33:第1走者…ファイッ!!!
『それではアスレチック競争、よーい…ドン!!』
ーーーパァーーンーーー
アナウンスに合わせてスタートのピストルがグランドに鳴り響く
白組の第1走者は当然、りんちゃんだ
「りんちゃん頑張れー!!!」
「ファイトー!!」
「が~んばれ~!!」
「ゆずちゃんファイト!!!」
「バンプーだー!!」
「……がんば」
白組紅組の応援席は勿論、俺達も精一杯声を張り上げる
でも…
「…速いね」
「…うん」
「あははははははははーーーーーーーーーーーーー!!!」
スタートダッシュを切ったりんちゃんはメチャクチャ速い
正直、声援とか要らないんじゃね?レベルに速い
まぁ当然そんな事はしないけれどね
りんちゃんは先ずトンネルをペンギンみたいに腹で滑ってるんじゃね?レベルに入ってからスポーンと出てきた
そしてその勢いを殺さずに竹馬に跨り、カーブ箇所もスピードが衰える事なく爆走していく
この時点で紅組のゆずちゃんはトンネルを出たばかり
りんちゃんの爆走により紅組とは圧倒的な差を生み出していた
「問題は次だね…」
「そうね…今日はどっちかしら…?」
「あは、はは、はははは…」
だが、問題なのはスプーン落とし
りんちゃんも俺と同じくこのスプーン落としが苦手だ
練習の日々で分かったが調子がいい時は殆ど落とさないが、調子が悪い時は俺並みに落とすのだ
今日の調子を見極めるべく、りんちゃんのピンポン玉に目を凝らしてみると…数歩進んだ瞬間、ピンポン玉がスプーンからポロッと零れ落ちた
「「「あぁぁぁーーーーーーー!!」」」
どうやら今日のりんちゃんは余り調子の良い日ではないらしい…
そんな彼女は急いでピンポン玉を拾い上げ「い~ち、に~、さ~ん」と数え終わると、ピンポン玉をスプーンに再度セットし進みだす
だが…「あぁぁぁーーーーーーー!!」とりんちゃんの叫び声がグラウンドに響き渡る
「りんちゃん、今日は調子悪いね…」
「でも1番悪い時と違って数歩進めている分だけまだマシよ」
「ゆずちゃんも~まだ後ろですからねぇ~」
メイちゃんに言われて紅組のゆずちゃんへ視線を向けると竹馬で丁度カーブを曲がろうという所だった
零がゆずちゃんを見て、俺の横で「バンプバンプ」言っているのがちょっと五月蠅い…
「りんちゃん半分過ぎたわ!!あとちょっとよ、頑張って!!」
「りんちゃ~ん頑張れ~」
「っ?!りんちゃんファイトー!!!」
どうやらりんちゃんは半分を超えたらしく、俺も一緒に声援を送る
紅組も白組も、何なら保護者の親御さんも皆が2人を応援し…
「メイちゃん!!」
「は~い」
タッチの差でりんちゃんがゆずちゃんよりも速く第2走者にタスキを渡す事に成功した
けれど差は僅か…数秒程度の誤差でしかない
「次はメイちゃんか…」
「メイちゃんなら抜かされる事はあっても、相当に遅れる事は無いと思うわ」
「だね」
りんちゃんが横でぜーぜー言ってる中で俺とさつきちゃんは彼女に「お疲れ様」と声を掛けてメイちゃんに視線を向ける
「メイちゃん頑張れー!!!」
「メイちゃんファイトーー!!」
そんな俺達の声援を受けているメイちゃんは…やっぱり遅かった…




