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第28話 人でなしブギーマン

 先日には、ノア、信介、レイラが強力なモンスターである地砕きのパラケルススを撃破した。


 そして今日はジョーノ、ツナ、パグのプレッツ三姉妹が強敵に挑もうとしていた。

 今回のターゲットは人でなしブギーマンというあだ名が付いた指名手配犯である。三人はブギーマンらしき男がいたというテラという街に来ていた。


「どうして私達がブギーマンと戦わなきゃいけないのよ…」

「クロスドリアと違ってここは天井がないんだね」

「オーノー!傘ヲ持ツ手ガ疲レタ~」


 三人はブギーマンの似顔絵が描かれた手配書を広げて、すれ違う人々の顔を睨み付けた。しかし似顔絵に近い顔をした人物を見ることはなかった。


「そろそろ日が暮れるよ…今夜は錘が降ってくるって予報だったし、そろそろホテルに入った方がいいかも」

「そうね。パグ、傘をプリーズ」

「ハイ!」


 三姉妹はレイラからいくつか傘を借りて来た。パグがバッグから傘を取り出して広げると、ツナがそばへ寄る。それを閉じた途端に二人の姿が消えた。これは傘が閉じた時、内側にいた者が隠れる事ができるカサガクレという傘である。


 ジョーノは一人を装って部屋を取った。彼女達が入ったホテルは部屋にあるベッドはどこでも変わらず二つ。客の人数によって値段が変わるというもので、二人分得する事が出来た…が、これは立派な犯罪である。


「怪シマレテナイヨネ?」

「大丈夫よ。素人には普通の傘にしか見えないだろうし」


 ツナは先にシャワーを浴びている。二人はテレビを点けるとベッドに座り、明日からどうするか話し合いを始めた。



 しばらくすると天気予報の通りに空から錘が降り始めた。すると防壊シャッターが下りて、外の景色が見えなくなった。


「人でなしブギーマンについておさらいするわよ。本名はボイル・シャルル。元塾講師で態度の悪かった子供に体罰を加えてクビ。その後、レインランドの各地で子供を攫っては瀕死になるまで痛めつける悪逆非道な男に堕ちた。こいつのせいで外に出なくなった子供が大勢いる。ボイルが捕まれば子供達も安心して外出すると思うわ」


 被害に遭った子供の証言によると、ボイルは犯行の際に奇妙な能力の傘を使うらしい。油断ならない相手だ。


「私達ニハレイラカラ借リタ傘ガアル!ドンナ悪党ガ相手デモ平気ダヨ!」

「そうね。それに私達も元悪党。経験を活かして絶対に捕まえるわよ」


 そうして心を一つにして一致団結…するにはメンバーが足りなかった。


「それにしてもツナってば遅いわねぇ」

「ツ~ナ~?」


 のぼせていないだろうか。心配になったパグが浴室を覗こうとドアを開けた。


「オ姉チャン大変!ツナガイナイヨ!?」

「なんですって!?」


 シャワーを浴びていたはずのツナが衣類を残して消えた。異変を前にして二人は浴室を離れると、ベッドルームに戻り武器となる傘を取った。


「ツナ、大丈夫カナ…」

「それよりも自分の身よ!生きてるかどうかは敵を捕まえれば分かることだわ!」


 元は盗賊だ。ジョーノは妹の身を案じながらも冷静(ドライ)な思考で、自分の身を守る事を考えていた。パグも姉のためなら命を捨てるつもりだが、それは姉妹愛ではなくチームのトップをやらせてはならないという判断からだった。


「どこにいるの!隠れてないで出てきなさい!」

「スコープオン!」


 パグが透明な生地の傘を開いた。内側から覗くと壁を一枚透過して向こう側の状況が分かる、スコープルフという優れた傘だ。


「ム…」

「どう?敵はいる?」

「虫ガ沢山イル」

「虫なんてどこにでもいるもんでしょ!」

「違ウ!私達ノ周リニイルンダヨ!」


 それを聞いたジョーノは傘を奪い、ベッドの上でグルっと身体を回した。そして浴室、廊下、果てには外の外壁にまでビッシリと虫がいる事を確かめると思わず青ざめた。


「気色悪ッ…錘が降ってるから外には逃げられないし…迂闊だった。敵がいるかもしれない街中で手配書を広げたら、そりゃあ返り討ちに遭うわ!」

「ドウスルノ?!」

「決まってるでしょ!逃げる!」


 ジョーノは扉を蹴破り、虫だらけの廊下を走り出した。虫が集まっているのは彼女達がいた部屋の周りだけ。安全な場所はまだ残っていた。


「気を付けな!こいつらナメクジヒルは雨が液体じゃない時は動物の血水を狙って襲ってくるよ!」

「嫌~!」


 虫は逃げるジョーノ達を追いかける。しかし途中、人の気配がある部屋の前を通り掛かると隙間から中へ入っていった。


「無関係ナ人ガ!」

「悪いけど丁度いい!囮になってもらうわ!」


 我が身第一のジョーノは遅れるパグの手を引いて、ホテルのエントランスまで走った。


「大変よ!この建物にナメクジヒルが湧いたわ!早く駆除できる人を呼んで!」


 ジョーノを先頭に逃げて来る客人を見たホテルマンはガラスで守られていた緊急用のスイッチを叩いた。これを押す事で昼夜問わず、テラのエリート冒険者が駆け付けるのだ。



 ホテルにいた者は頭を守りながら外へ出た。ジョーノ達も両手で錘から頭を守りつつ、周囲を見渡した。そして頭を隠さず走っていく人影を見ると、そいつが犯人だと確信して追いかけた。


「待ちな!」

「ツナヲ返シテ!」


 追いかける男の手には不気味なデザインの傘が。その中からホテルに現れたナメクジヒルが零れ落ちていた。


「まさかあの傘、ナメクジヒルの巣になってるの?」

「エイ!」


 パグは傘を投擲。後頭部に命中させ、男は転倒した。

 ジョーノは男が握っていた傘を奪うとそれを開いた。するとその中から大量のナメクジヒルと共に、姿を消したツナが流れ出て来た。


「そうかこの傘!生き物を捕まえておけるんだ!」

「ドウシヨウ!コノママジャ失血死シチャウ!」


 傘の中にいたツナの全身にヒルが噛みついていた。

 ジョーノは逃げ出そうとしていた男の髪を掴んで顔を寄せると、手配書に記されていた似顔絵と見比べた。


「間違いない、人でなしブギーマンね」

「お互い様だろ?お前達は俺を捕まえようとした。俺はお前の妹を誘拐した。ここは言いっこなしでさ、見逃してくれよ?そいつも返してやるからさ」

「…チッ」


 ジョーノは頑丈な傘を取ると、男の頭部目掛けて振り下ろした。当然、男の頭からは大量の血が流れ出た。


「それで勘弁してあげるけど…早く止血した方がいいわよ」


 彼女の言う通りだ。ツナに引っ付いていたものを含めて、血の匂いに誘われたヒルが一斉に飛び掛かった。


「あぁぁぁぁぁ!?」

「アンタはホテルにいた無関係な人を巻き込んだ。私はこの場で見逃したアンタを殴った。やってる事に大した違いはない。だから言いっこなし。見逃してよね」



 次の日、ホテルに大量のナメクジヒルが発生した事が新聞に載った。冒険者に殲滅されたヒルは人為的に発生したと推測され、離れた場所で生物を保管できる傘と共にヒルに喰われた人の死体が見つかったという。

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