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第27話 地砕きのパラケルスス

 レインランド北東に位置するマナスフォレストには脚が3本のメルクマルトリポデロという鳥のモンスターが生息している。彼らは肉食性で、鼻から百発百中の吹き矢を放って獲物を仕留めるのだ。

 そんなトリポデロの中に異常な戦闘力を持つ個体が現れた。通常の個体が群れを成して動くのに対し、そいつは単独で行動を行う。さらに暴食とも呼ぶべきその食欲は小動物では飽き足らず、同じトリポデロを喰らわないと満足いかないのだ。

 放置すればやがて森を出てありとあらゆる生物を襲い喰うようになる。そうして地砕きのパラケルススと名付けられ危険視されたトリポデロの討伐クエストが発生した。




 ある日、ノアは信介とレイラを連れてマナスフォレストへとやって来ていた。目的はもちろん、地砕きのパラケルススの討伐である。


「これから強いモンスターと戦うんだろ?どうして堀田達も連れて来なかったんだ?」

「強いっちゃ強いが、俺達に加えてノブ、三姉妹、ナナ、ネメで来たら9人だ。それじゃあ圧倒的過ぎてお前らの鍛錬になんないだろ。あいつらも今度強いやつと戦わせる予定だ」


 ノアは二人の前を歩き、周囲に注意を配りながら森の中を進んだ。通常のメルクマルトリポデロは人間に怯え、よっぽどの事がない限りは反撃せずに逃げていく。しかし逃げずに襲い掛かってくる個体がいたら、そいつが地砕きのパラケルススだ。



 森の中で遭遇したトリポデロはこちらを見ると素早く逃げ出した。パラケルススらしき個体は中々見つからなかった。


「脚が奇数本って俺の世界じゃ見た事ないけど、違和感凄いな…」

「だろうな。俺も初めて見た時はビックリしたぜ」

「二人とも、あそこを見てください」


 レイラが小声で話し始めて雑談はストップ。彼女が指した先にはこれまで見たものよりも大きなトリポデロがいた。恐らくそれこそが地砕きのパラケルススだろう。


「よぉし…俺とレイラが死角から仕掛ける。信介、お前はあいつの前に立って注意を引け」

「分かった、やってみる」


 信介はいつもの通りレイラの兄の傘を持ってパラケルススの前に立つ。猛禽類であるトリポデロは正面の獲物を捉えた途端、頭をガゴンと鳴らした。


「来るか!」


 そうしてパラケルススの鼻腔から発射された吹き矢を、信介はちゃんと視てから確実に回避した。吹き矢は背後に並んでいた木々を砕く事でその威力を示した。


「や、ヤバすぎだろ…」


 地砕きというのは恐らく、あの吹き矢が地面に命中した際の光景から付けられたのだろう。傘の力でパワーアップしている信介でも、あれに命中すればタダじゃ済まないと警戒心を強めた。

 パラケルススは走り出した獲物に向かって吹き矢を連射。信介は絶対に触れてはならないと集中して回避に徹しつつ、ノア達が攻撃できるように隙を作った。


「そうだこっちだ!俺を見ろ!」


 パラケルススは身体ごと信介の方を向いた。そうして背中がこちらを向いたその時、ノアとレイラが飛び出した。


「今だぁぁぁ!」


 ノアは腕の数よりも多い脚にタックルを決めてパラケルススを転倒させる。倒れたところに、頑丈な傘を持ったレイラが何度も叩きつけた。




 目的を達成した3人はクロスドリアへ向かって歩き始めた。倒した証拠となるパラケルススの死骸は信介が背負っていた。


「お、重い…」

「それも鍛錬の内だ」

「頑張ってください、信介さん!」

「お、おう!」


 呆気なく倒せてしまったと思うだろう。しかし考えてみて欲しい。元々は平和な世界で学生をやっていた信介が作戦通りに事を進めたおかげで奇襲は成功したのだ。

 当然、今回の戦いもいい経験となる。しかしこれ以前の戦いや出来事から、彼は確実に成長しているのだ。

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