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時代を変える力

 ティーム家の当主アラーミ・ティームが言っていたように……。

 結局のところ、今現在暴れている者など、さほど脅威ではない。


 優れた防具を配られようが、優れたスキルを習おうが……。

 それこそ、対応できないほどの強さではない。

 ヂュースがそうであったように、それなりに強い冒険者、騎士、戦士なら普通に勝てるレベルであろう。


 本当に脅威となる……ラックシップと同等の存在に化けうるのは、今暴れていない者達だ。

 ジョンマンの元で三人の乙女が研鑽を積んでいるように、ラックシップの元でも鍛錬を積み続けている者達がいる。


 彼らは五つのスキルを習得し、ジョンマンですら手こずる存在に至るのだろう。

 もちろん、本人のやる気次第ではあるのだが。



 ラックシップの拠点にて……。

 既に悪党の巣窟となっている、大きな町。

 その中でひときわ大きな建物こそ、ラックシップの新居である。

 彼がその新居でどう過ごしているかと言うと、基本的に弟子の面倒を見ていた。


 彼の弟子には、二通りがある。

 一つのスキルを上辺だけ教わって帰るパターンと、徹底して覚えるパターンである。

 彼が可愛がっているのは、もちろん後者のパターンだ。

 

 彼は無理強いはせず、どちらにも指導を行っているが……。

 やはり全部覚えよう、というものに対してのほうが、表情は柔らかい。


 今も彼は、10人ほどの弟子たちへ指導をしている。

 奇妙なことに、全員が子供だった。

 男児もいれば、女児もいる。もちろんもうすぐ大人という年齢の子供もいるが、やはり成人はいなかった。


 その修行がどんなものかと言えば、ヨガに近いものである。

 柔軟体操であったり、大きく息を吸ってから水中に入っていたりと、なかなか上級者向けに見えた。

 うっすらぼんやりと目を光らせているラックシップは、その10人にしっかりとやる気があることを把握している。


「高いモチベーションを持っているのなら、第四スキル『竜宮の秘法』から覚えたほうがいい。年齢が若いなら、なおのことだ」


 彼自身は茶を飲みながらゆっくりしており、表情はとてもリラックスしている。


「第四スキルをある程度習得すれば、疲労回復が早くなるし、消化吸収機能も上がる。つまりよりハードな修行に耐えられる体が作れるわけだな」

「そ、それじゃあ……なんで第四スキルって呼ばれてるんですか?」

「順番なんてどうでもいいからだろ」


 弟子の少年からの質問に、ラックシップは適当に答えた。


「聞いた話じゃあ、ジョンマンの奴は第一スキルから順に教えているらしいが……それはそれで意義がある。一番強いスキルだからな、それを覚えておけばまず負けん。そこから第二、第三、第四と覚えて行っても、結果は同じだ」

「では……その、第二スキル、第三スキル、第五スキルから覚えてもいいんですか?」

「ん~~、まあな」


 ラックシップは、すこし濁した返事をする。


「第三スキル『浄玻璃眼』から習得した場合、見取りが上手くなる。これはデカい」

「見取り?」

「そうだな……ちっちゃい子がよ、ダンスのマネをするだろ? そういう時って、ものすごく大雑把にしか真似られないだろ?」

「まあ……そうですね」

「ちゃんと観察できる、動きを理解できるってのは、習得速度を大幅に上げるんだよ。俺もお前達には、第四を覚えた後に第三を教えるつもりだ」

 

 師匠が何をやっているのか、しっかり観察できること。

 それができるかできないかで、真似のレベルは大きく変わる。

 筋トレで最も大事な、正しいフォームを覚えやすくもあるのだ。


「第二スキル『圧縮多重行動(トリックアクション)』から習得すると、モチベーションが上がる」

「……は?」

「いやそれがな、第二スキルってスゲーはスゲーんだけど、単品だと死ぬほど使い勝手が悪いんだよ!」


 ゲラゲラと下品に笑う、ラックシップ。

 それは盗賊団というよりも、ただの中年男性であった。


「第一スキル……というか、筋トレが不十分だと、身体能力が足りない。第三スキルが無いと、行動にはいるタイミングが合わない。第四スキルが無いと、すぐにばてる。な、戦闘スキルとして見ると、微妙だろう?」


 第二スキル『圧縮多重行動(トリックアクション)』は、純粋な戦闘用スキルではある。

 もちろん第三や第四よりは強い。だが単品では、第一ほどの圧倒的な強さは得られない。

 それなのに、習得難易度は最高峰なのである。


「だからな、第二スキルを覚えたばっかりの奴って、思ったほど強くないからいつもイライラしてるんだよ。元を取ろうと思って、他のスキルを必死に覚えようとするわけだな」

「は、はあ……」

「第二スキルから憶えていると、他のスキルの有用性がよくわかるってことだな」


 それは順番をミスっているのではあるまいか、と思う少年たちであった。


「ただまあ、最終的には全部覚えるわけだ。そうすれば才能が無くても、俺並には強くなれる」

「……あの、ラックシップ様は、とても強いと思うんですが……もっと強い人ってなんなんですか?」

「わかりやすいぜ? 基本となる五つのスキルがスゲーとか、第六、第七スキルと憶えている奴らだ。そういうのが最高幹部になったり、アリババ40人隊の一軍になるわけだな」


 ちなみにだが、クラーノは一軍ないし最高幹部になり得る才能の持ち主である。

 浄玻璃眼をホームズレベルにまで強化することもできるし、第三スキルを最初から習得している分、第六、第七と別のスキルを習得することもできる。

 世界最高レベルを目指すのなら、どうしても才能は必要になるわけであり……。

 そこを目指さないのなら、凡人でも努力次第で道を開けるのである。


「……あの、返事を濁されましたけど、第五スキルから最初に習った場合はどうなるんですか?」

「ん……あ、あ……アレね」

「私たちの前でも、第五スキルだけは使ってくださいませんでしたが……」

「それはな、まあ、あれだ……第五スキルはな、絶対に最後なんだよ」


 困った顔のラックシップは、先延ばしにすることとした。


「お前たちが全部覚えたら、その時に見せてやる」

「……はい」


 まだヒトを疑うことを知らぬ少年少女たちは、ラックシップという絶対的な庇護者に従っていた。

 なお、本人は割と焦っていた。


(見せてくれって言われるのが、一番困るからな……)


 そうしてため息をついた時である。

 彼の耳に外からの喧騒が届いていた。


「……なんだ、客か」


 どん、どん、ずどどん。

 なかなか大きな音が、ラックシップの家へ近づいてくる。

 少年少女たちはおどおどするが、ラックシップの傍が一番安全だとわかっているので、逃げようとはしなかった。


「た、大変です、ラックシップ様! なんか、偉い強い奴が、ラックシップを出せって暴れていて!」

「へ~」

「いや、助けてくださいよ~~!」

「なんでだよ」

「そんな~~!」


 ラックシップは、部下から上納金を受け取っていない。

 自分で盗んだ金、あるいは『これを払うんで襲わないでください』と言って渡された有力者たちからの金で生活している。

 なので部下が死んでも、まったく困らない。なんなら、部下だとすら思っていないかもしれない。

 その彼からすれば、自分の拠点にすら思い入れもないのだろう。


 そうしていると、ラックシップの家の壁が破壊された。

 なんとも堂々たる侵入を果たしたのは、全身甲冑の武者である。

 顔さえも鬼のお面で隠している、肌も体型すらもわからないほどの重武装。

 その相手の登場で、ラックシップは少し表情を変えた。


「へえ、強いな」


 ジョンマンもラックシップも、わりと平気で『強い』という言葉を使う。

 良くも悪くも、自分を比較対象にしない。

 ヂュースだろうと、ハウランドであろうと、アラーミであろうと、クラーノであろうと、ティガーザであろうと……。

 自分よりずっと弱かったとしても、一応強いと評価する。


 無理に基準を設けるのならば、ラックシップの部下のように、ダイヤモンドレオの防具を着ているだけの男達……を倒せるかどうか、であろうか。

 そこから上は、全員強い、である。


 そのため、ラックシップの弟子である子供たちも、どう判断していいのかわからなかった。


「貴様……確かにラックシップだな」

「おっ、俺に用事かい」

「そうだ……お前を追って、ここまできた」

「へえ?」


『……お前にも、お前にも! いつか必ず、報いが訪れるわ!』


 ラックシップは、セサミ盗賊団の残党である。

 それはそのまま、多くの恨みを買っているということ。

 実力者に命を狙われても、全く不思議ではない。

 だからこそ、彼は平然としていた。


「8年前……お前に滅ぼされた、ヤマッツという島の生き残りだ」

「……?」


 だがしかし、まるで覚えがない、と首を捻ってもいた。


「悪い、全然覚えてない」


 相手の言葉を信じるのなら、8年も自分を追いかけてきた者に対して、覚えてないと言っていることになる。

 それはもう、侮辱も甚だしかった。


「ただまあ、8年前だろう? セサミ盗賊団が壊滅して、日が浅かった時期だな。俺がまだ、セサミ盗賊団を再興しようと、部下集めに奔走していた時期だな」

「ああ、そうだ……」


 現在でこそ燃え尽きているラックシップだが、セサミ盗賊団が壊滅して早々に、今の精神性に至ったわけではない。

 8年前ならば、まだまだ暴れていた時期だったのだろう。


「お前は……ヤマッツ島に踏み込み……私の父や兄たちへ『セサミ盗賊団へ入れ』と強要した……。父や兄、それから他の島民たちも抵抗したが、お前は……お前は、抵抗した者を全員殺した!」

「そうだな、そういうことも割とよくやったよ。実力者がいると聞いたら、そこに行って強引に勧誘したもんだ」


 8年前ならば、今のラックシップよりも強かったかもしれない。

 その彼が暴れていたのなら、抵抗することはできなかっただろう。


「しかし……まあ、なんだな」


 怒りを押し殺しながら話している鎧武者、それを前にしてラックシップは……。


「あはははは!」


 肚を抱えて、笑いだした。


「いやあ……はははは! 勘違いするなよ、お前がおかしいんじゃない。自分がおかしいんだ! ははははは!」

「何が、そんなに愉快なのだ」

「だって、ほら、あれだぜ……盗賊団だぜ?」


 彼は、自嘲していた。

 苦笑を通り越して、大爆笑していた。


「盗賊団を再興するとか、何を考えてたんだろうなあ! 当時の俺は!」


 そしてその笑いは、たしかにもっともだった。


「どっかの国のお姫様が『滅びた我が国を再興します』とか言っているのならともかく……盗賊団を復興とか……何様だよ!」


 復讐に来た鎧武者をして、止めるに止められない笑いであった。

 たしかに滑稽極まりない行いである。


「それに巻き込まれたお兄ちゃんは、たしかに不幸だな。で、俺を殺すか? ここでやるか?」

「……いや、場所を変えよう」


 鎧武者は、わずかに顔を動かした。

 ラックシップの傍にいる、子供たちを見た様子である。


「ここでやりたくはない」

「ほう……ここに来るまで俺の部下をずいぶん殺したくせに、子供は殺したくないと」

「悪いか?」

「いや、いいんじゃないのか」


 ラックシップは起き上がると、子供達にかるく指示をした。


「続けてろ、すぐ戻ってくる」


 そういって、鎧武者と共に拠点を出て行くラックシップ。

 彼の背を見て、少年少女たちは、不安を隠せないのであった。



 ラックシップの拠点から離れた、ひらけた土地。

 そこに鎧武者と、ラックシップが向き合っていた。


「ずいぶんと……敬意のある振る舞いをしてくれるもんだな」

「敬意?」

「敬意が無いなら、あの場で切りかかるだろ」


 真面目な様子の鎧武者に対して、ラックシップは親し気に話しかける。

 彼の言葉には、それなりの根拠があった。


「寝込みも襲わねえ、毒も交ぜねえ、俺の部下になって隙を探る……それもせず正面から殴り込みってのは、敬意があるんじゃないか?」

「……そうだな、敬意はあるだろう」


 復讐の対象に対して、ある程度とはいえ敬いを認めた。

 それは屈辱的ではあったが、自分の中の気持ちを偽れなかったのだろう。


「8年前のお前も……父や兄たちを、一人で正面から倒した。そのお前には、それなりの敬意を持っている」


 鎧武者はここで、すうっと、手を挙げた。

 それは明らかに、合図であった。


「これも、敬意の内だ」

「へえ、これが敬意ねえ? 俺にふさわしい敬意だな」


 その鎧武者の合図によって、同じく重武装の、面をつけた鎧武者たちが現れる。

 彼らはそれぞれに刀や槍、斧などをもってラックシップを包囲していた。


「私たちはあれから強くなった……父や兄たちを、超えたとも思っている。だが……父や兄たちを、一人で皆殺しにできる自信はない」

「で、数で叩くと。正しい戦術だな」


 場所を移動したことも、純粋なる敬意ではなかった。

 仲間をあらかじめ待機させていた場所に誘導し、全員で叩くハラだったのだ。


 包囲し、一斉に叩く。

 極めて単純で適切な、本気の兵法であろう。


「ラグナ……ラグナ・ロロロ・ラグナ、ワルハラ……ヴォーダーン! アルフー・ライラー……ワー・ライラー! グリムグリム・イーソープ・ルルルセン! コキン・ココン・コンジャク・コライ!」


 その本気に応えるべく、ラックシップもまた本気を出す。

 四つのスキルを同時発動させ、攻撃に備える。


「そうだ……それでいい!」


 その本気に、鎧武者たちは歓喜した。

 その歓喜のままに、四方から一斉に襲い掛かってくる。


「かぁっ!」


 圧倒的な速度で接近してくる、四方から襲い来る敵。

 ラックシップの浄玻璃眼は、それをしっかりと視認していた。

 そして、それ以上の物さえも。


「これは……そうか、そういう……!」


 ラックシップは、全力で回避した。

 三回の行動をすべて移動で消費し、包囲を抜けて大いに避けた。


 そして改めて、自分の立っていた場所を見る。


「……攻撃範囲が肥大化するスキル、『玉散る氷の刃』だな」


 相手の武器は、刀や槍、斧だった。

 にも拘わらず、攻撃の範囲が異様に広い。

 攻撃範囲を肥大化させるスキルによるものだと、ラックシップは看破していた。


「その通りだが……なぜ迎撃しなかった? その不可思議な移動術なら、カウンターを入れることもできただろう」

「ほざけよ……『倒れざるスパルタン』を使っていることも、俺にはわかる」

「ずいぶんと詳しいな……だが、お前が強くて安心した」


 ラックシップが見抜いたスキルは、『倒れざるスパルタン』。

 相手の攻撃を受けても吹き飛ぶことはなく、ひるむこともない。

 ダメージは負うが、攻撃を妨害されることもない。

 必殺不倒を誓ったものが扱うスキルと言えるだろう。


「老いて衰えて、弱くなったお前に勝っても意味がない……今の攻撃をあっさりと避けたお前に勝ってこそ、意味がある!」

「我らの島に伝わるスキル『雷神甲冑』に、異国の地で得た『倒れざるスパルタン』と『玉散る氷の刃』が合わされば、お前と言えども避けきれるものではない!」

「このまま押し込み、切り伏せる!」


 速度に偏重した鎧に加えて、妨害無効や攻撃範囲増大。それらを修めたものが、6人がかりで襲い掛かる。

 なるほど、ラックシップをして、格闘戦で倒しきれるものではない。


「……体力切れになるまで避けきるってのも、そこまで現実的じゃないな。時間差で来られても面倒だ」


 攻撃の軌道やタイミングが分かろうが、複数回行動できようが、回避し続けるなど不可能だろう。

 被弾し続ければ、そのまま負けてしまうだろう。


「……いいだろう、全力で相手をしてやる」


 ありふれている言葉と共に、殺気が放たれた。

 それに対して、6人の鎧武者たちは硬直する。


「……奥の手を出すというわけか。我らが父や兄と戦ったときには、出すまでもなかった切り札を、我らに切ると」

「覚悟の上だ。何をされたとしても、切り伏せて見せる!」

「そのための8年だった……!」


 だがそれは、決して悲しいことではない。

 8年追った怨敵が、以前と変わらぬ強さを持っていて嬉しい。

 8年前の父や兄を、自分達が超えているとわかって嬉しい。


「おおおおおおおお!」


 怒号と共に、6人の鎧武者が駆けた。

 それはやはり、ラックシップでも回避しきれぬ、広範囲、高威力攻撃だった。


 それを前に、ラックシップは呪文を詠唱する。



「ロング……ロング……アゴー……」



 それと同時に、時間が急激に圧縮される。

 6人の武者は、高密度の時間の中で、困惑さえ覚えていた。


(どういうことだ……今までと違って、思考する余裕まであるぞ?!)

(なにが起きている……どういう技だ)


「オルドビス……」


 禁呪系最強スキル『星命の維新(ビッグファイブ)』。それは本来、一人で打つ技ではない。

 さまざまな理由で、一人での使用が無理だからである。


「デボン……」


 まず第一に、反動がある。

 すさまじい威力を誇るがゆえに、術者自身にも反動が生じる。


 第二に、発動までの時間がかかる。

 実に数分間は必要とし、護衛がいなければ使用まで至らない。


 第三に、軌道の予測が難しい。

 広範囲長射程ではあるが、非常に大雑把である。

 味方によって追い込んでもらったり拘束してもらわねば、攻撃を当てることも難しい。


 第四に、体力の消費が膨大である。

 それこそ、人間一人の体力では到底足りない。

 術者以外にも、生贄ともいうべき追加タンクとなる仲間が必要となる。


「ペルム……」


 それらの弱点を、他のスキルで補う必要がある。


 第一スキル『エインヘリヤルの鎧』で、反動から自分の身を守る。

 第二スキル『圧縮多重行動(トリックアクション)』で、チャージ時間を一回分(・・・)の行動として処理。

 第三スキル『浄玻璃眼』で、自分の攻撃軌道を確認し、敵の位置に合わせる。

 第四スキル『竜宮の秘法』で、数人分の体力を自分一人で用意する。


「サンジョウ……」


 ゆえに第五スキルは、最後に習得しなければならない。

 であると同時に、四つのスキルを習得してでも、覚える価値が第五スキルにはある。

 多大な制約、欠点や反動を持つ禁呪系スキルの中でも最強の威力を誇るそれは……。

 自らと契約をした絶滅モンスターを降し、力をささげることで顕現させる。


「ハクア……! こい! ブラッククラウドン!」


 ラックシップの背後に、暗雲が生まれた。

 あるいは、黒いオーロラか。

 否、巨大な黒いクラゲであった。


 遠い昔絶滅した、最強のクラゲ。深海から天空まで、雷で貫くとされた巨大モンスター。

 その姿はまるで、巨大戦艦の砲口。


「第五スキル……『星命の維新(ビッグファイブ)』!」


 収束して放てば、最深のダンジョンに巣食う世界最強格のモンスターにさえ致命傷を与える。

 拡散させて放てば、地上環境を激変させ周辺の生命を絶滅させる。



「黒船! 雷光!」



 放たれてしまえば、エインヘリヤルの鎧でさえ障子紙。

 同等の威力を持つ同スキルで相殺する以外に、生存する可能性はない。


(な……)

(……そんな)


 その軌道上にいた6人の武者たちは、自分達の想像をはるかに超える……自分たちが暴いてしまった怪物の本気に、一瞬で飲み込まれて消えていった。


 だがそれだけでは終わらない。

 一旦上空へ飛んでいった雷光は、弧を描いて大地へ降り注ぐ。



 もしも着弾すれば、このドザー王国が滅ぶことは確実であった。

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― 新着の感想 ―
スキルを4つ覚える順番でラックシップの弟子の方が効率良く学んでいる気がするけど、ジョンマンの様に第1スキルの為に食費に大金を使わないから結果的には5つ全て覚えるのは同じ位の時間が必要と思われます。結果…
[良い点] Q:スペックで上回る相手に打ち勝つには? A:もっと強い奴を呼び出して倒してもらう! なんてスマートな解答なんだ… 召喚される化物は誰でも同じなんだろうか?人によって違うのか?BIG5たる…
[良い点] ネーミングで笑いを取ろうとしてんのかと言わんばかりの数々のソレ。 [気になる点] この世界全体で命が軽いのか、描写されとる範囲で軽いだけなのか、どっちやろ。 [一言] お偉いさん方の胃袋が…
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