時代を変える力
ティーム家の当主アラーミ・ティームが言っていたように……。
結局のところ、今現在暴れている者など、さほど脅威ではない。
優れた防具を配られようが、優れたスキルを習おうが……。
それこそ、対応できないほどの強さではない。
ヂュースがそうであったように、それなりに強い冒険者、騎士、戦士なら普通に勝てるレベルであろう。
本当に脅威となる……ラックシップと同等の存在に化けうるのは、今暴れていない者達だ。
ジョンマンの元で三人の乙女が研鑽を積んでいるように、ラックシップの元でも鍛錬を積み続けている者達がいる。
彼らは五つのスキルを習得し、ジョンマンですら手こずる存在に至るのだろう。
もちろん、本人のやる気次第ではあるのだが。
※
ラックシップの拠点にて……。
既に悪党の巣窟となっている、大きな町。
その中でひときわ大きな建物こそ、ラックシップの新居である。
彼がその新居でどう過ごしているかと言うと、基本的に弟子の面倒を見ていた。
彼の弟子には、二通りがある。
一つのスキルを上辺だけ教わって帰るパターンと、徹底して覚えるパターンである。
彼が可愛がっているのは、もちろん後者のパターンだ。
彼は無理強いはせず、どちらにも指導を行っているが……。
やはり全部覚えよう、というものに対してのほうが、表情は柔らかい。
今も彼は、10人ほどの弟子たちへ指導をしている。
奇妙なことに、全員が子供だった。
男児もいれば、女児もいる。もちろんもうすぐ大人という年齢の子供もいるが、やはり成人はいなかった。
その修行がどんなものかと言えば、ヨガに近いものである。
柔軟体操であったり、大きく息を吸ってから水中に入っていたりと、なかなか上級者向けに見えた。
うっすらぼんやりと目を光らせているラックシップは、その10人にしっかりとやる気があることを把握している。
「高いモチベーションを持っているのなら、第四スキル『竜宮の秘法』から覚えたほうがいい。年齢が若いなら、なおのことだ」
彼自身は茶を飲みながらゆっくりしており、表情はとてもリラックスしている。
「第四スキルをある程度習得すれば、疲労回復が早くなるし、消化吸収機能も上がる。つまりよりハードな修行に耐えられる体が作れるわけだな」
「そ、それじゃあ……なんで第四スキルって呼ばれてるんですか?」
「順番なんてどうでもいいからだろ」
弟子の少年からの質問に、ラックシップは適当に答えた。
「聞いた話じゃあ、ジョンマンの奴は第一スキルから順に教えているらしいが……それはそれで意義がある。一番強いスキルだからな、それを覚えておけばまず負けん。そこから第二、第三、第四と覚えて行っても、結果は同じだ」
「では……その、第二スキル、第三スキル、第五スキルから覚えてもいいんですか?」
「ん~~、まあな」
ラックシップは、すこし濁した返事をする。
「第三スキル『浄玻璃眼』から習得した場合、見取りが上手くなる。これはデカい」
「見取り?」
「そうだな……ちっちゃい子がよ、ダンスのマネをするだろ? そういう時って、ものすごく大雑把にしか真似られないだろ?」
「まあ……そうですね」
「ちゃんと観察できる、動きを理解できるってのは、習得速度を大幅に上げるんだよ。俺もお前達には、第四を覚えた後に第三を教えるつもりだ」
師匠が何をやっているのか、しっかり観察できること。
それができるかできないかで、真似のレベルは大きく変わる。
筋トレで最も大事な、正しいフォームを覚えやすくもあるのだ。
「第二スキル『圧縮多重行動』から習得すると、モチベーションが上がる」
「……は?」
「いやそれがな、第二スキルってスゲーはスゲーんだけど、単品だと死ぬほど使い勝手が悪いんだよ!」
ゲラゲラと下品に笑う、ラックシップ。
それは盗賊団というよりも、ただの中年男性であった。
「第一スキル……というか、筋トレが不十分だと、身体能力が足りない。第三スキルが無いと、行動にはいるタイミングが合わない。第四スキルが無いと、すぐにばてる。な、戦闘スキルとして見ると、微妙だろう?」
第二スキル『圧縮多重行動』は、純粋な戦闘用スキルではある。
もちろん第三や第四よりは強い。だが単品では、第一ほどの圧倒的な強さは得られない。
それなのに、習得難易度は最高峰なのである。
「だからな、第二スキルを覚えたばっかりの奴って、思ったほど強くないからいつもイライラしてるんだよ。元を取ろうと思って、他のスキルを必死に覚えようとするわけだな」
「は、はあ……」
「第二スキルから憶えていると、他のスキルの有用性がよくわかるってことだな」
それは順番をミスっているのではあるまいか、と思う少年たちであった。
「ただまあ、最終的には全部覚えるわけだ。そうすれば才能が無くても、俺並には強くなれる」
「……あの、ラックシップ様は、とても強いと思うんですが……もっと強い人ってなんなんですか?」
「わかりやすいぜ? 基本となる五つのスキルがスゲーとか、第六、第七スキルと憶えている奴らだ。そういうのが最高幹部になったり、アリババ40人隊の一軍になるわけだな」
ちなみにだが、クラーノは一軍ないし最高幹部になり得る才能の持ち主である。
浄玻璃眼をホームズレベルにまで強化することもできるし、第三スキルを最初から習得している分、第六、第七と別のスキルを習得することもできる。
世界最高レベルを目指すのなら、どうしても才能は必要になるわけであり……。
そこを目指さないのなら、凡人でも努力次第で道を開けるのである。
「……あの、返事を濁されましたけど、第五スキルから最初に習った場合はどうなるんですか?」
「ん……あ、あ……アレね」
「私たちの前でも、第五スキルだけは使ってくださいませんでしたが……」
「それはな、まあ、あれだ……第五スキルはな、絶対に最後なんだよ」
困った顔のラックシップは、先延ばしにすることとした。
「お前たちが全部覚えたら、その時に見せてやる」
「……はい」
まだヒトを疑うことを知らぬ少年少女たちは、ラックシップという絶対的な庇護者に従っていた。
なお、本人は割と焦っていた。
(見せてくれって言われるのが、一番困るからな……)
そうしてため息をついた時である。
彼の耳に外からの喧騒が届いていた。
「……なんだ、客か」
どん、どん、ずどどん。
なかなか大きな音が、ラックシップの家へ近づいてくる。
少年少女たちはおどおどするが、ラックシップの傍が一番安全だとわかっているので、逃げようとはしなかった。
「た、大変です、ラックシップ様! なんか、偉い強い奴が、ラックシップを出せって暴れていて!」
「へ~」
「いや、助けてくださいよ~~!」
「なんでだよ」
「そんな~~!」
ラックシップは、部下から上納金を受け取っていない。
自分で盗んだ金、あるいは『これを払うんで襲わないでください』と言って渡された有力者たちからの金で生活している。
なので部下が死んでも、まったく困らない。なんなら、部下だとすら思っていないかもしれない。
その彼からすれば、自分の拠点にすら思い入れもないのだろう。
そうしていると、ラックシップの家の壁が破壊された。
なんとも堂々たる侵入を果たしたのは、全身甲冑の武者である。
顔さえも鬼のお面で隠している、肌も体型すらもわからないほどの重武装。
その相手の登場で、ラックシップは少し表情を変えた。
「へえ、強いな」
ジョンマンもラックシップも、わりと平気で『強い』という言葉を使う。
良くも悪くも、自分を比較対象にしない。
ヂュースだろうと、ハウランドであろうと、アラーミであろうと、クラーノであろうと、ティガーザであろうと……。
自分よりずっと弱かったとしても、一応強いと評価する。
無理に基準を設けるのならば、ラックシップの部下のように、ダイヤモンドレオの防具を着ているだけの男達……を倒せるかどうか、であろうか。
そこから上は、全員強い、である。
そのため、ラックシップの弟子である子供たちも、どう判断していいのかわからなかった。
「貴様……確かにラックシップだな」
「おっ、俺に用事かい」
「そうだ……お前を追って、ここまできた」
「へえ?」
『……お前にも、お前にも! いつか必ず、報いが訪れるわ!』
ラックシップは、セサミ盗賊団の残党である。
それはそのまま、多くの恨みを買っているということ。
実力者に命を狙われても、全く不思議ではない。
だからこそ、彼は平然としていた。
「8年前……お前に滅ぼされた、ヤマッツという島の生き残りだ」
「……?」
だがしかし、まるで覚えがない、と首を捻ってもいた。
「悪い、全然覚えてない」
相手の言葉を信じるのなら、8年も自分を追いかけてきた者に対して、覚えてないと言っていることになる。
それはもう、侮辱も甚だしかった。
「ただまあ、8年前だろう? セサミ盗賊団が壊滅して、日が浅かった時期だな。俺がまだ、セサミ盗賊団を再興しようと、部下集めに奔走していた時期だな」
「ああ、そうだ……」
現在でこそ燃え尽きているラックシップだが、セサミ盗賊団が壊滅して早々に、今の精神性に至ったわけではない。
8年前ならば、まだまだ暴れていた時期だったのだろう。
「お前は……ヤマッツ島に踏み込み……私の父や兄たちへ『セサミ盗賊団へ入れ』と強要した……。父や兄、それから他の島民たちも抵抗したが、お前は……お前は、抵抗した者を全員殺した!」
「そうだな、そういうことも割とよくやったよ。実力者がいると聞いたら、そこに行って強引に勧誘したもんだ」
8年前ならば、今のラックシップよりも強かったかもしれない。
その彼が暴れていたのなら、抵抗することはできなかっただろう。
「しかし……まあ、なんだな」
怒りを押し殺しながら話している鎧武者、それを前にしてラックシップは……。
「あはははは!」
肚を抱えて、笑いだした。
「いやあ……はははは! 勘違いするなよ、お前がおかしいんじゃない。自分がおかしいんだ! ははははは!」
「何が、そんなに愉快なのだ」
「だって、ほら、あれだぜ……盗賊団だぜ?」
彼は、自嘲していた。
苦笑を通り越して、大爆笑していた。
「盗賊団を再興するとか、何を考えてたんだろうなあ! 当時の俺は!」
そしてその笑いは、たしかにもっともだった。
「どっかの国のお姫様が『滅びた我が国を再興します』とか言っているのならともかく……盗賊団を復興とか……何様だよ!」
復讐に来た鎧武者をして、止めるに止められない笑いであった。
たしかに滑稽極まりない行いである。
「それに巻き込まれたお兄ちゃんは、たしかに不幸だな。で、俺を殺すか? ここでやるか?」
「……いや、場所を変えよう」
鎧武者は、わずかに顔を動かした。
ラックシップの傍にいる、子供たちを見た様子である。
「ここでやりたくはない」
「ほう……ここに来るまで俺の部下をずいぶん殺したくせに、子供は殺したくないと」
「悪いか?」
「いや、いいんじゃないのか」
ラックシップは起き上がると、子供達にかるく指示をした。
「続けてろ、すぐ戻ってくる」
そういって、鎧武者と共に拠点を出て行くラックシップ。
彼の背を見て、少年少女たちは、不安を隠せないのであった。
※
ラックシップの拠点から離れた、ひらけた土地。
そこに鎧武者と、ラックシップが向き合っていた。
「ずいぶんと……敬意のある振る舞いをしてくれるもんだな」
「敬意?」
「敬意が無いなら、あの場で切りかかるだろ」
真面目な様子の鎧武者に対して、ラックシップは親し気に話しかける。
彼の言葉には、それなりの根拠があった。
「寝込みも襲わねえ、毒も交ぜねえ、俺の部下になって隙を探る……それもせず正面から殴り込みってのは、敬意があるんじゃないか?」
「……そうだな、敬意はあるだろう」
復讐の対象に対して、ある程度とはいえ敬いを認めた。
それは屈辱的ではあったが、自分の中の気持ちを偽れなかったのだろう。
「8年前のお前も……父や兄たちを、一人で正面から倒した。そのお前には、それなりの敬意を持っている」
鎧武者はここで、すうっと、手を挙げた。
それは明らかに、合図であった。
「これも、敬意の内だ」
「へえ、これが敬意ねえ? 俺にふさわしい敬意だな」
その鎧武者の合図によって、同じく重武装の、面をつけた鎧武者たちが現れる。
彼らはそれぞれに刀や槍、斧などをもってラックシップを包囲していた。
「私たちはあれから強くなった……父や兄たちを、超えたとも思っている。だが……父や兄たちを、一人で皆殺しにできる自信はない」
「で、数で叩くと。正しい戦術だな」
場所を移動したことも、純粋なる敬意ではなかった。
仲間をあらかじめ待機させていた場所に誘導し、全員で叩くハラだったのだ。
包囲し、一斉に叩く。
極めて単純で適切な、本気の兵法であろう。
「ラグナ……ラグナ・ロロロ・ラグナ、ワルハラ……ヴォーダーン! アルフー・ライラー……ワー・ライラー! グリムグリム・イーソープ・ルルルセン! コキン・ココン・コンジャク・コライ!」
その本気に応えるべく、ラックシップもまた本気を出す。
四つのスキルを同時発動させ、攻撃に備える。
「そうだ……それでいい!」
その本気に、鎧武者たちは歓喜した。
その歓喜のままに、四方から一斉に襲い掛かってくる。
「かぁっ!」
圧倒的な速度で接近してくる、四方から襲い来る敵。
ラックシップの浄玻璃眼は、それをしっかりと視認していた。
そして、それ以上の物さえも。
「これは……そうか、そういう……!」
ラックシップは、全力で回避した。
三回の行動をすべて移動で消費し、包囲を抜けて大いに避けた。
そして改めて、自分の立っていた場所を見る。
「……攻撃範囲が肥大化するスキル、『玉散る氷の刃』だな」
相手の武器は、刀や槍、斧だった。
にも拘わらず、攻撃の範囲が異様に広い。
攻撃範囲を肥大化させるスキルによるものだと、ラックシップは看破していた。
「その通りだが……なぜ迎撃しなかった? その不可思議な移動術なら、カウンターを入れることもできただろう」
「ほざけよ……『倒れざるスパルタン』を使っていることも、俺にはわかる」
「ずいぶんと詳しいな……だが、お前が強くて安心した」
ラックシップが見抜いたスキルは、『倒れざるスパルタン』。
相手の攻撃を受けても吹き飛ぶことはなく、ひるむこともない。
ダメージは負うが、攻撃を妨害されることもない。
必殺不倒を誓ったものが扱うスキルと言えるだろう。
「老いて衰えて、弱くなったお前に勝っても意味がない……今の攻撃をあっさりと避けたお前に勝ってこそ、意味がある!」
「我らの島に伝わるスキル『雷神甲冑』に、異国の地で得た『倒れざるスパルタン』と『玉散る氷の刃』が合わされば、お前と言えども避けきれるものではない!」
「このまま押し込み、切り伏せる!」
速度に偏重した鎧に加えて、妨害無効や攻撃範囲増大。それらを修めたものが、6人がかりで襲い掛かる。
なるほど、ラックシップをして、格闘戦で倒しきれるものではない。
「……体力切れになるまで避けきるってのも、そこまで現実的じゃないな。時間差で来られても面倒だ」
攻撃の軌道やタイミングが分かろうが、複数回行動できようが、回避し続けるなど不可能だろう。
被弾し続ければ、そのまま負けてしまうだろう。
「……いいだろう、全力で相手をしてやる」
ありふれている言葉と共に、殺気が放たれた。
それに対して、6人の鎧武者たちは硬直する。
「……奥の手を出すというわけか。我らが父や兄と戦ったときには、出すまでもなかった切り札を、我らに切ると」
「覚悟の上だ。何をされたとしても、切り伏せて見せる!」
「そのための8年だった……!」
だがそれは、決して悲しいことではない。
8年追った怨敵が、以前と変わらぬ強さを持っていて嬉しい。
8年前の父や兄を、自分達が超えているとわかって嬉しい。
「おおおおおおおお!」
怒号と共に、6人の鎧武者が駆けた。
それはやはり、ラックシップでも回避しきれぬ、広範囲、高威力攻撃だった。
それを前に、ラックシップは呪文を詠唱する。
「ロング……ロング……アゴー……」
それと同時に、時間が急激に圧縮される。
6人の武者は、高密度の時間の中で、困惑さえ覚えていた。
(どういうことだ……今までと違って、思考する余裕まであるぞ?!)
(なにが起きている……どういう技だ)
「オルドビス……」
禁呪系最強スキル『星命の維新』。それは本来、一人で打つ技ではない。
さまざまな理由で、一人での使用が無理だからである。
「デボン……」
まず第一に、反動がある。
すさまじい威力を誇るがゆえに、術者自身にも反動が生じる。
第二に、発動までの時間がかかる。
実に数分間は必要とし、護衛がいなければ使用まで至らない。
第三に、軌道の予測が難しい。
広範囲長射程ではあるが、非常に大雑把である。
味方によって追い込んでもらったり拘束してもらわねば、攻撃を当てることも難しい。
第四に、体力の消費が膨大である。
それこそ、人間一人の体力では到底足りない。
術者以外にも、生贄ともいうべき追加タンクとなる仲間が必要となる。
「ペルム……」
それらの弱点を、他のスキルで補う必要がある。
第一スキル『エインヘリヤルの鎧』で、反動から自分の身を守る。
第二スキル『圧縮多重行動』で、チャージ時間を一回分の行動として処理。
第三スキル『浄玻璃眼』で、自分の攻撃軌道を確認し、敵の位置に合わせる。
第四スキル『竜宮の秘法』で、数人分の体力を自分一人で用意する。
「サンジョウ……」
ゆえに第五スキルは、最後に習得しなければならない。
であると同時に、四つのスキルを習得してでも、覚える価値が第五スキルにはある。
多大な制約、欠点や反動を持つ禁呪系スキルの中でも最強の威力を誇るそれは……。
自らと契約をした絶滅モンスターを降し、力をささげることで顕現させる。
「ハクア……! こい! ブラッククラウドン!」
ラックシップの背後に、暗雲が生まれた。
あるいは、黒いオーロラか。
否、巨大な黒いクラゲであった。
遠い昔絶滅した、最強のクラゲ。深海から天空まで、雷で貫くとされた巨大モンスター。
その姿はまるで、巨大戦艦の砲口。
「第五スキル……『星命の維新』!」
収束して放てば、最深のダンジョンに巣食う世界最強格のモンスターにさえ致命傷を与える。
拡散させて放てば、地上環境を激変させ周辺の生命を絶滅させる。
「黒船! 雷光!」
放たれてしまえば、エインヘリヤルの鎧でさえ障子紙。
同等の威力を持つ同スキルで相殺する以外に、生存する可能性はない。
(な……)
(……そんな)
その軌道上にいた6人の武者たちは、自分達の想像をはるかに超える……自分たちが暴いてしまった怪物の本気に、一瞬で飲み込まれて消えていった。
だがそれだけでは終わらない。
一旦上空へ飛んでいった雷光は、弧を描いて大地へ降り注ぐ。
もしも着弾すれば、このドザー王国が滅ぶことは確実であった。