿と全く同じだった。


『こんなに長く生きたのだ。君に膨大な生命力を明け渡すという点において、生命力切れ、すなわち老衰で私が死ぬのだと。そう、勘違いしても良いだろうか。さぁ、最後の勇者、最後の魔王になる者。私を殺し、魔王という存在を滅ぼしてくれ』


『あぁ。分かった。貴方は老衰で死んだ。俺が証人となろう。あとは、任せて……!』


 ユーはヴェスティの胸に剣を突き刺した。胸を刺されたヴェスティも、膨大な生命力が体に入ってくるユーも、どちらも苦悶の表情を浮かべた。やがて、ヴェスティの体からは完全に力が抜け、ユーは苦しみながらも立ち上がる。


『マグナス!アズマ達!それから……村のみんな!俺、魔王を倒したよ!新しい魔王になっちゃったけど!!』


 マグナスというのは、あの大男の名前なのだろう。そして、僕の名前も呼ばれた。何故だか一瞬だけ、ホログラムの中の彼と視線が合ったような気がした。


 ユーは胸に手を当て、背筋を伸ばして叫ぶ。


『……俺は!最後の魔王、ユー・スティシア。正義の名を冠する者。先代の魔王、ヴェスティの無念を晴らすため、そしてこの国の平和を紡ぐため、すべての生命力をもって俺の正義を執行する!!』


 ユーは魔王に似合わぬ白い光を身に纏う。その姿は一瞬で光に覆われ見えなくなった。係長はすかさず地図を縮小図に戻す。


 魔王城から放たれた光は各地へと飛び散り、泉は再び水を手にし、枯れた木は緑を取り戻し、壊れた家屋は新築のように綺麗になる。舗装されていない道にはレンガが敷かれ、川には橋が架かる。


「係長、あの大男、マグナスにフォーカスしてくれませんか?」


「うん。俺も気になってたところ」


 マグナスは小高い丘の上で、魔王城から放たれる光を膝をつきながら見上げていた。彼には魔王城でなにが起こっているのか分かっていない。しかし、足元の岩場に短い草が生えるのを見て、何となく気づいたらしい。


 すると、空から一枚の紙と僕達が渡した資料ががひらひらと舞い降りてきた。マグナスは、それがユーによるものだと直感で気づき、すぐさまそれらを手にし、その紙を読み始めた。僕達も、マグナスが読んでいるものを読ませてもらった。


 そこには、ユーの最()のわがままが書かれていた。


『マグナスへ


 君は泣いているのかな。なんてね。本当は見えていたよ。ごめんね、最期のわがまま、直接言えないや。俺は魔王となり、自身の生命力を使い果たすことで魔王という存在を消すことにしたんだ。これは俺の意思。決して先代の魔王から圧力をかけられたとかじゃないよ。


 で、俺のわがままね。勇者のユー・スティシアというよりも、かつて勇者にあこがれていた一人の男の子としてのわがままかな。俺のことを語り伝える役目を君に任せたい。君は確かに強面だけど、根がいいのは俺が一番分かってるからね。きっとみんなも分かってくれるよ。


 それから、アズマ達のノート。俺の力でもアズマ達が教えてくれた不滅の罠を完全に消すことはできなかった。柵とか檻とかは作ったけど、急に表れて何か分からなくなってると思うから、その地図をもとにしてみんなに伝えて欲しいな。今後は街の外へ冒険者達が出られるようになるからね。


 最期に。君が相棒で本当に良かったよ。さようなら。


 最後の勇者であり、最後の魔王であり、君の相棒 ユー・スティシア』

――ピピッ

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