表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/23

第11話 ガッツァー恒例、地獄のバケツ特訓

 雨の中、ガッツァー頭領ノアとの決闘の末に和解した信介。病院へ行くと既に仲間達は目を覚まして談笑していた。

 だが信介と共に病室に入って来たノアを見た途端、静寂が訪れた。



「お前ら治り早いんだな。特に堀田…はいこれ」

「お見舞いの品どうも~じゃないぞ保津!なんでそいつと一緒にいるんだよ!」

「あぁさっきは悪かったな。俺達以外に雨天皇に戦おうとするやつがいたから試したくなっちまった」


 信彦をはじめ仲間達はノアを警戒していたが、レイラは特に気にしていなかった。一通りの話を聴いて、最初に口を開いたのも彼女だった。




「それではノアさん、私達は協力関係という認識でよろしいのですね」

「そんな堅苦しいもんじゃねえよ。俺達は同じ目的を持った仲間だ!」


 軍隊をイメージさせるリーダーや隊長ではなく、頭領という職名なのがよく似合う男である。ノア・カサエルは誰とでも同じように接し、こうして仲間に入れるような器の大きい人間だった。




「ところでお前ら、弱いな!」


 だがその一言で空気が凍り付く。信彦達は多勢で挑んで負けている。なので少し、いや結構堪えるところがあった。


「まだ日暮れまで時間がある。皇軍の精鋭と最低限戦えるよう鍛えてやるから支度しろ」

「え、いや僕達入院したばっか──」

「う、る、せ、え」


 威圧された患者達は即効着替えて、黒い粒が降る外の世界へ出た。


「な、なんだこれ…BB弾みたいだな…」

「ただの黒粒雨だ。別に毒とかはねえけど、耳とか鼻の奥にいったら耳鼻科送りだから気を付けろ」



 これから一体なにをさせられるのか。考える間もなく、信彦達は大きなバケツの付いたヘルメットを装着させられた。


「こんな物被って一体なにすればいいのよ?」

「程よくこいつらの相手が出来そうなのは…アッシー!来てくれー!」



 ノアが誰かの名前を叫ぶ。するとクロスドリアの方から坊主頭の少女が走って来た。



「あいっ!アッシーでち!」

「アッシー、こいつらのバケツ特訓の相手をしてやってくれないか?」

「ひぃふぅみぃ…あいっ!分かりまちた!」


 どうやらこの少女が信彦達の特訓相手だそうだ。正直強そうには見えない。


 アッシーが準備運動をしている間、ノアは特訓について説明をした。



「これからやるのはガッツァーに入るやつの誰もが挑戦して、そして苦戦するバケツ特訓だ。お前らはそのバケツの中が溢れるまでアッシーと戦い続けてもらう」

「えぇ、こんな子と?僕でも倒せちゃいそうだけど」

「倒せたらそのままバケツが一杯になるまで立ってろ。だがノブ、アッシーをナメない方がいいぞ」


 変な呼び名を付けられる信彦。おそらく他の者達にもそういう風に名付けしているのだろう。


「雨の種類は何だっていい。バケツ全体が埋まらなくても、直立した時に溢れたら合格だ。それまでクロスドリアには一歩も入れさせない。飯も自前だから頑張れよ~」


 説明を終えると、アッシーが持って来た組み立て式の椅子に座り見物する気のノア。準備運動を終えたアッシーは竿竹を持っていた。


「あれ、君傘じゃなくていいの?」

「あたちはお子ちゃまだから、魔法の傘を使ったら倒れちゃいます!」


 そして次の瞬間、高速で動いたアッシーは全員の腹に一撃ずつ入れた。すると上半身はガクンと前に倒れ、先程から溜まっていた黒粒雨が流れ落ちた。


「それでは頑張りまちょう!えいえいッウオオオオオオオ!」

「最後の叫びに気合入れすぎだろ!」



 そうして数日間にも及ぶ地獄のバケツ特訓が開始したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ