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学習発表会

 学習発表会、当日の朝。


 呪いについて研究している老齢の男性教員が、職員室で急な提案をしていた。

 急遽教員会議が始まり、全員がとても深刻な顔をしている。ものすごく忙しい時間なのだが、それでも話をしなければならなかったのだ。

 そこにはジョンマンとマーガリッティ、そして魔獣も同席していた。なお魔獣の場合は、同席というよりも主題と言ってよかった。


「今回の学習発表会で、彼女を最古の呪いのサンプルとして発表したいのです!」


 老齢の男性教員は目を輝かせながら訴えていた。

 本当に訴訟級の訴えであり、全教員が難しい顔をしていた。


 なお魔獣の顔は物凄く死んでいた。

 自分が動物園の檻に入れられて、客寄せに使われるのだといわれたらいい気はしないだろう。

 ちなみにサンプルとしてこの国に滞在してください、飲食は保障しますという……本当に動物園の希少動物扱いされていた。

 実際その通りの風体ではある。


「ジョンマンさん。改めて、彼女の状態を説明してください」

「承知しました」


 理事長であるトラージュから説明を促されたジョンマンは、今さらながら「魔獣だけは連れてくるんじゃなかった」と反省していた。

 禁呪ではないが、呪いではある。違法ではないが不道徳な存在だったのだ。


「彼女はもともと冒険者でした。ですが人間関係のトラブルにより、三人の仲間から最古の呪いをかけられました」


 この場合問題なのは、彼女が呪われていることそのものではない。

 彼女が呪われていて、なおかつメリットを得ていることなのだ。

 生徒にそれを明かせば、ろくでもないことになるに決まっている。


「若さを奪われる、剣の才能を奪われる、名声を奪われる。これらによって彼女は、年老いた小動物に変身してしまいました。ですが呪った者たちが奪ったものを活用しすぎてカルマの逆転が発生したのです。最終的に彼女は、この通りの体格を獲得し、なおかつ呪いの力を戦闘能力に転換できるようになっています」

「そうなのです! 彼女は呪いによって体格が変わっています! そのため彼女は、見る者によって見た目の印象年齢すらブレています! 30代に見えることもあれば40代に見えることもあるそうです! また彼女を見た者の第一印象は、常に『剣が持てそうにない』や『少女じゃない』に固定されています!」


 興奮気味に語る男性教員。

 彼の興奮がわからないわけではない。

 本物の恐竜が歩いているのだから、大勢の人に見せたいと思うのは自然だろう。


 だがメリットがある、というのが問題なのだ。人権問題を無視するとしても、彼女を周知させるのは問題がある。人権を無視していいとは言っていない。


「要点は……彼女が呪われる前より強くなっている、ということです。ジョンマンさん、コレを生徒が知れば自分たちも呪いで強くなれる、と思うのではないでしょうか」

「あり得ますね」


「……そうでしょうか?」


 異論を唱えたのはマーガリッティであった。

 他でもない生徒のひとりである彼女は、魔獣を見たうえで『こうすればもっと強くなれる』と聞いてもなりたいとは思わなかった。


 自分がそう思わないのだから、他の生徒もそう思うはず。

 彼女の考えは……他の教員たちの冷たい視線によって否定される。


「貴方のように考える生徒はいます。貴方と違って『そういう方法は嫌だ』と思う生徒もいます。わざわざ探す気は無いと思う生徒もいます……探してでも実践したいと思う生徒もいるのです」


 少なくとも現在のマーガリッティの周囲には、そういう子供はいなかった。

 だが学校にはそうではない生徒もいる。

 そういう生徒を基準に考えるのが安全対策というものだ。


「呪いによるリスクやデメリットを負ってでも強くなりたいという生徒が現れるかもしれない、というだけでも発表は避ける理由には十分です。しかし、彼女という貴重なサンプルを公開したいという気持ちは理解できますし、学術的に意味はあります」


 学術的価値と指導的価値は必ずしも一致しない。

 その矛盾をすり合わせるのが彼女の役目であった。


「生徒ではなく指導者側、研究者に対して発表の場を用意するという形ならば協力できます」

「私の同意は!?」

「……失礼しました。え~~魔獣さんの協力を要請することにも協力できます」

「私の尊厳は!?」

「え~~あ~~……ごほん。あとで話し合いましょう、以上です」

「返事しなさいよ!」

「皆さん、学習発表会の準備に戻ってください」

「アンタ先生なんでしょ!? 質問に答えなさいよ!」

「貴方は生徒ではないので……」

「その態度で協力してもらえると思ってるの!?」

「おっしゃる通り、おっしゃる通りです。しかし……しかし! 時間が押しているんです! 時間がないんです! 後で話し合いましょう!」


 時間の調整も彼女の責任であった。

 彼女は理事長なので、このイベントの責任を負っている。

 円滑に進める義務があったのだ。

 そのために問題を後回しにするのは仕方ないといえる。


「……マーガリッティ、なぜここに呼ばれたのかわからないという顔ですね」


 そして彼女は、母親としても娘に接する。

 背後で呪われた魔獣が抗議しているが、そこは無視。


「留学と言って家出をし、禁呪を学ぼうとしている貴方も、私からすれば危うすぎる生徒です」

「……はい、そうですね。すみません」

「人の振り見て我が振り直せ、です。私の場合は、自分で自分を学びましたがね……貴方と違って、私は不真面目な生徒です」


 理事長であるはずの彼女は、自分を不真面目な生徒と評した。

 その意味をマーガリッティは理解できない。

 今はわからなくていいと、彼女はあえて説明しない。


「マーガリッティ。何が何でも素晴らしい魔法使いになりたい、という強い願いは持っていなければなりません。間違った方向にも、正しい方向にも進みうるのです。そしてどれだけ正しい道を頑張っていても、行き詰った時に人は間違った道に進んでしまうことがある。だから私たちは……悪い道があることを教えてはいけないの。それは知っているだけで毒になる」

「耳が、痛いです。私も禁呪の存在を知らなければ、ジョンマンさんの弟子にはなっていませんでしたから」

「今回のあなたは、危うい道だけではなく正しい道も歩いていると証明する義務がある。貴方のためにも、貴方の生徒になる子のためにもね」


 マーガリッティの学んできたものが国益になる……生徒たちに『まだ正しい努力の方向がある』と示すこと。

 トラージュは改めて、彼女に今回の発表の意義を説いていた。



 学習発表会。

 ミット魔法国の学院におけるソレは、お遊戯を行う場ではない。


 魔法の実力を発表する場であり、生徒たちにとって就職先へのアピールの場でもある。


 多くの生徒たちがこの日を目標の一つとして、魔法の練習に青春をささげている。


 とはいえすべての生徒が『発表』できるだけの魔法の実力を持つわけではない。

 頑張っても成果の低い生徒、頑張ってすらいない生徒。

 それらを押しのけて、高い水準を持つと認められている者だけが発表を許されている。


 この催しに参加できる時点で、生徒は上澄みの人ということだ。


 空には信号弾の魔法が飛び、大きな音や煙、色とりどりの光を発している。

 普通の楽器では出せない音を、楽器に魔力を込めることで発し、通常と異なる曲として奏でている者もいる。


 そのような催しの本番は屋外だ。

 広い校庭、広いコート、広い射的場。

 それらをフル活用し、多くの場で生徒たちが魔法を披露している。


 砲丸投げややり投げのように、攻撃魔法を遠くへ飛ばす者もいる。

 氷や砂のように造形された防御魔法を使うものもいる。

 

 一種曲芸的ではあるが……文字通りの変化球を見せる生徒たちもいた。

 ジョンマン一行……マーガリッティを除く者たちはそこにいた。


「ドザー王国でたくさんの魔法を見る機会は無いからね。こういう時はたくさんの魔法を見て覚えてほしい。だけど最初はこういう魔法を見てほしいわけだよ」


 いや~~来てよかったな~~。

 現実逃避も少し交じっているが、教育者として裏表なく弟子たちへ指導をしていた。

 指導を受けている生徒たちも目を輝かせている。

 この場にマーガリッティがいれば『ああよかった』と安堵するに違いない。


 そこで行われていることは基本的にシンプルだ。

 生徒たちは魔法の弾を発射して、『障害物』に当たらないよう魔法の弾を発射し、遠くの的に当てている。

 障害物の種類は様々だ。地面に立つ棒や、穴の開いた壁、あるいは空中に置かれた輪、陸上競技のごときハードル。

 それらをただ回避するだけではなく、むしろいかに格好よく回避するかで己を魅せている。


 棒と棒の間を蛇行し、壁に開いた穴の縁を撫でるように移動し、空中に浮いている輪を何度も何度も潜り抜ける、地面を飛び跳ねてハードルを飛び越えさせていた。


 あるいは目隠しや耳栓をしてから発射し、そのまま着弾まで何もしていないことをアピールする者もいる。


 犬の競技に見立てて『アジリティー』と呼ばれる魔法の演武、スポーツであった。


「マーガリッティちゃんも時々何気なくやっているが、あれらはすべて高等な魔法だ。ただまっすぐ飛ばすだけなら矢でもできるし、簡単なマジックアイテムでも可能だが、ああいう複雑な弾道は魔法の専売特許と言っていい」


「おおすっごい! これは本に書ける! メモしなきゃ、メモ! これは紀行っぽいよ!」


「空中で急停止したり、急加速する魔法もありますねだぜ……じゃなかった。ありますわね。もしもあれを実戦で使われたらと思うと……面白そうですわ!」


「ミット魔法国……いうだけのことはありますね。我が国でこういう催しを開いても、出せる使い手がいませんよ」


「すごい、すごい! みんな楽しそうね! 素敵だわ!」


「おおう……すごいね、魔獣!」


「ええ、そうね! ……ところで私を捕まえようとしているあの先生は近くにいない? いたら逃げるわ」


 魔獣は普段以上に厚着をして存在感を消しているが、他の者はアジリティーを楽しんでいる。


 リーンやコエモからすれば単純に威力を競うよりもリラックスできるし、オリョオやオーシオからすれば魔法の様々な軌道を学ぶことができる。

 修行によって注意力を学んだ彼女らは、どんどん魔法の種類を学んでいった。


「マーガリッティちゃんが使わない魔法がある……あの、全身を大きく使って『投げる』……いや、撃ってる魔法は何ですか?」

「古典魔法の一つ、投擲魔法だね。見ての通り、魔法をボールのように投げる魔法だよ。軌道の変化は難しいけど、直感的に使用できるし威力も高くできる」

「目隠しをして入って、目隠しをしたまま発射している魔法がありますね。アレは?」

「高等自動機動魔法だね。棒を避けろとか穴を通れとか、事前に指示したとおりに勝手に動く魔法だ。熟練していれば自分の上に待機させておいて、敵が近づけば自動的に発射するようにもできる」

「発射した後も操作している魔法がありますね。アレはサザンカ先生も使っていたような……」

「手動操作型だね。自分の眼と反射神経で操作するから、どうしても魔法使いとしての素養以外の面が求められるけど、途中で停止できることも含めて不意打ちにも使いやすい魔法だよ」

「ジョンマンさん! とても詳しいですね!」

「……ああ、いや、魔法の学校でそういうことを言わないでくれ。さすがに恥ずかしい」


 説明を聞いたザンクが尊敬の眼で見つめてくるが、さすがに魔法使いでも何でもない身で、魔法の学校で『詳しい』と扱われるのは恥ずかしかった。


「やっぱりマーガリッティちゃんに残ってもらって説明してもらった方がよかったかなあ……」


「いえいえ。間違った説明ではなかったですから、恥ずかしがるのはおかしいと思いますよ」


 ミット・ライトラであった。

 先日同様に多くの護衛を引き連れて、ジョンマンのもとに現れている。

 今回の場合はいても不思議ではないので、誰も文句は言っていない。


 とはいえ、後ろからいきなり話しかけられたので、ジョンマン側は慌てて頭を下げる。


「お恥ずかしいところをお見せしました……間違った情報でなくとも、説明すべき者がいると思いますので」

「そういうことであれば、私から……『デュエル流戦闘魔法使い』について説明したいのですが、よろしいでしょうか。ちょうど今から、演武が始まるところなのですよ」

「こ、光栄です……それじゃあ行こうか!」


 一行は『デュエル流戦闘魔法使いの演武』を行う会場へ向かった。


 屋外用の劇場というべき場所であり、魔法使いが演武を行うにはやや狭い場所である。


 注意力や想像力を鍛えている面々は、もうこの時点から推理を始めていた。

 この狭さならば接近戦であろう。それならばフレーム流のように短射程の魔法を使って演武をするのか。


 なお、リーンは舞台が始まるということでただただ楽しみにしている模様。

 その能天気な表情にジョンマンは呆れるが、ライトラは喜んでいる。


「デュエル流の演武は楽しまれてこそ……恥じないでくださいね」

「それはそうかもしれませんが……」


 舞台の前には席が設けられているのだが、ほぼ満席。

 そのうえ立ち見客も大勢見える。

 一行はVIP席であろう最前列に用意されていた席についた。


「そういえば! 貴方は演武をなさらないのですか!?」


 礼儀正しいのか正しくないのかわからない口の利き方をするリーン。

 それに対してライトラは少し悲しそうに答えた。


「私は……ここで披露できるほどの腕前ではないのです」

「ジョンマンさんはすごいって褒めていたわ! ジョンマンさんは人を見る目が確かだから、貴方は本当に凄いはずよ!」

「それは、ありがたいですが……これから演武を行う方の方が上なのですよ」

「そっか……それなら! もっと練習して、次は披露する側になろうね!」

「はい」


 ものすごく失礼なようで、しかし突っ込みにくい会話であった。

 ライトラの大人の対応が輝いている一方で、リーンのコミュ力が無駄に光っていた。

 ここでそれを発揮しないでいただきたいと、護衛たちも願っていた。


(自国の王女に演武なんてやらせられるわけねえだろ!)


(とか思ってそうですね、申し訳ない)


 そして、演武が始まった。

 精悍な顔立ちの男子生徒二名が、華美な舞台衣装で両側から現れる。

 一礼と共に、大きな歓声と拍手が上がった。


 よく見ると女性が多い。それも生徒ではなく、その親やさらに上の世代までいる。

 もしや『そういうイベント』なのかもと思ったが、いざ演武が始まるとそのような空気は消えた。


 音楽が流れると、二人は剣を抜きながら踊り始めた。

 その動きはまさに洗練された舞台の踊りであり、彼らが全力で体を作ってきたことがうかがえる。


 彼らの複雑でよどみのないダンス、ステップによって魔法が構築されていく。

 二人の周囲には魔法の弾が構築され、いくつもの弾丸が空中で浮遊している。


 音楽が変わると同時に、二人の剣が交わった。

 浮遊していた魔法の弾も一瞬遅れて発射され、まったく中間で相殺し合う。


 二人は剣を交えながらもステップを踏み、さらに魔法を生み出しては発射する。

 自分の剣で魔法を振り払う、あるいは相手の剣を魔法で受け止める。


 武芸舞踊の使い手であるザンクからすれば、尊敬してしまうほどの完成度であった。


「すごいねえ……メモできないよぉ」

「本当です。これは故郷でも、どう説明していいのかわかりません」


 狭い舞台をいっぱいに使って、二人の演武は続く。

 時に舞台の小道具や大道具を使い、飛び跳ね、自ら滞空し、剣戟を演じる。

 危険に見えるそれは、互いを傷つけず、しかも客にも被害が及ばない。

 時に客席の方へ魔法が飛ぶこともあるが、その真上で花火のように散るだけだ。


「すごいわ! オリョオさんもそう思うでしょ!?」

「え、ええ……すごい、すごいのですが……?」


 リーンは同意を求めたが、オリョオは返事をしかねていた。

 彼女はこの演武にケチをつけたいのではない。

 むしろ逆だ。


「この若さでこの完成度……高すぎるのでは?」


 彼女とて武術家である。演武を馬鹿にしているわけではない。

 飛び道具を交えて舞う二人の努力、華美な服装に隠された泥臭い日々を笑う気は無い。


 だが、彼女にはわからない。

 いくら心血を注ぐとしても、演武にこだわりすぎではないか?


 実戦の練習を削って演武に時間をそそがなければ、ここまでの完成度になると思えないのだ。


「慧眼ですね。デュエル流戦闘魔法の源流は、殺陣(たて)。舞台でつかう魔法を用いた『戦闘の演技』が発展したものなのです。そして彼らは、デュエル流戦闘魔法を殺陣として学んでいるのですよ」


 ーーー魔法がこの世に存在し、それが比較的容易に習得できるようになった時代。

 それは一般大衆が魔法を扱うということであり、演劇などにも使用されるようになったということ。

 照明やスモークなどの演出にも使われるが、演者自らが魔法を使って殺陣に派手な演出を混ぜることもあった。


 一旦その流れが生じると、演者たちのレベルは上がっていく。

 より安全で、より派手で、より舞台を意識した殺陣用の魔法が発展していった。


 彼らは有名になり、誰もが憧れる職業になる。

 元々演者であるのだからなおさらだ。

 

 こうなると演者側もプライドというものが生まれる。それは悪いことではない。

 悪いのは外野であった。


 あいつらは弱い。ただの八百長だ。

 

 もちろん聞き流していい戯言であった。

 バレエだとかアイススケートの選手が弱いといわれて怒るようなものだ。


 だが一部の演者はそれに対して張り合った。

 そんなに言うのなら実際に戦ってみようということで、在野の使い手と戦ったのである。


 結果……結構強かった、という証明がされた。


 舞台の上で動きながら、舞踏や歌によって魔法を展開する。

 剣や拳すらも扱い、とっさのアドリブやアクシデントにも対応する。


 それらはくしくも、一対一で、屋外で戦うことにも応用が効いていた。

 かくて、デュエル流戦闘魔法が確立されたのである。


「彼らは最初から役者希望。もともと戦う気がないのです。とはいえ……戦っても強いですよ?」

「それは、わかります」

「ええ、彼らは強い。最初から戦闘をするつもりで鍛えている者は、もっと強い。私は後者であり……それなりには自負もあります。とはいえ、後者側がマイナーであることも事実ですがね」


 少しだけ、周囲に聞こえないように、彼女は自嘲していた。


「え、なんで?」


 コエモはつい聞いてしまう。

 見ているだけで楽しい魔法であり、これが強いというのなら習いたがる生徒が多くなるのは自然に思えた。


「使いどころがないからです」


 ライトラはばっさり切り捨てた。


「フレーム流は不意打ちへの対処、あるいは逆に不意打ちをするために編纂されています。タワー流は逆に、完全に準備をしあっての戦いを想定しています。その点においてデュエル流は……成り立ちからして『想定している実戦』がないのです」


 デュエル流は確かに強くてかっこいい。

 演技だけではなく、実戦でも使える。

 だが『それは魔法以外を含めた他の流派と比較して、どう優位性があるのですか』と聞かれると答えにくい。


 セールスポイント、アピールポイントがないのだ。


「それでも私は好きなんですよ。気持ち、わかってくれませんか?」

「わかります! 私もそのために、ジョンマンさんのもとで修業をしていますから!」


 偽りのない、赤裸々な想い。これにはオリョオも熱く答えた。

 実戦性に欠くと言われても、勝ち方や戦い方、流儀にこだわりたい。

 好きだから、好きな方法で強くなりたい。そう思う気持ちは悪くなかった。


「好きなものを好きって言って、頑張ってるのはすごい素敵だと思うわ! がんばってね! 来年はあそこに立ってね!」

「ハイ、ストップ、ストップ! 他のお客さんのご迷惑だからね!」


 リーンの応援もジョンマンは慌てて止める。

 彼女の声は、本当に大きくなっていた。

 これでは演者も観客にも迷惑である。



(そう、私はデュエル流が好きで、練習していて、強い。でも……盛り上げられるほどの才能は……ない)



 そこで打ち切られたからこそ、彼女の内心の吐露が始まることはなかった。

本日コミカライズが更新されました。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
プロレスラーは本当は強いんだ!……みたいな話だな。 いや、そりゃあ、あの体格で弱いはずはないんだが。
武芸舞踊と相性良さそう
方向性としては武芸舞踊とは似て非なるものって感じか。 殺陣の様なお約束に巻き込むのではなく、殺陣の技術が戦闘にも応用できたと。
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