三つの呪い 第二話
リーダー、カリータ。
経験豊富な大ベテラン、リツモ。
大柄な戦士、ノフカー。
天才少女剣士■■■■■■から『大事なもの』を奪った三人は、冒険者パーティーとして仕事をしています。
今日の仕事は、山賊退治でした。
女冒険者たちは、本当に三人だけで山賊のいる山に踏み込みます。
いくら武装しているとはいえ、女が三人。
山賊たちはしめしめと囲みます。
「へっへっへ、いい武器持ってるじゃねえか。高く売れそうだぜ」
「身ぐるみおいていきな、そうすりゃ命は助けてやる」
大勢の山賊は、三人の女冒険者に持っている武器を置いていけと言います。
それに対して三人は、むしろ武器を抜いて応じました。
「二人とも、片づけましょう」
「おうよ、任せときな!」
「オレ一人でも十分なぐらいだぜ!」
向かってくる三人に山賊たちは驚きます。
てっきり降参すると思っていたので、油断していたのです。
「くそ、バカな奴らだ」
「やっちまえ」
多勢に無勢。
勝つのは自分達だとおもって、山賊たちも戦います。
「よい、よい、よいっと!」
「なんだこいつ!? 凄い見切ってくるぜ!」
「若いのに、なんて老獪な動きをしやがるんだ!」
若さを奪ったリツモは、培った経験と若い反射神経で、完璧な見切りを披露します。
悪い山賊を、あっさりと倒していきました。
「おおおお! ふっ、はあああああ!」
「ぎゃあああ! なんだこの女、デカい剣を軽々と!」
「ただぶん回しているだけじゃねえぞ!! すげえ繊細に大剣を操ってやがる!」
才能を奪ったノフカーは、元々の体格に繊細な剣技が加わって、大きな剣を自由自在に振り回します。
山賊たちを、ばったばったと倒していきました。
「なんだこいつら、すげえ強いぞ!!」
「凄腕の女冒険者……まさか、こいつらは!」
「あのカリータ率いる、冒険者パーティだ~~~!」
山賊たちは途中で、誰を襲っているのか気付きました。
名声を奪ったリーダー、カリータ。
彼女に気付いたことで、山賊たちは武器を捨てました。
「お許しください! カリータ様だとは知らなかったのです!」
「降参しますから、どうかお助けを!」
「ふふふ、まあいいでしょう。全員捕まえて、領主に引き渡します」
自分を恐れて降参する山賊たちに、カリータはご満悦でした。
このあと領主に山賊たちを突き出して、たくさんの報酬をもらったのでした。
※
彼女たち三人は、ほくほく顔で酒場に入ります。
たくさんの報酬で、美味しいお酒や料理を楽しむつもりでした。
彼女たちが酒場に入ると、誰もが注目します。
「ああ! アレがこの島一番ではないかと目される、カリータ率いる冒険者パーティーだ!」
「ノフカー様とリツモ様も一緒よ! 感動したわ!」
「かっこいい~~! 俺もああなりたいぜ!」
みんなに注目されながら、三人は席に着きます。
とても楽しそうに、自分を褒めていました。
「ははは! やはりリーダーはこうでないとな! アイツめ、ずっとこんなおいしい思いをしていたのか!」
「名声をありがたがるなんて、リーダーは変わっているねえ。やっぱり若さだよ、若さ」
「どっちもくだらないな、才能よりありがたいものはない!」
三人は笑いながら、■■■■■■を思い出しました。
散々手を焼かされた彼女が、今どんな風になっているのかを考えると、ついつい笑ってしまいます。
「あのガキ。目立つってだけで報酬に色を付けてもらっていたね。そのクセ、『これ経費ね』って言って、高い武器を買いやがる。おかげで私たちの武器が手入れできないこともあったな」
「ことあるごとに『お年寄りは大事にしないとね!』だの『へえ、その年の割にやるじゃん』だの『ええ、私の何倍も生きているのにこの程度のこともできないの?』だの……!!」
「私を勝手に盾にするわ、雑魚の掃討に入ったら『面倒だからやっといて』とかいって、勝手に帰るやつだったな」
三人は口を揃えて、文句を言いました。
「いい気味だ」
■■■■■■は今頃、どうしているでしょうか。
もう死んでいるかもしれませんし、弱った体のまま怯えて泣いているかもしれません。
もしかしたら、ケガや病気に苦しんでいるかも。
彼女が嫌な眼にあっていると思うだけで、三人は上機嫌でした。
「アイツにはさんざん迷惑を掛けられたんだ、名声を利用して何が悪い」
「散々バカにされて、イライラしていたんだ。殺されなかっただけ、ありがたいと思って欲しいね!」
「奴にはいい薬だろう! これも躾という奴だな!」
三人は調子に乗って、未来について語り合います。
「私の名声は、とどまるところを知らないな! これなら、お国からスカウトされるかもしれないな!」
「アタシは、このあと男と会う予定があるんだよ! 奪った若さを、有効活用して、人生をやり直すってのもアリだね!」
「オレはこのまま、剣を極めてやるつもりさ!」
奪った才能をフル活用して、もっともっと素晴らしい体験をしたいと語り合っています。
よほど余裕があるのか、『ちょっと困ったこと』を楽し気に愚痴るほどでした。
「それにしても、名声がありすぎるってのも考え物だ。行く先々でサインをねだられているよ。いつでもどこでも、他人に見られている気分だ」
「アタシも若い男と会っているからか、どんどん若返っている気がするね!」
「オレも手に剣がなじみすぎて、気付けば剣を腰に差している。手放せなくなっているみたいだ!」
呪いが進行していることに、三人はまだまだ気付いていませんでした。
名声を奪ったカリータは、どこにいても注目されてしまいます。
若さを奪ったリツモは、どんどん若返っていきます。
剣の才能を奪ったノフカーは、剣を手放せなくなっていきます。
そしてこれが限界というわけではなく……。
奪ったものを使うたびに、悪化していくのでした。




