プロローグ
ねぇ、世界は誰が救うと思う?
指導者?
神?
介入者?
英雄?
それとも……キミかな?
ところで君はチェスのルールを知っているかい?分からなくても大丈夫。ボクが教えてあげるから。知って欲しいルールはただ一つ。ポーンは最も奥のマスに進めば最強の駒であるクイーンにでもなれるってこと。これを「プロモーション」と言うんだ。まるで主人公みたいだよね。キミもそうは思わないかな?
もちろん、プロモーションをするのはすごく大変だし、限られたポーンにしかなしえないこと。それに、ボクは何も「努力は必ず報われる」と言いたいわけじゃない。ポーンがプロモーションをするには、他の駒の犠牲、時間、それから運が必要なんだ。泥臭く、汚い道。でも、それが美しいとボクは思う。
美しいと感じるのは、ボクがこの物語にとってのほぼ第三者であり、かつ、この物語がすでに過去の出来事であるからだ。エンディングというものは、そうやって定義される。
でも、ボクはこの物語がハッピーエンドかバッドエンドかなんて定義しない。この物語がハッピーエンドなのか、そしてハッピーエンドとはそもそも何なのか。キミ自身が決めるんだ。
キミは救い、見届けることになるだろう。
成績という名の冠に縛られた者たちを。
失くした記憶に左右される者たちを。
ラベリングに囚われる者たちを。
そして、キミは全員を救えるわけじゃない。
1万年間主の目覚めを待ち続けた守り人のことは。
感情を理解できない人造人間のことは。
猫をかぶった優等生のことは。
そもそも、全員がキミの救いを必要としているわけでもない。
機械の進化を見続けたいだけの少年は、既に願いを叶えた。
そもそも、舞台裏を担うものたちにはキミの救いなど不要であろう。
キミの物語は一見すると目的がない。ただ流され、その場を乗り切り、時だけが過ぎていく。キミは成長する。キミは誰かを救う。それでも、キミの最終的な目的は分らない。
しかし、それが人生なんじゃないかい?主人公のように、誰もが大それた夢を持っているわけではないだろう。
「世界は誰が救うのか」。この問いの答えを見つけることを、この物語の後付けの目的として定めておこうか。じゃないと、目的の分からないまま進む物語など読者に離れられてしまうだろうからね。
もう間もなく幕が開く。ブザー音と共にキミはこの物語の前座であるボクのことなどは忘れ、「キミ」という役を演じる演者になるだろう。
「私は、これがハッピーエンドだと思っていたんです」
「エンディングなんてものはねぇ。いつだって今がスタートラインだ」
「ハッピーエンドには君が必要だ」
「誰かにとってのハッピーエンドは誰かにとってのバッドエンドでもあるのよ」
「僕たちは、過去の分岐を変えられないんだ」
「例えそれがハッピーエンドのためでも、我は許さぬ」
「目的の達成がバッドエンドにならないといいですね。私も、あなたも」
「最悪のバッドエンドじゃなくて、最高のハッピーエンドを考えなくちゃ」
「俺が物語の登場人物だったら、ハッピーエンドを迎えられたんだろうな」
「ハッピーエンドに代償が必要なら、俺が払おう」
「ハッピーエンドは永久的なものでなくてはいけないの」
「ハッピーエンドはバッドエンドから逃げ出さない人だけが迎えられる」
「ハッピーエンドが1種類とは限らないんじゃない?」
「俺は一度バッドエンドを迎えた身。今度こそは」
「自らバッドエンドを引き受けたなら、それは認めてあげないと」
「その後に苦難や困難に出会えなくなるなら、ハッピーエンドなんて僕は願い下げだね」
「どうして人間は苦難や困難の先にあるハッピーエンドを望むのでしょうか?」
「誰かにハッピーエンドを与えられてしまったら、無理にでも受け入れるしかないんじゃない?」
「むー!(コンフィは今幸せなの!)」
「きっとボクにとってのハッピーエンドはボクが一番分かってないんだ」
「ハッピーエンドってやつは意地悪でさ、いつもギリギリで逃げちまうんだ」
「悲劇の美しさというものはフィクションだからこそ映えるものなのだよ」
「ぼ……、ぼ、僕は、たぶん不老不死だから悲劇を理解できないんですね」
「喜劇を人生に求めるなんて間違ってるんじゃない?人生にキリなんてものないのにね」
「『喜劇!』『はね、実を言うと』『初回限定!!』『でのみ楽しめます』」
おや、緊張しているのかい?大丈夫さ。別にキミはこの劇の主演ではないからね。
さぁ、いってらっしゃい。
では最後に。
この素晴らしい物語を世へ届けるために力を貸してくれた紡ぎ手と今このメッセージを読んでくれているキミへ最大の敬意と感謝を。
――ピピッ
全知全脳システムが≪エラー:表記できません≫の(送る相手の名前を入力してください)様が情報を読了したことを認識しました。
全知全脳システムはあなたの閲覧を歓迎し、今後もあなたのために情報の提供を続けます。




