30:どんな感情も伝播するもんだ
『只今の結果、2-1で紅組さんの勝ちです。』
「「「わぁーーーーー!!!」」」
どうも八剱夜人です
現在、白組の雰囲気は非常に重かとです…
対抗リレーの結果は2-1
それにより白組20ー紅組20となっており、同点になっている様な状況とです
ただ、空気が重いのは点数が振り出しに戻ったとかそういう事じゃなくて…
「ぐすっ…ぐすっ…」
あづみちゃんが自分の所為で負けたと責任を感じて泣いているのだ…
あづみちゃんは次の走者、愛ちゃんにバトンを渡す5メートル程手前で急に転んでしまった
急いで立ち上がり、バトンを拾って愛ちゃんに渡したのだが…愛ちゃんの健闘虚しく、僅かに届かなかった様な状況だ
誰もあづみちゃんを責めていないし、冷たい目で見る事も無い
だけど当の本人が責任を感じ、皆に謝罪しながら泣き出してしまったのだ
『次はカピバラ組さんとアルパカ組さんによる借り物競争です』
そんな最悪の空気の中で借り物競争に呼ばれた子たちはチラチラとあづみちゃんを気にしながらも集合場所へ移動していく
そんな彼女たちに対して1人1人頑張ってと言える様な空気ではなく、俺は彼女たちの方へ視線を向けて軽く「無理しないで頑張ってね」とだけ告げた
「ぐすっ…ぐすっ…」
そして女の子の涙に弱い俺は…どうしようかとオロオロするだけで、ちっとも名案が浮かばない
どうせなら勝っても負けても皆が楽しかったと思える様な保育園最後の運動会にしたい
そう思っていたのに…このままだとあづみちゃんにとっては良い思い出にはならないだろう…
「ねぇ、あづみちゃん」
気が付けば俺はあづみちゃんの頭を撫でながら彼女に話しかけていた
するとさっきまでグスグス泣いていたあづみちゃんの泣き声が止んだ
月姉さんもこうすると落ち着くんだよね…そう考えたら俺の手はヒーリング効果があるのかもしれない
「あづみちゃんがすっごく頑張って練習してた事は僕だけじゃなくて皆知ってるよ。」
「……」
「その練習の通りにいかなくて悔しいんだよね?」
「……うん」
「でも僕も皆もあづみちゃんが頑張ってたのを知ってるから…本当に凄いって思うよ」
「……嫌いにならない?」
「誰も嫌いになんかならないよ。それよりも、頑張るあづみちゃんを見て、僕らももっと頑張ろうってなるよ。」
『只今の借り物競争は1-1で…同点です!!』
ーーーわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!ーーー
あ…借り物競争ちゃんと見てないわ…本当にごめんなさい
借り物競争に出ていた皆には後でちゃんと謝ろう…
幸い(?)俺と雪ちゃん以外の皆は一所懸命応援してくれていたみたいだから。寂しい思いはしていないと思うけど…一応ね
『プログラム4番、モモンガ組さんとカピバラ組さん、アルパカ組さんによる大玉転がしです』
そんな事を考えていると次のプログラム競技である大玉転がしの出場者が呼ばれ出した
あづみちゃんも大分落ち着いたから、次の応援はちゃんと出来ると思うんだけど…
「あ、あづみちゃんっ!!!」
「「?!!!」
そんな事を思っていると、雪ちゃんがあづみちゃんに向けて大声で呼びかける
雪ちゃんがこんなにハッキリとした口調で話すのを聞くのは何気に初めてだ
「つ…次のお、大玉転がしみてて!!わ、私…み、皆と頑張るから!!」
雪ちゃんは強い視線をあづみちゃんに向けながらそう言って…急いで集合場所に向かって行った
「雪ちゃん…」
あづみちゃんが雪ちゃんの名前を呼ぶと同時に目に力が籠っている
雪ちゃん…君、カッコイイわ…




