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第26話 ある日のナナ

 この時期になると気温が下がり、どんな雨粒も凍った状態で降り注ぐ。物によっては外を出歩くだけで危険な状態となり、クロスドリアの住民は都市の中での生活を強制され、雨宿にいる人間は身動きを取れなくなる。それ以外には、屋根が脆い民家に住む者は地下室での生活を余儀なくされるのだ。


 現在は凍り付いたトゲが降り注いでいる。ただでさえ危ないトゲがさらに殺傷力を増して地面へ降り注いでいた。屋根に付いているパネルも全部交換になるだろう。




 買い物に来ていたナナは都市の出口から落ちては砕けるトゲを眺めていた。このトゲが降り続けている限りはガードコートでも歩く事は出来ない。防御力の高い魔法の傘があれば出歩けなくはないが、それでも無傷では済まない。屋根の外で働く者達にとっては厳しい時期だった。


「帰ろうかな…」


 買い物を済ませていたナナはそのままクエスト受付場へ戻った。この天候ではクエストを受けに来る者はおらず、受付業務自体も休業中だった。

 関係者専用の扉を開けて階段を上がる。受付嬢の2階から上は打倒雨天皇を目的とするガッツァーの拠点となっていた。


「信彦、帰ったよ~」

「おかえりなさい。なあ、保津と会わなかったか?走りに行ってから随分時間経つんだけど…」

「…信介のこと?会わなかったよ。まだ帰って来てないんだ。信彦はトレーニングしないの?」

「いや、これが僕のトレーニングなんだよ。今日一日、何があってもこの部屋から出るなってノアに言われて…見てこれ、簡易トイレ」

「ワッハッハ…見せなくていいよ」


 ナナはノアに頼まれておにぎりなどを買い出しに行ったのだがこれで納得いった。自分が買った物はこの部屋から一歩も出られない信彦のための食糧だったのだ。



「…こんなのでトレーニングになるの?」

「ただ部屋に籠ってるだけってのも結構ツラいよ。だからほら、暇潰しにって本を貰ったんだ」


 そばのテーブルに置いてあったのは分厚い本ばかりだ。てっきり魔導書かと思ったが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()といった胡散臭い題名の自己啓発書ばかりだった。


「…意味あるの?」

「わっっっかんない。なあ、魔導書とかってないの?こんなのつまんなくて読んでらんないよ」

「あるよ。持ってきてあげようか?」


 ナナは自分の部屋からいくつか魔導書を持って来た。信彦は手に取った魔導書から熱心に読み始めた。



 上から凍った雨が落ちる音がする。リズミカルというには激しい音だったが、それでも読書の雰囲気を作るのにはちょうど良かった。

 ナナは信彦の隣まで椅子を運んで、一緒に並んで魔導書を読むのだった。

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