第17話 謎の少女
モンスター討伐に向かう仲間を見送った信彦らは、村の防衛に就いた。ただ防衛と言っても有事があるまでは特にやる事もなく、その時が来るまで村の外側を時計回りで歩いていた。
「防衛なのに私達固まってていいの?せっかく4人いるんだから東西南北に配置すればいいと思うんだけど」
「それだと四方から同時に大勢で攻められた時にどうしようもない。もしも手に負えない脅威が襲い掛かって来た時、ここにいる人達が逃げられるようにしておく必要があるからね」
「意外に考えてるのね」
「最悪のケースを想定して動く。これ、基本中の基本ね」
現在の雨は霧。それもチョコスプレーの甘い霧だった。
「GC来てなかったラ服ベタベタダッタよ~」
「食糧になる雨はなるべく採集しておきましょう」
ツナは村の人から貰った大きな瓶にチョコスプレーを集める。やがて溶けてしまうが、それでも食べられる事に変わりはない。
「にしても度々食える雨は見るけどさ、汚くないのかな?」
「降ってくる食べ物は大地とか他の物体に触れるまで雨の魔力で守られてるから平気なんだよ。詳しい原理は解明されてないけど」
「へ~そうなのか…ん?」
解説を聴き終えた直後に違和感を覚えた。今のはジョーノ、ツナ、パグの誰の物でもない声だった。
「ねえ、私も仲間に入れてよ」
突如現れた少女に三姉妹は傘を構えた。
「こいつ、今まで全く気配を感じさせなかった!」
「そんな警戒しないでよ。別に悪いやつじゃ──」
話を聞かずに三姉妹が攻撃を仕掛ける。少女に敵意はなかったが、仕掛けて来るならばと腰に挿していた傘を抜いた。
「居合ヨ!」
傘を使っての居合斬りだ。いち早く反応したパグが攻撃を防ぐと、二人は背後に回ってY字型に包囲した。
「妙な動きしない方がいいわよ」
そうジョーノが警告した瞬間、少女の姿が消えた。
「え!?」
「ボタンに触れてた指が力んでた!傘の能力だよ!」
「何の能力ナノ!?」
そして次の瞬間、彼女達の中心に少女が現われた。そして反応されるよりも先にその場で回転。閉じた傘で3人同時に殴り飛ばしたのである。
「きゃあ!」
「やめろ!」
遅れた信彦がリュックから傘を抜いて突撃する。傘を構えて目前まで迫ると少女の姿が消える。それに合わせて背後に跳ねた信彦は傘を開いた。
傘の表面から割れると衝撃を発生させるシャボン玉が飛び出し、目の前でパチパチと弾けた。
「うわぁ!」
衝撃を喰らったことで少女が姿を現す。泡一つ一つの衝撃は大したことないが、それが集まって同時に割れた事で人の身体を吹き飛ばす程の威力を発生させたのだ。
「いってって…」
「それで…えっと…あれ、そもそも戦うことになったのジョーノ達が原因じゃない?」
信彦はその少女を一目見て、彼女は悪人ではないと確信した。