38:いつか何処かで断ち切るべきこと
「という訳で…頂きます!!」
「「「頂きます!!!」」」
俺が目の前のご馳走に手を合わせてそう言うと皆もそれに呼応する様にそう発する
しかし…本当に俺の好きな物ばっかりだな
先ずは直ぐそばにあるサンドイッチを口に入れる
ハムとレタスとマヨネーズが何とも絶妙は味わいとなっており非常に美味しい
口の中でシャキシャキというレタスの音って心地よくない?俺だけ?
思わず「美味しい!!!」と言ってしまった位には美味しかった
続いてお弁当の定番のウィンナーさんをパクリと口に運ぶ
個人的には粗挽きが好きだが、運動会ならではのタコさんウィンナーも良いね!
焼き加減はバッチリだがタコさんの足が不揃いだったのが麗さんらしかぬミスだが…まぁ朝からこの量のお弁当作って、俺の護衛までして貰ってるんだから感謝こそすれ他意は一切ない
次に唐揚げをガブッと口に入れる
美味~!!って言えるくらいに美味い!!
唐揚げって冷めても美味しいっていうのは…不思議だなぁ~??と思う
けれど衣部分が一寸だけ焦げてる
というか、いつもの麗さんの味付けとかと少し違うんだよな…熱とか出して味覚バグってるんだろうか?ちょっと心配になるなぁ
とは言うものの美味しい事には代わりが無いので麗さんにはちゃんと御礼を言う
「美味しい!!どれも美味しいよ!!麗お姉ちゃん、有難う!!」
「……夜人様、今回のお弁当は私が作った物ではありません。」
「え?」
我が家に麗さん以外にご飯を作れる人はいない
という事はデリバリーなのだろうか?
でもデリバリーにしてはお重に入っている事に違和感があるんだよなぁ…
そんな風に考えていると、母さんがメチャクチャ良い笑顔でニコニコしているのが目についた
「お母さん?」
「ん~?夜人きゅんはお弁当の味はどうだったのかな?どうだったのかな~?ママは知りたいなぁ~?」
マジか…
あの料理の『り』の字も記憶の間に置いてきたであろう母さんがこの料理を作ってくれたのか…
確かに母さんは自分が料理を出来なくなった事を気にしていた事は知っているし、練習していた事も知っていた
でも此処まで出来る様になったというのは予想外というよりは、ある意味で感動的だ
俺は重箱にある卵焼きをパクリと口に入れる
……うん
少しだけ焦げてる
でも何だろう…ホッとする味と言うか…これが母親の味というヤツなのだろうか…
「…お母さん有難う。本当に美味しいし、本当に嬉しいよ」
「そう…夜人きゅんに喜んでもらえて、ママも本当に嬉しいわ」
「うん…お母さん本当に有難う」
多分、今この瞬間こそが俺にとって本当の意味で前世と断ち切れた瞬間かもしれない
前世の家族に申し訳ない気持ちが無い訳じゃない
けれど…今の俺の家族はもう違うんだ
冷たいかもしれないけれど、前世の皆には幸せになって欲しいけれど…俺はもう、今世に目を向けよう
自然とそんな風に思えた瞬間だった
「夜人くん!!さっきの卵焼きは私が卵割って混ぜたんだよ!!」
「そうなんだ…月お姉ちゃんも有難う。美味しいよ」
月姉さんのアピールも微笑ましく感じる
その雰囲気が非常にほのぼのとしていてよりお弁当が美味しく感じられた瞬間だった




