21:神ってるね!!
「ただ~いま~…」
「「遅いっっ!!!」」
あれからさつきちゃんを麗さんの運転する車に乗せ、家に送り届けた後…俺は疲労困憊で帰宅した
そこで待ち構えていたのは、玄関を占拠する母さんと月姉さんだった
「ごめんなさい…」
「夜人きゅん、こんな時間まで男の子が何してたの?」
有無を言わせぬ迫力で母さんが珍しく俺に詰め寄る
…あ、後方で月姉さんの頭もひょっこり出てるわ
「え~と…保育園で練習してました」
「保育園で?こんな時間まで?とっくに終わっているでしょ?」
まぁそうだよね…
それだけで母さんが納得できる訳がない
「えっ「夜人くん、夜人くんの服に知らない人の匂いが付いてるよね?これって誰なのかな?服につくくらいの至近距離で何してたのかな?」」
お、おぉう…さっきまで頭部がひょっこり出ていた月姉さんが、いつの間にか俺の至近距離で制服の匂いを嗅いでいる
「……月、本当なの?」
「間違いないわ。今までに嗅いだ事のない匂いよ。夜人くん、こんな遅くに帰ってきた事と関係あるよね?無い訳ないよね?勿論話してくれるよね?」
ジリジリと顔を近づけて来る月姉さんに若干恐怖を覚える
「助けて麗お姉ちゃんっ!!」という視線を麗さんに向けてみると、母さんと対峙していた
「……麗さん?」
「はい。月様の仰る通り、夜人様は先程まで女性と一緒に居りました」
お前もかブルータス!!!!
完全に俺の敵側に回ってしまっている!!
あれか?!無表情だと言ったのを根に持ってるのか?!!
それはゴメンだけど、一瞬も悩まずに売らないで貰えます?!!
……まぁ、今後の為にも言わなきゃダメなんだけどさ
◆
◆
「……という訳で、これから保育園の日の帰りはさつきちゃんと練習する事にしました」
「「ダメッ!!!!」」
案の定というべきか…母さんと月姉さんから反対のお声が掛かる
幾ら麗さんが居ても危ない事には代わりないし、十全の対策が出来ないからだと言われるとそうだよなと思わなくは無い
無いが…それでも俺は練習したいのだ
友達と一緒に頑張るって青春っぽくね?
「夜人きゅん…男の子がこの世界で夜に活動する事はすっごく危ないの…」
「うん…」
「幾ら麗さんや他の護衛の人たちが見ていてくれているとは言っても、それは絶対ではない事は夜人きゅんも分かるわよね?」
「うん…」
「だったら私は夜人きゅんの母親として賛成は出来ないわ」
「…………」
どうしよう…ぐうの音も出ねぇ…
男女関係なく、保育園児が遅くまで公園に居る事自体が良くない事は俺でも分かるし…
あれ?これちょっと…詰んでない??
「だから、道場から帰って来る程度の時間までならば許可するわ」
「?!!」
「お母さんっ?!!」
ダメだと思ったその矢先、母さんからの門限設定による許可がキターーーーー!!!
その瞬間、母さんから後光が輝いて見える
「場所は公園でしょ?であれば不審者に対しての対応も非常に行いやすいと思うのだけれど…麗さんどうかしら?」
「仰る通りです。グラウンドの中央部分等で行うのであれば隠れる箇所等も御座いませんので非常に対処しやすいかと」
「お、おぉぉぉぉぉぉ…」
思わず感嘆の声が漏れ出てしまう
いや、マジで母さん神っ!!母神だねっ!!と思ってしまう
「じゃあそう言う事で時間は必ず守りなさい。それと月、貴女も学校が終われば夜人きゅんの様子を見に公園に行ったら良いわ」
「っ!!!」
母さんの言葉に月姉さんも喜んだ表情を浮かべる
という訳で俺の特訓は無事に開催される事となった




