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第10話 雨に打たれての決闘

 天候は雨。何の濁りもない普通の雨だ。



 クロスドリアの外で向かい合う信介とノア。雨に打たれている二人の髪は潰れている。しかし一向に傘を差そうとしなかった。


「かかって来いよ」

「…」

「やる気がないならこっちから行くぜ!」


 ノアは水を吸った服を着ているのにも関わらず、俊敏な動きで傘を打ち込んだ。右手で持つ傘に能力を強化されている信介は、空いている左腕で防御。何度も打ち込まれる攻撃から身を守った。


「その傘でパワーパップしてるのか。それでも俺の動きについて来るとはやるな」


 次の瞬間、視界から敵が消える。攻撃を予測した信介は垂直に飛び上がった。そして彼が立っていた後方から地面が割れ、光の刃のような物が飛び出した。少しでも遅れていたら串刺しになっていただろう。


「どこ見てやがる!」


 気付くと右隣で傘を構えていたノア。信介は傘を庇おうと身体を捻り、背中に重たい一撃を喰らって地面に落ちて行った。




「この程度の実力か…英雄の武具を集めたところで大して変わんねえよ!」


「…はぁ、やる気なんて出ねえよ」

「おうそうか、だったら帰れ」


 信介は泥だらけになって立ち上がる。しかし戦いの場から去ることはなく、開くことのない傘を左手に持ち変えた。


「モンスターと雨天皇だけが敵かと思ってたら、まさか人間とも戦わないといけないなんて聞いてないぞ、レイラ…」

「何をぶつくさと…」


「さっき取り巻きがいたけどよ、実際のところ仲間はどれくらいいるんだ?」

「ざっと100人ってところだ。全員、雨天皇を倒すって一つの目的のために集まった」

「そうか…ただ選ばれただけの俺らとは違うな。お前らがいるって分かってたら、俺と堀田が来る必要なかっただろうな」

「…そうだな。俺達がいればお前は必要ない。帰った帰った」


「無理矢理連れて来られたけど帰るわけにはいかない。レイラと約束したんだ。雨天皇を倒すって!」


 土を跳ねて信介が走り出す。迎撃に振られた傘をしゃがんで回避すると、そこから立ち上がる勢いを合わせたアッパーカット。ノアの身体が大きく飛んだ。


「へっやるじゃねえの」

「選ばれたからやるなんてつもりは最初からねえ!俺が戦うって決めたんだ!青空を見せてやるって!レイラと約束したからなぁ!」


 跳躍して追い付いた信介が蹴りを打つ。右足を傘で止められたがその直後、さらに左足も打ちつける事で防御を貫通する衝撃を与えた。


「キッツい蹴りだなぁ!」


 滞空能力があるわけでもなく、蹴り飛ばされたノアはそのまま地面へ落ちていった。



「そのままあと10秒間、頭を地面にひっつけてろ!そうすればレイラ達にやったことは許してやる!」


 ノアは言われた通りに動かなかった。だが10秒経つと勝手に立ち上がり、再び信介に攻撃を仕掛けた。


「油断したなぁ!皇軍との戦いはその油断が命取りになるぜ!」

「期待してたぜぇ!思いっ切りぶん殴れるこの瞬間をよオオオオ!!」


 信介の首に石突が激突する!だがそれを押し返すのが信介の勢いだ!そのままノアに詰め寄ると、驚愕していた顔面に拳を打ち込み、大きくぶっ飛ばした!




「ハァッハァッハァッ………気持ち殴り足りないけど、これくらいで勘弁してやる…この傘の力で暴力なんてしたくないしな」


「やるなぁ…気持ちは120点だ」


 しかしその気持ちを乗せた一撃を喰らったノアは血を流しながら立っていた。


「あんなになってもまだ立ってやがる…」


 一度ボロボロにされた信介だからこそ出た感想だった。こっちが根性見せて驚かしてやったと思ったら、今度は向こうの根性に驚かされた。




「…これぐらいにするか。お前がどれだけやる気なのかは良く伝わった」


 だが闘志はもう感じられない。信介のそばまで来たノアは傘を開き、敵であるはずの彼を雨から守った。


「ふぅ…もう戦わなくていいんだな」

「ちげえよ、戦いはこれからだろ…雨天皇をぶっ倒す馬鹿共の集まり、ガッツァー頭領のノア・カサエルだ」

「…雨天皇をぶっ倒す為にこの世界に来た、保津信介だ」



 信介とノアの邂逅。それは最悪の状況から始まったが、戦いを通して雨天皇と戦う意思を認めあうというなんとも奇妙な形で終わった。

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