13:陽キャよりも強い者
「あ、お呼びで無いです」
「も~~!!!ヨルヨルは嬉しい癖にいつも私をそんな風に扱うんだから~~!!」
軽くあしらったにも拘わらず、嬉しそうな表情を浮かべてズカズカと道場内に入って来る
いや本当、この少女の陽キャ具合には舌を巻くわ…
「こら棗っ!」
葵さんに声を荒げられ棗ちゃんはビクッっとする
流石の陽キャ棗ちゃんも葵さんには逆らえないという事だろう
「手は洗ったのか?!!」
「あ、洗ったよ~…」
「なら良しっ!!!!」
良いんかいっ?!!!
道場で一礼するとか、そんな手順すっ飛ばしても良いんかい?!
俺なんてこの2年間、毎回やってるんだけど?!
師範…もう師範でいいや…
師範の大雑把な性格を見て思わず頭を抱えそうになる
棗ちゃんは棗さんで師範の承諾を聞いて嬉しそうにこっちへ近づいてくる
近づいてくる…近づいて…近いっ!!!
ーーーギュッーーー
「うぉぐっ!!」
思わず声が漏れ出てしまう
棗ちゃんは容姿に可愛らしい容姿に見合わず、力が非常に強い
「あぁ、ヨルヨルごめんね~!!苦しかったかなぁ?それとも気持ちよかったかな~?」
シシシと笑いながらそうやって俺を挑発してくるが・・・普通に苦しいわ!!
彼女の名前は『武ノ宮 棗』
師範の娘さんであり、小学校2年生の金髪ツインテ美少女である
金髪ツインテ美少女ではあるのだが…どうも生意気だ
小学校2年生に抱き着かれて気持ちいいという感情は俺にはない
そもそも俺はロ(以下略)
そんな彼女だが、この道場の門下生でもある
勿論彼女が師範代という訳では無いが、子供ながら大人の練習には混ざれる位には強い
週2日しか道場で稽古していない俺と彼女では実力自体がそもそも違い過ぎる
ま、まぁ…お、俺は自分や家族を守れる位の強さがあれば?そ、それ以上は求めないけどね?
ほ…本当だよ?
「ん~?ま~たヨルヨルは考え事でもしてるのかなぁ?だったら…もう1回抱き着いちゃおうかなぁ~?」
「げっ!!」
俺が脳内で彼女の自己紹介をしていた瞬間を見計らって、再度俺に抱き着こうとしてくる
タイミングを計っていた彼女と、全く予測していなかった俺では勝敗など火を見るよりも明らかだ
「・・・それ以上は許容しかねます」
「あ、あああああ…う、うううう麗さん…こ、こんにちは~…」
だがまぁそれは麗さんが居ない場合に限る
陰に控えていた麗さんは俺が棗ちゃんに抱き着かれる寸でのところで、彼女の顔面をアイアンクロー状態で制止させる
「棗さん、こんにちは…ところで今、何をしていらっしゃったのですか?」
「あ、あはははは…」
「1度目は見逃しました。ですが2度目は許容されていませんよね?」
「あ…はい…も、申し訳ございませんでした」
「あ~棗…南無」
麗さんに詰め寄られ冷や汗を流す棗ちゃんと、これから何が起こるか理解して手を合わせる葵さん
そして…右手に力をこめだす麗さんを前にして、俺も心の中で合掌する
「煩・悩・退・散!!!」
「い、いいいいい痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!!す、すいませんすいませんすいませんすいませんすいません!!!」
そのまま麗さんにアイアンクローを掛けられて宙吊りになる棗ちゃんを見て…再度俺は心の中で合掌した




