第8話 喧嘩を売ってしまいまして
皇軍の剣士ゾルマとの戦いを生き抜き、クロスドリアへ飛び移った信彦達。しかし敵との戦いで重症を負っていた信介は、運び込まれた病院で手術を受けていた。
手術が終わるまでの間、廊下で待つ信彦達は緊張感に包まれていた。
「信介さん…!」
「保津…」
手術開始からおよそ3時間。部屋の扉が開いて穏やかな表情のドクターが現れた。
「先生!保津は大丈夫なんですか!?」
「安心してください。信介君は一命は取り留め、あとは意識が戻るのを待つだけです。それも時間は掛からないでしょう」
「良かったぁ~…!」
信介は病室に移された。彼が目覚めるまで、信彦達は打倒雨天皇に向けて仲間探しを始めた。
「信介さん、起きたらまた仲間が増えてビックリするでしょうね…」
「私が合流した時も彼は病気で寝ていたね」
プレッツ三姉妹が初めてのクロスドリアに興奮してどこかへ行ってしまった一方で、ナナは冷静でいた。
「なにか気がかりですか?」
「うん。あんな強そうなやつに私達は勝てるのかなって…」
「今は勝てないってことだけが分かったんです。だから仲間を集めて強くなって、次こそ勝つんです!」
「…そうだよね。これくらいでへこんでたらこの先やっていけないや」
強力な者達が集まる場所と言えばクエスト受付場。そこへ着いてからすぐ勧誘を始めたのだが…
「雨天皇に歯向かうなんて馬鹿な事やめときな」
「凡人が集まったところで勝てるわけないっつーの」
「一生雨なのは嫌だけど…殺されちゃうよりはよくない?」
仲間になる者は誰一人として現れなかった。それほどまでに雨天皇は恐れられている。そして、封印雲によって覆われた世界での生活を誰もが認めてしまっているのだ。
「…帰らない?」
そう信彦が呟いた時だった。
「お前らか!雨天皇をブッ飛ばそうってほざいてるやつらは!」
諦めていた彼らに一人の青年が声をかけてきた。
「そうですけど…もしかして仲間になってくれるんですか!?」
「いいや、仲間になんてならない!何せ俺は打倒雨天皇を目的に集まったガッツァーのリーダーにして最強の男、ノア・カサエルだからだ!」
誰も知らない名前。当然ノーリアクションだ。
「お、俺を知らないのか?…まあいい。とにかくそういうわけだから、お前らは家に帰って雨漏りしてる天井から落ちてくる水滴でも眺めてるんだな」
「…そっちはそっちで勝手にやればいい。僕達には僕達なりのやり方があるんだ。ほら、帰った帰った」
「ワッハッハ…」
投げやりな口調な信彦だが内心穏やかじゃない。相手が会ったばかりの人物でなかったから、今すぐテーブルに置いてあるコップの中身をぶっかけていたところだ。
「私達はヒジョ~に機嫌が悪い!冷やかしなら一昨日来れば良かったな!」
しかしナナは違った!彼女は魔法でコップの中身だけを浮かせて、叩きつけるようにノアへ落としたのだ!
「おや?雨漏りしてるみたいだね。タオル貸してあげようか?」
「良くやったナナ!」
ハンカチを頭に被せるナナに、本音を漏らす信彦。アワアワと慌てるレイラがタオルを近付けるが、それよりも先にノアが爆発した。
「テメーら!もう許さねえ!ついて来い!全員ブチブチにのめしてやる!」
「ヤッパリー!信彦さん達大ピンチ!」
「パグの勘が当たったね!ここに来て良かったよ!」
「戦いなら加勢しますよ!」
ちょうどいいタイミングでプレッツ三姉妹が駆けつける。彼女達はノアを睨み付けながら、信彦の周りに集まった。
「1対6か…まあいいさ。ついて来い!」
そして案内されたのは地下にある訓練場だった。ここでノアを相手に全員で戦えと言うのだ。
「負け恥晒すのも嫌だろうから他のやつらは追い払っておいたぜ」
「やめましょうよ信彦さん!あの人凄く強そうですよ!?」
「まあまあレイラ。向こうは一人、私達は六人だ。負ける道理はないよ!」
ジョーノもやる気満々で、全員レイラのリュックから適当な傘を抜い取る。レイラもこうなってしまってはと覚悟を決めて傘を抜いた。
(開くと正面に壁を建てるウォンルー…これでサポートしないと)
「さあ、掛かってきな!」
ノアは左手の人指をクイクイと動かして挑発。しかしそれよりも、彼の広げた傘に注目が集まっていた。
「レイラ!あれって!?」
「私も混乱しています…こうなったらとりあえず勝ちましょう!勝って事情を聞くんです!」
そしてレイラ達は挑むのであった。
ブレイブレラとそっくりな傘を開く青年、ノア・カサエルに…




