転生したら魔法の鏡だった件 〜毒リンゴ事件の黒幕になりかけました〜
あの日、俺はブラック企業の終電帰りで倒れた。
気づいたら、鏡になっていた。
しかもよりによって、“あの”魔法の鏡。そう、白雪姫の世界に出てくる、あの鏡である。
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「鏡よ鏡、この世でいちばん美しいのは……誰?」
出た。毎朝恒例、メンドくさい儀式。
「それはもちろん、あなた様です、女王陛下」
うわべだけの褒め言葉にうんざりしつつ、俺は今日も仕事をこなす。
心の中では(絶対、白雪姫の方が可愛いだろ)と毒づきながら。
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そう。女王のご機嫌を取るのが俺の“業務”である。
めんどくさい職場に転生したもんだ――と、嘆く間もなく事件は起きた。
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その日は特に寝不足だった。前夜、上司が夢にまで出てきて、精神がすり減っていた。
「鏡よ鏡、この世でいちばん美しいのは……誰?」
つい、口が滑った。
「それは……白雪姫です」
……。
言っちゃったぁあああああ!?
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「……白雪姫、ですって?」
あ、これアカンやつ。
女王の顔が引きつるのが、鏡越しにもはっきり見えた。
やばい。なにかが、致命的にやばい。
これって、毒リンゴルート入っちゃった!?
え、てことは俺が――原因!?
これって“殺人教唆”?“魔法補助罪”?
いやいや、ただの鏡なんですけど!?
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白雪姫、毒リンゴで昏倒。
王子のキスで復活。ホッとしたのも束の間――
「この鏡、処分しよう」
……は?
「彼女が白雪姫と言ったのは、この鏡だと聞いた」
おい、誰だチクったの!?王子、情報網すごすぎるだろ!
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俺は、王城の炉に放り込まれた。
うわー!!!やめろー!!!俺は悪くないぃぃ!!
……。
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目が覚めると、そこは六畳一間のアパートだった。
「夢……か……?」
と、そこでふと目線を横にやると。
枕元に――真っ赤なリンゴが一つ、置かれていた。
……え、なにこれ。デジャヴ?
まさか――続編、あるのか……?
ここまでお読みくださりありがとうございます。
今回はちょっと変わった「転生もの」に挑戦してみました。
気に入っていただけたら、嬉しいです✨