14:まだ見ぬ小学生男子のこと
「あぁ~…お腹空いたぁ…」
「夜人様、お疲れ様でした」
道場での稽古&棗ちゃんのウザ絡みの後、俺は麗さんの運転する車の後部座席でグデッていた
いやまぁ、久しぶりにみた棗ちゃんが元気そうで良かったとは思うよ
ウザ絡みされるし、力は強いし、会った後疲れるけど元気そうで良かったとは思う
……次に会うのは3ヶ月後とかで良いな、うん
「麗お姉ちゃんも守ってくれて有難うございました。」
「いえ、それが私の仕事ですので」
「でもさぁ、何で1回目は敢えて見逃したの?」
そう、個人的には麗さんのその言葉が気になる
麗さんレベルであれば1回目の棗ちゃんの攻撃も制止させる事は出来た筈なのだ
にも拘わらず、見逃す意図が理解出来ない
「……申し訳ございませんが、それは月様にご確認ください」
「…あぁ」
今のやり取りで何となく察した
月姉さんと棗ちゃんは同じ小学校区だ
年齢は棗ちゃんの方が1歳上であるものの、月姉さんからか棗ちゃんからかは分からないが接点を持ちかけたのだろう
その上で何らかの密約(?)というか約束が出来たのが1度目を止めなかった理由だろう
(何かはよく分からないが、面倒だなぁ…)
そんな事を思いながら月姉さんに聞いた学校生活を思い出す
小学校では各クラス3~4名程の男子がいるらしいが、2名というクラスはないらしい
あまり詳しくないけど、非常に内向的になりやすいとか鬱になり易いとかそんな理由でもあるのかもしれない
小学生の男の子は各学年12名前後で全員ではないが太っている男の子がやはり多いとの事だ
そう言う男の子ほど、偉そうな性格をしており女子を召使いか何かの様に扱うのだそうだ
そんな事をしたら女子に嫌われて、学校生活も楽しくないものになりそうだと思うだろ?
正直、俺はそう思った
けれど実際はそうでもないらしい
殆どの女子は父親以外の男子と出会った事が無い
何だったら父親とすら出会った事が無い女子すらいるらしい
女子たちは保育園、幼稚園時代から親や先生方に「男子には優しくしなさい」という教育(?)を施している為、「男子とはこういう子なんだ」「男子のいう事は聞かないとダメなんだ」と思い付き従っているそうだ…
また少数にはなるが、太っておらずに偉そうな子ではない男子も一定数存在すると聞いたのは俺にとっては救いだ
そういう子は女子に対しての対応が変わる
ある子は我儘ではないが素っ気なく、ある子は非常に内向的、またある子は非常におっとりとした性格をしているのだそうだ
男子女子の区別なくフランクに接してきたり、女子に対して非常に優しい男の子というのは居ない訳ではないが非常に少数との事だった
「小学校でちゃんとした友達が欲しいなぁ…」
可能性が全く無い訳では無いのが救いだが、やはり同性の友人を沢山作るというのは難しそうだ
「夜人様には零様というご友人がいらっしゃるではないですか」
「零くんは…うん、まぁ友達ではあるよね」
確かに2年前ならいざ知らず、今の俺からすれば彼とは友人とも言える間柄なのだろう
まぁ…心情的には手の焼ける甥っ子的な感覚ではあるが…
「帰ったら月お姉ちゃんに聞いてみよっかな」
「そう、ですね…それが宜しいか、と…」
麗さん?!
その何かを躊躇う様に言うのをやめて欲しい…
そんな事は言えずに俺は自宅に到着した




