26:ドーピング剤てきなものか何かかな?
「……疲れた」
「夜人様、お疲れ様です。」
開会式が終了し、自分の席に戻るが否や自然に深いため息が吐いてしまう
それを見て麗さんは労ってくれるが…始まりから既に疲れてしまった
(最早、気分はパンダだなぁ…)
俺は何もしていなくとも注視される男の子だ
そんな男の子が壇上で選手宣誓とかしてみ?
そりゃ黄色い声や写真のフラッシュが眩しい位に輝いているよね
……娘さんをもっと撮ってあげてください
「……零くんは元気だなぁ」
対角線上に居る零を見ながら思わずそう呟いてしまう
席に戻った彼は、紅組の子と楽しそうに話をしているのだ
時々、こんなに距離があるにも拘わらず「「きゃ~!!」」という女の子の声が聞こえる当たり盛り上がっているのだろう
俺にもそんなウェーイ的な要素があれば良いのだが…こちら30のおっさんだ
中々そこまで振り切れるもんでもない
『プログラム1番、モモンガ組さん、カピバラ組さん、アルパカ組さんによる玉投げです。』
「おっ、始まったね」
が、そうは言うもののイベントごとは楽しんだもん勝ちだ
俺も白組を率いている(?)者として積極的に応援していくとしよう
「あ、あの…夜人くん…」
「ん…うぉっ!!」
そう思って顔を上げると目の前に同じ組の舞花ちゃんがモジモジしながら立っていた
全く気配を感じなかったから思わず驚いてしまったよ
「お、驚かせてごめんね!!」
「う、ううん大丈夫。で、ど、どうしたの?」
「あ、あのね…わ、私今から玉入れに出場するんだ。」
「うんうん」
「で…でね…頑張ってって言って欲しいなぁって…」
「うん、勿論良いよ」
あぁ~びっくりした…
だがまぁ、そんな程度の頼み事であればお安い御用だ
「舞花ちゃん、ケガしないで玉入れ頑張ってね!!」
「~~っ!!う、うんっ!!私頑張るっ!!」
おぉ…これが感極まった表情とでもいうのだろうか?
感激してくれているのが俺でも分かる
こんなに喜んでもらうのが申し訳ない感じるくらいの表情だなぁ…
「よ、夜人くん…わ、私も良いかな…?」
「うん良い…よ゛っ?!!」
再度リクエストされたから振り返ると…並んでいる…
しかもアルパカ組の子だけじゃない…モモンガ組の子やカピバラ組の子も綺麗に整列して並んでいた
だが、舞花ちゃんだけ特別扱いする訳にも当然いかず、俺は並んでいる子1人1人に激励をしていった…
◆
◆
『さんじゅう~よんっ!!という事は…白組さんの勝ちですっ!!!』
「「「「やった~~!!!」」」」
第1戦目、玉入れは白組の勝利となった
確かに傍目で見ても明らかにおかしい量の玉が籠の中に入っていたもんな…
これでスコアは白組10ー紅組0となり一歩リードした形となる
皆がキャッキャッと喜んでいるのも見ると、童心に返った様で嬉しくなるな
…まぁ見かけは子供だけど
「夜人くんの御蔭で勝ったよ!!」
「夜人くん有難う!!」
「いつもより正確に投げられた気がする!!」
「分かる!!私も面白い位に籠の中に入った!!」
「いや、皆が頑張ったからだから」
玉入れに参加した娘たちがわざわざ勝利の報告をしに来てくれるけど…俺は声を掛けた後に応援していただけで何にもしていない
過大評価は後々自分の身を焼く
前世の社会人経験でそれを知っている俺は今のうちに鎮火しようと試みたが…だれ1人俺のその声を聞いている娘はいなかった




