第15話 依頼を受けて
地獄のようなバケツ特訓が終わり、信彦達はノア・カサエルと出会ったクエスト受付場に移動した。
実はここ、ノアがリーダーを務めるガッツァーの秘密基地なのだ。
「よく見たらこのボードに貼られてるクエスト、全部上級の物ばかりじゃないですか」
「上級クエストは危険な物ばかりだ。キツイ、怖い、危険の3Kクエストを進んでやるのも、俺達ガッツァーの役目なんだ」
ガーという機械音を鳴らして、受付カウンターの奥にあるプリンターから紙が出る。近くにいた女性はそれを取ってノア達の前にやって来た。
「ちょうど新しいクエストが来たよ、リーダー」
「どれどれ…うん、こいつはいいや。俺達が行く」
ノアは7人分のレインコートをレンタルした。これは雨の魔力を持った物体からのダメージを軽減させるガードコートと呼ばれる物だ。
「数に限りがあるから、破れないよう失くさないよう慎重に動くんだぞ」
「ノアは着ないのか?」
「何が降ってこようが所詮は雨だ。雨を浴びただけでくたばる人間なんていやしないだろ」
つまりは生身で耐えるということだ。尋ねたナナは理論的でない返答に苦笑いを返した。
「ははは…ところで私達は何をするんだい?」
「ここクロスドリアから出て南南西にある村で防壁の建設が始まる。俺達は壁が出来上がるまでの一週間、村の防衛だ」
「一週間?そんな短期間で壁が出来上がるのかよ?」
「魔法を使えばそれぐらい出来るさ」
それを聞いた信彦は「ほうほう」と納得するリアクションを見せた。
「クエストってことはやっぱり達成したら報酬出るのか?」
「雨天皇を倒す為に俺達に僅かでも協力する。それが依頼するための条件だ。壁が出来上がったからって何か貰えるわけでもないから、そこら辺は気にすんな」
「あ~そういう感じなんすね…ボランティア的な…」
ノアはGCを着た一行を見て、改まって話し始めた。
「信介、ノブ、レイラ、ナナ、それからプレッツ三姉妹!」
「私達は一纏めですか!?」
「ガッツァーの目標は打倒雨天皇だ!その後には青空の下での平穏な暮らしが待っている。これから俺達がやるのはその前準備だ!皇軍のやつらと戦うことはないだろうけど気を抜くな!何事にも全力で!ガッツァァァァ!」
真面目な話の最後に突然叫ぶものなので、信彦達は困惑していた。
「…語ってるやつがガーツァーって叫んだら聞いてるやつもガッツァーって返すんだよ」
「俺、体育会系じゃないからそういうノリ分かんない…」
「理解出来なくても合わせんだよ!そらもう一回行くぞ!…何事にも──」
「「「「「「「ガッツァァァアアアアアアアア!」」」」」」」
「はえーよ!俺が改まって話し始めたばかりだろうが!」
「ガッツァーの部分だけやり直すんじゃないんかい!」
興が冷めた。ノアは話を遮られたが、とりあえず大声で返事をしてくれたということにした。
そして彼らはクロスドリアを出発して、南南西にある村を目指した。