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第18話 村長の愛娘

「それで…君は一体何者だ?」

「私?私は村長の娘」

「ほうほう村長の…ヒェーッ!?」


 信彦はカミュー村の村長の姿を思い出した。カンザシ村長はノアと同じくらいの背丈の巨漢だ。もしもその愛娘に傷を付けたとなると、無事では済まない。

 信彦は態度を改めた。


「これはこれは!ウチの馬鹿娘三人が大変失礼しました!」

「馬鹿娘って何よ!っていうか当たったのは最後にあんたが殴った一発だけでしょ!」

「うわーん!酷いです!」

「サイテー!」

「コラお前らも頭下げろ!空き缶みたいに潰されるぞ!」

「あはははは、そう(かしこ)まらなくても大丈夫だよ、父さんには言わないでおくからさ」


 少女は傘を閉じて腰のホルダーに挿した。


「それも魔法の傘なの?」

「うん。リュテルスって言ってね、開いた状態でボタンを押せば透明化。閉じた状態ならボタンを押しした状態で突いた物を一定時間透明化させられるんだ。只でさえ雨の魔力の消耗が激しいのに、透明化した状態で動いたらすぐスッカラカンになっちゃうのがデメリットだけど。それじゃあこっちから質問いい?」

「どうぞどうぞ」


 天候がチョコスプレーの霧からお湯の霧に変わった。気温が上がり、ツナの抱えていた瓶のチョコが溶け始めた。


「私を襲った事は黙っていてあげる。だから君達の冒険に混ぜてよ」

「え…どうして?」

「面白そうだから!」


 そんな好奇心だけでついて来られても困る。それに少女の父親の事を考えると、ここで快く引き入れたら後で殺されてしまうと信彦は思った。


「駄目だ。そんな面白そうだからって理由だけで君を仲間には加えられない」

「でもあんた、英雄の武具の話を聞いて興奮してたじゃない」

「俺と保津は異世界の選ばれし者だからいいの。迷惑料ってやつでさ」

「はぁ、意味分かんないんだけど」

「つまりねえ…」


 信彦とジョーノの会話はそこからどんどんヒートアップしていった。放置された少女を見かねたパグは、彼女との会話を引き継いだ。


「冒険したいノナンで?アナタはこんナいい村に住んでルのに」

「だって私、外は危ないからってこの村から出してもらったことないんだよ。それっておかしくない?」

「う~ン、なんでダロウ。でも外は危ないヨ。こんなに広いんだカラ村の中で遊べばイイじゃない?壁を建てて安全にナルシ、何が問題なの?」


 ジョーノ、ツナ、パグでは少女の気持ちは分からないだろう。両親に捨てられるという形で住む場所を失った彼女達と、溺愛されて住む場所から離れられないという少女で正反対とも言える境遇なのだから。


「私にとっては大問題だ!私は外の世界が見たい!雨が降ってるからって傘から出なくていいことなんてある?それと一緒!この村は傘だ!父さんは私を傘から出してくれない!濡れるくらいなら家にいろって言うモンペなんだよ!」

「横からすみません。その言い方は良くないと思います。村長さんはあなたが大事で傷付いて欲しくないから、村の外に出て欲しくないんじゃ──」

「だからそれがモンペなんだって!」


 雰囲気が悪くなっていき、流石にジョーノ達も言い争いをやめて仲裁に入った。


「ほら二人とも落ち着きなさい」

「悪いけど、冒険に行きたいなら村長さんの許可を得てからだ」

「得られるわけないよ!」

「そんな事すら出来ない君がこの先なんの役に立つっていうんだ?」


 その言葉が効いた。少女は黙って目をうるうるとさせると、どこかへ走り去っていった。


「…今のはダメでしょ」

「だよね…あ~!やっちゃった!」

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