28:デッドヒートだぜぇ!!
『最後はアルパカ組さんの30メートルリレー競走です』
「皆頑張れ~!!!」
俺は自分の席から応援している
今のところ、モモンガ組は紅組が勝利、カピパラ組は白組が勝利したのでこの競争でどちらの勝ちかが決まるのだ
アルパカ組の走者が決められた場所に移動していく
「……うわ」
思わず口から声が出てしまった…
俺の視線の先には第3走者の位置で準備しているあづみちゃんと…蓮華ちゃんがバチバチと火花を散らしているのだ
しかも彼女たちがいる位置が俺の席の前だったりするから会話まで聞こえて来る
「どうやらあづみと戦える様だね」
「…………」
「おや無視かい?寂しいなぁ…でもコレで僕と君のどちらが相応しいのかがハッキリするね」
「…リレーでそんな事分かる訳ないでしょ?全部ひっくるめて夜人くんが決める事だわ」
俺?!
俺が何を決めるのっ?!
何か知らないけれど、俺に対して事前に告知しないのはダメだと思うっ!!
「勿論、それはその通りさ。でも出来ないよりは出来る方が良い…だろ?」
「…………」
「とは言うもののリレーだからね…同じタイミングで走り出す訳でも無いから明確な勝ち負けは決められないか。……あづみ、良かったね」
「……蓮華ちゃんには絶対負けないから」
怖ぁぁぁぁぁぁ~!!!
保育園児のする会話じゃないだろ、コレ!!
火花が可視化する位に散りまくってんだけど……
2人の雰囲気の呑まれて、俺は傍に居るにも拘わらず、彼女たちに声を掛けるのを止めといた
◆
◆
『位置について、よ~い……ドォン!!』
ーーーパーンーーー
放送席のアナウンスに合わせてスタートを知らせる発砲音が鳴り響く
それと同時に紅組と白組の子が同時にスタートダッシュをかけてきた
2人とも同じ様なタイミング走り出したから、差が殆どない
「頑張れ~~!!!」
「ようちゃんもうちょっと!!」
「紅組紅組!!!」
「バンプーパワーだー!!」
「白組ーーーーー!!!」
走り出した2人に向けて皆が一斉に声を掛けて応援する
俺も当然、「頑張れー!!」と出来るだけ大声で応援したが…滅茶苦茶良いレースだな、これ
互いに相手のリードを許さず、バチバチに競り合っている
いや…僅差で紅組がリードか?
「ゆうちゃん頑張れー!!!」
「いけるいける!!!」
「バンプーパワーだーー!!」
「頑張れ頑張れ頑張れーーー!!!」
第2走者にバトンが渡され、引き続きデッドヒートが続く
バトンパスはどちらも手が滑ったりする事無く、第1走者の子たちと同様競り合っている
「おぉ…これはあづみと堂々と戦えるかもね」
「…………負けないわ」
「僕だって負けないよ。」
第2走者の子たちも皆からの声援を受けて必死に走り続けている
それを見て俺も思わず声を張り上げる
「2人とも頑張れ~!!」
俺のその声に呼応する様に第2走者の子はスピードをグングン上げて、紅組に身体1つ分リードし出した
「良いぞーーー!!!」
「速い速い!!!」
「頑張れーー!!」
「バンプーパワーだーー!!」
皆が熱狂する中で次の走者であるあづみちゃんにバトンが渡り、ワンテンポ遅れて蓮華ちゃんにもバトンが渡った
「2人とも頑張れーーーー!!!」
一気に走り出す2人に向けて、俺は再度声を張り上げて応援をした




